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村中洋介『<災害と法>ど~する防災【火山災害編】』信山社

日本には活火山が多くあり、その数111だそうである。最近でも2021年に海底火山、福徳岡ノ場の噴火が発生し、軽石が全国の海岸に漂着し影響が出ている。

火山災害には、火山の噴火の際の噴出物(溶岩流、噴石、火砕流・火砕サージ、火山灰)や、噴火等の活発な火山活動に伴い発生する現象(火山泥流、火山性地震、火山性地殻変動、山体崩壊、津波等)、噴出物の堆積後に降雨等により発生する土石流等があるという。

噴石は、噴火によって火口から吹き飛ばされる防災上警戒・注意すべき大きさの岩石とされるが、この中でも特に20cm~30cm以上の風の影響をほとんど受けずに飛散する程度に大きいものについては、登山者や周辺住民への被害も懸念される。

2014年の御嶽山の噴火では、この噴石(火山弾を含む)が直撃したことによって多くの登山者が命を落とした。こうした噴石は、特に登山者には時間的猶予がないことから、事前の噴火警報等による入山規制が必要とされる。

また、避難壕や避難シェルターのような施設を設置することで、、万一の噴火に対応できるような取り組みもなされている。

人命への被害が大きな火山災害としては、火砕流・岩屑なだれがあるとされる。世界で発生した火山災害の死者の約半数が火砕流・岩屑なだれとされ、1991年の雲仙普賢岳の火砕流による死者がある。

噴火警戒レベルは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標のことである。

2022年4月18日時点で、桜島や諏訪之瀬島が噴火警戒レベル3(入山規制)、御嶽山や霧島山(新燃岳)、口永良部島などが噴火警戒レベル2(火口周辺規制)となっている。

レベル5(避難)、レベル4(避難準備)、レベル3(入山規制)、レベル2(火口周辺規制)、レベル1(活火山であることに留意)がある。レベル1であるからといって「安全」であるいうわけではない。

噴火警戒レベルが運用されている火山は、48火山ある。火山警戒レベルが運用されていない火山も存在し、噴火予報、噴火警報(火口周辺)又は火口周辺警報、噴火警報(居住地域)又は噴火警報を通じて住民に知らせることになっている。

登山者や火山周辺の住民に対して、火山が噴火したことを端的にいち早く伝え、身を守る行動を取ることを求めるために発表されるものとして、噴火速報がある。火山名と噴火した時間のみ発表される。

活火山対策のため活火山法(活動火山対策特別措置法)があり、国は「火山災害警戒地域」を指定することができる。また、警戒地域に指定された都道府県や市町村は、火山防災協議会を設置する必要がある。2021年5月現在、23都道府県、179市町村が存在する。なお、火山噴火の土砂災害のためには、土砂災害防止法がある。

原子力発電所については、原子力規制委員会が定める「原子力発電所の火山影響評価ガイド(平成25年6月)」の中で、大規模な噴火についての検討の記載がある。火砕流などの到達範囲について、原子力発電所から160kmの範囲内に該当する火山が存在しないかどうかを定めている。

火山ガイドの内容は、不合理とする裁判例と、合理的なものとする裁判例がある。また、一般の災害法制度とは異なる発生頻度の少ない破局的噴火を想定する安全対策を求めるかどうかについて疑問を呈する裁判例もある。

2014年9月17日の正午前、御嶽山は噴火し、この噴石等で登山者58名が死亡、5名が行方不明となった。噴火前の9月10日に52回、翌11日に85回の火山性地震が観測されていた。

気象庁が噴火警戒レベルを1(平常=当時)から2(火口周辺規制)へ引上げることを怠ったことを最大争点として、遺族は、国や長野県に対して国家賠償法による損害賠償請求を求めた。

長野地方裁判所松本支部は、2022年7月13日、噴火警戒レベルの判断基準について、「1日に50回以上の火山性地震の発生」などの事由は目安で、総合的に判断するものであること、山体膨張の可能性を示す地殻変動が確定的に観測されたとは言えないとし、噴火レベルの引上げは慎重に検討すべきとした。

しかし、15分から20分程度の検討で安易に地殻変動と断定できないとの結論を出したことは、慎重に検討すべき注意義務を尽くしたとは言えず、著しく合理性に欠けて違法であるとした。

ただし、仮に気象庁が注意義務を尽くしたとしても、噴火警戒レベルの引上げには時間がかかり、引上げ後の立ち入り規制が確実にされたと認めるのは困難とし、気象庁の違法行為と登山者らの死亡等という損害の間に相当因果関係があるとはいえないとし、損害賠償請求を認めなかった。

一般的に、火山の噴火のように、現在の科学技術では的確な予測が困難なものに対して、行政は責任を負うことはないとされるが、行政の対応が不十分であったため損害が発生場合は、責任を負うこともある。つまり災害予測それ自体などについては責任を負うものではない。

2022年7月24日の桜島の噴火において、噴火警戒レベル5に引上げられたのは、「科学的にわからないこそ、噴火レベルを引上げた」という例であるかもしれない。

しかし、それによって何かしらの規制を私たちが常に受忍するのであれば、行政もそれに応じた対応をするであろうが、私たちは常に規制を受忍するわけではない。

災害対応に関する行政や専門家会議について、何かしらの形で免責をすることの議論や法整備をしないと、本当の意味で国民にとって必要な情報発信や規制が行われないことになるかもしれない。

御嶽山では、この噴火後、登山届の提出が義務づけられているほか、登山シーズンにはヘルメットの持参などが求められている。行政にすべてを委ねるのではなく、私たち自身が身を守る準備をすることが、災害への備えとして重要なことと言える。

火山による恩恵を多く受けている一方で、災害リスクも存在する。火山災害について、認識を持つために読むべき書物であると思う。

御嶽山の事故により、すぐに厳しい規制がかけられるようになることを望んでいる人は少ないと思われる。裁判の行方が気になるが、この結果によって過剰規制が乱発され、本当の意味での災害対策が進まなくならないよう願いたい。




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