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エリス・ヤング『ノンバイナリーがわかる本 heでもsheでもない、theyたちのこと』明石書店
最近、「LGBTQ+」という言葉を聞くようになっても、一般的には深く理解している人は少ないと思う。ノンバイナリーとは何かと聞かれれば、なおさらである。
ノンバイナリーとは、「男・女」「彼・彼女」「男性・女性」のようなバイナリー(0か1か)のどちらか一方にとらわれないジェンダーアイデンティティであり、もう少し簡単に言えば、自らを男とも女とも考えない人のことである。トランスジュンダーを含む少し広い意味で使われる場合もあるが、ジェンダークィアという言葉も使われる。
出生時に割り当てられた性と自認するジェンダーが異なる人はトランスジェンダーであるが、ノンバイナリーは、ジェンダーの枠組みに違和感を覚え、第三の他者のグループをつくる。男でも女でもない第三のジェンダーと考えることもできる。
ノンバイナリーについての言語、歴史的な視点、コミュニティ、社会の中で生き方、メンタルヘルス、医療、法律などについて、詳しく書かれているのが本書である。
ジェンダークィアとノンバイナリーのコミュニティでは、ニュートラルな人称代名詞として、they/them/theirを使用する。中世の時代から、ジェンダーが明確でない一人の人間を想定して、「they」を使用しており、新しい現象ではない。また、新しい代名詞zeやeyを使う人もいるが、それらを嫌って名前で呼んでもらいたいという人もいる。
ジェンダーは生活のあらゆる面に影響を及ぼしているから、ノンバイナリーとして生きることは、リスクがともなううえ、シスジェンダー(ノンバイナリーでない人)との関係を複雑なものとしてしまう。職場は男女の枠組みを強化することから、ノンバイナリーの80%以上の回答者は、オープンにすると仕事がやりにくくなるのではと考えていると言う。ノンバイナリーの人は、社会の中での生きづらさから、不安障害やうつ病となってしまうことも多い。
例えばトイレは、ニュートラルな設備として、一人用で施錠できれば男女分けをする必要はないのではという。社員の制服や服装の規則も同様と言う。顧客の敬称では、Mr/Mrs/Msではなく、Mxを提案する。実際にMxを使用できる米国の州もある。
だれでも自分が望むジェンダーアイデンティティが尊重されることが、これからの社会において、より重要となってくる。ノンバイナリーの人は、社会の一員であり、また重要な支え手でもあることを忘れてはならないと思う。