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バイトくん(いしいひさいち)の思い出


いしいひさいちの「バイトくん」、2巻と3巻です。どちらも初版ですが、果たして重版があったのかどうか。これらを買うのは、たぶん三度目です。一回目は新刊書店で、二度目はブックオフあたりで。いずれも売り払うかなくすかしたので、三度目をメルカリで購入。

最初は、いずれも大学受験で名古屋を訪れたとき、栄地下の書店で買いました。現役のときに2巻を、浪人して二度目の名古屋で3巻を買った、はず。しかも現役のとき、2巻と3巻があったのに2巻だけ買ったのですね。そして翌年、同じ書店に行ったら書棚のまったく同じ場所に3巻がちゃんとありました。ずっと売れずに待っていてくれた、のかどうかは知りませんが。

受験に行って漫画を買って帰ってくるくらいですから、二度ともちゃんと落第という、ほろ苦くも青春を鮮やかな灰色に彩る思い出の染み付いた本です。

さて、この本にはまだ思い出があります。惨憺たる受験を終えて飛行機で北海道に帰る際、手荷物はすべて機内預かりにして「バイトくん」一冊だけを手に保安ゲートをくぐりました。それがカッコいいと思っていたんでしょうね。

そして機内へ案内されるまで、保安ゲートの近くのベンチで読書、つまりバイトくんですが、読みふけっていたのです。何しろモノがギャグマンガですし、18~19歳という橋が崩落しても笑い転げるお年頃です。バイトくんのギャグにあてられて、腹がよじれるほど大笑いしていました。

その哄笑は空港中に響き渡った、といっても大袈裟ではありません。少なくとも、保安ゲート周辺にいた係員がギョッとした顔で見ており、互いに顔を見合わせて目配せをし、「かまうな」というように首を小さく振っているのを、確かに見ましたもの。マンガを読んで、あんなに豪快に、しかも公共の場所での爆笑したのは初めてでしたよ。

このバイトくん、2、3巻は再購入しましたが、1巻にあたる本は未購入です。もともとは続刊が出る予定ではなかったのか、「4コママンガ集・バイトくん」とだけしてある本です。2巻の後書きにも、「発展的継続というよりは、アリャマ、おっとっとという感じの続編」と書いているくらいです。まさかの続刊だったのでしょうね。

バイトくんを読んで、大学生という生き方を学びました。その甲斐があって、留年はするわ、就職活動では後塵を拝するわ、絵に描いたような「オンボロ大学のポンコツ学生」らしい散々な人生を歩むことができました。今、改めて1巻(に相当する本)から再読して、残りの人生の指針を得たいと思います。そのため、しょっちゅうメルカリで「いしいひさいち バイトくん 販売中」で検索する日々です。

面倒なので、ブックオフで探そうという気は全然ありません。
この辺は、いかにも年寄り臭い。
青春は遥か遠くになりにけり。