ルーフトップ・コンサートの目撃者たち
ビートルズ最後のライブ、ルーフトップ・コンサート。
今ではDVDなどでいつでも好きな時に観ることができます。いい時代だなあ。
映像を観てみると、ビートルズの面々がかっこいいのはもちろんですが、周りで見物している人たちも味がありますね。
スタッフとかじゃなくて、近隣のビルの窓からとか、屋上にあがって観ている人たち。ビートルズファンと思しき若い人たちはもちろん、普段はビートルズなんて聴きそうにもない老紳士が屋上を歩いている姿にはグッと来ます。
ともかく、ビートルズが活躍した(活躍を終わろうとしている)時代ですから、スマートフォンがないのはもちろんの当然。テープレコーダーもカメラですら一般的ではないのか、みんな、自分の目と耳で、ビートルズの演奏を堪能しています。特にファンとらしき人達は、しっかりと目に焼き付けようとしているのが感じ取れます。
今どきの映像なら、その場にいる全員がスマートフォンを掲げて撮影に勤しんでいることでしょう。目で見て、耳で聴くことを忘れて……。
あの聴衆たちは帰宅してから、あるいは仕事帰りにパブで、「今日、ビートルズの演奏を見たよ」と話したに違いありません。
家族や知人は、さぞかし驚いたでしょうね。
今なら、「写真は?」とか「動画撮った?」と来るところですが、さきほどから述べている通り、そんな文明の野暮、いや、文明の利器もない古き良き時代。
話に耳を傾けるだけでも、胸が踊ったに違いありません。
ルーフトップ・コンサートの目撃者たちは、しばらくの間、「ビートルズの話を聞かせてくれよ」と引っ張りだこだったでしょうね。
そして今なら、冒頭に書いたように映像を簡単に観ることができます。
存命の方も多いはずですから、映像を観ながら、
「あれがわたしよ」とか、「爺ちゃんは、なかなかイケメンだったろう?」とか話しているのかも。
その話、今度ぼくにも聞かせてくださいな。