6月「稽古はじめ」
令和5年6月 戸塚会長挨拶
6月の和名は「水無月」。ここに使われる「無」は、「無い」という意味ではなく、「の」を意味し、「水無月」とは、「田んぼに水を引く月」を由来とし、「水の月」という意味があるそうです。
そして、暦の上では、「立春」から135日目の6月11日頃が「入梅」です。梅雨の時期は、食中毒やカビの繁殖に注意しましょう。特に剣道具や竹刀など、うっかりするとものすごい勢いでカビが繁殖し、異臭も放ちます。稽古後の保守管理が一年のうちで最も気を遣うところです。
さて、6月は「稽古はじめ」の月でもあります。
なぜ稽古はじめかというと、「指の形」由来説も関連しているようです。指を使って数を数える時に指を折って数えていくと、6の数字の時に小指が立つ形になります。「小指が立つ」→「子が立つ」→「子供の独り立ち」という意味で6歳から稽古を始めるのにふさわしいとか。稽古の日と正式に定めています。こうしたしきたりの由来はどこから来たものでしょうか?
その答えのひとつに、「稽古始め」のしきたりがあげられます。楽器や舞踊など伝統芸能の「稽古始め」は6歳の6月6日がよいとされ、歌舞伎、能、狂言でも「初稽古(はつげいこ)」と呼んで、その日に稽古を始めるべしとしています。室町時代に能を大成した世阿弥(ぜあみ:1363〜1443)の著『風姿花伝(ふうしかでん)』によりますと、その冒頭に習い事を始めるには数え七歳(つまり満6歳の年のうち)がもっとも良いと説いています。
(意訳)芸能においては、おおよそ七歳をむかえるとき初稽古とするのです。この頃の稽古は、子どもが自然にやり出した中に、生まれ持った美点が見つかるものです。舞いや働き(演者の所作)、また謡(うた)いは、たとえぎこちない動きでも、何気なくやり出したらそれを大切にして、まずはその子の心のままに、やりたいようにやらせてみること。こと細かに、これは良い、これは悪いと教えてはいけません。あまり厳しく注意すると、子どもはやる気を失い、おっくうになって、能そのものが止まってしまうでしょう。
さらに言えば、もっぱら基本動作以外はやらせてはいけません。込み入った物まねは、仮に出来ても教えるべきではないのです。ましてや大舞台の幕開けの能には、立たせてはいけません。子どもにふさわしい場面で、まずは得意な芸をやらせてみるのが良いでしょう。
なかなか教育論としても参考になるような名文です。能の文化をひろく世間に広めたのは中世の武家社会です。江戸時代になると歌舞伎にもこうした考えが反映し、さらに「六歳の六月六日…」という六続きの言い回しが、頻繁に歌舞伎の台詞として言われるようになり、いつの間にか「6歳6ヶ月の6月6日」という日が習い事始めにふさわしいと定着するようになりました。
<駒沢女子大学(千葉 公慈氏)>
剣道の入門もただ早ければ良いとは限りませんが、大和の剣道の子供たちの取り組みにも変化が出てきました。5月第19回少年剣道錬成大会、6月の少年練成会など子供たちの活躍が続きます。活気ある子供たちの歓声が戻ってきた感もあります。会員減が続くなかで、大勢のなかで稽古を行うと元気も出てきます。できうる限り合同稽古会の機会を増やして活性化させていきたいと思います。
ご昇段の先生方、おめでとうございます。
称号「教士」合格 田部岳史先生(つきみ野剣友会)、七段合格 上田英史先生(つきみ野剣友会)、五段合格 林晃一先生(若竹剣友会)、四段合格 小泉祐哉先生(渋谷剣友会)
大和市剣道連盟会長
戸塚義孝