障がい者採用体験記
「みんな」の中に私はいない
まだ発達障がいというものが一般的に認識されていない時期に生まれた私は、自分が障がい者であることを40歳になるまで知らなかった。
物心ついたころから「変わった子」であったとは思う。
みんなと同じことをするのが苦痛でしょうがなかったし、同じが嫌で変えてみると問題にされる。
でも、みんな我慢してるのよ、大人たちに言われると、我慢できない私は「みんな」のなかにはいないんだとぼっち感たっぷりのまま成長した。
大人になるとある程度自己責任なので、変わった人であっても他人の生活を脅かすようなことをしているわけでもなければ、咎められることはなくなってそこだけは生きやすくなったかもしれない。
それでも社会に出てみると、仕事で人に合わせなくてはいけないことが続く。
週に5日以上は朝8時や9時の決められた時間に出社して、多くは週末など決められた日に休み、決められた時間に休憩を取る。
多分、当たり前なんだってことは知っている。
知っているけれどできないんだ。
やってみてもやってみてもできないんだ。
やってみたら、体を壊す、原因不明の腹痛が続く、恐らくストレスだから仕事はしないで安静にしなさいとなる。
そんな自分の弱さを責めることもたくさんあったんだ。
周囲にこういった話をしても
「わかるよ、みんなそうだもん、慣れだよ」
発達障がいと言葉が世に浸透しだした時も
「違うよ、みんなそうだもん、甘えだよ」
みんなそうなのに慣れられない。
みんなそうなのに甘えている。
そのみんなの中に私はいないのだ。
40歳になってようやく病院に行けたのは、今のパートナーと出会って一緒に暮らすことでようやく余裕ができたことが大きい。
1人暮らしだったときは決められた契約に基づく、雇用契約書を交わすような仕事はできないのに生活費は稼がなくてはいけない。
だからフリーの仕事で何とか支払うもんは支払う、かといって稼ぐ才能もなかったので自給に換算したら100円にもならないようなこともたくさんしていたし、時間も余裕もなかった。
それと、生活拠点が変わったことで知人との関りも変化し、人と違う私に対して
「わかるよ、みんなそうだもん、慣れだよ」
「違うよ、みんなそうだもん、甘えだよ」
という人たちと物理的に離れたのと同時に、パートナーが理解ある人で働くことも求めてこないし、徐々に落ち着いてきて受診する余裕ができたのだった。
自閉症スペクトラム障がいと診断された私は、医師より障がい者採用で働くことを勧められた。
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス体験
ハローワークで障がい者の求人を見たり、求人のサイトで検索をかけて障碍者の求人募集を見て回っては興味の持てる仕事がなくて少しがっかりした。
検索をかけているうちに見つけたのが、障がい者に対する就労支援があるという情報だった。
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類のサービスがあります。
・就労移行支援
就労を希望する障害者であって、一般企業に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
・就労継続支援A型
一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
・就労継続支援B型
一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
・就労定着支援
就労移行支援等を利用して、一般企業に新たに雇用された障害者に対し、雇用に伴う生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行います。
1つ目の就労移行支援は、障がい者が一般に就職するための力をつけるところなので、技術や資格の取得と同時に体調を整えるために利用するというイメージ。
実際に見学も含めて行ってみた感想は、カリキュラムがしっかりと組まれているので休まず通わないといけないけれど頑張れば力はつきそうな事業所もあったり、週に1回でもいいのでのんびり自分のやりたいことを学べる事業所もあったりした。
私はマイペースなのでのんびりしていた事業所にしばらく続けて体験してみたが、のんびりしている分スタッフさんものんびりしていて、技術を突き詰めたくても教えられるレベルのスタッフさんがいないということになり、結局ずっと自習ばかり。
スタッフさんの仕事は自習している私の報告を聞くだけだったので、欲しかった資格の合格後はまた自習になるだろうし通う意味がないと判断した。
カリキュラムが決まっている、スケジュールが厳しいところも性に合わなさそうなので、未経験だけど習得したい技術があり、働くということにはまだ不安があるという人にはおすすめできる。
ただし、生涯において基本は2年間しか使えないのでずっと続けることはできない。そこに注意して利用してほしい。
2つ目の就労継続支援A型は、雇用契約を結んでお仕事をしながら一般採用で就労できるようにサポートしてくれるので、働いた時間の最低賃金分の収入は発生する。
この雇用契約があるかどうかというのが、3つ目の就労継続支援B型との大きな違いになる。
雇用契約がある以上は、その契約の条件に沿って利用する(働く)ことになるので、勤務日数は週5日以上が基本だし、労働時間も固定されているので自由度は低いが、利用期間に制限もないから一般就労できなくても65歳まで働くこともできるし社会保障的には一番良いサービスだと思う。
3つ目の就労継続支援B型は雇用契約を結ばないので、週に何日行かないといけない、何時間働かないといけないなどは事業所ごとに設定されているので自由度は高いが、作業をしても工賃といって出来高制のような賃金しか発生しない。
この工賃ってのが事業所によっても全然違うのだ。
私が見学に行った事業所では、時給500円スタートと説明を受けた。
その話を私が通う発達障がいカウンセリングでシェアしたところ、時給500円くれる事業所なんて本当に珍しいそうで、300円でもいい方なんだそうだ。
利用期間に関しては制限がないし、自由度は高いので、働くのはまだ怖いけれどそれまでのリハビリ期間のように使えるサービスだと思う。
ただし、利用にあたってはお住いの自治体(市区町村)の福祉課から「福祉サービス受給者証」の発行を受けないといけない。
これは障がい者手帳とは別物なので、福祉課のある場所が遠かったりするとめんどくさい。
そして、基本は副業禁止なので利用している間はアルバイトもできない。
収入的が一番多く見込めるのは就労継続支援A型だが、それでも週に20時間程度の利用だと生活はかなりきつい。一人暮らしの障がい者には使いづらい制度ではある(自治体によってはアルバイトしてもいいところもあるそうなのでお住いの自治体の福祉課に確認する事)
受給者証の発行までにかかる期間とかも含めて、自治体によってあれだ、これだと違うことが多いのも情報のシェアが難しいところである。
また、4つ目の就労定着支援に関しては上記の3つのサービスを利用したうえでい就職した人が受けられるサポートなので、今の私は該当せずで利用できないから何とも言えない。
就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、それぞれ何か所か見学してみて気を付けて欲しいことは、通所期間に関して事業所の言いなりにならないことだ。
これらの障害福祉サービスは利用者の数が事業所の収入に直結している。
ある就労移行支援事業所の見学会では1年間は就職活動してはいけない、学習に集中しなければならないと決まっている、そう説明された。
何も知らなければそれが法律家のように当たり前に受け入れてしまうだろう伝え方だった。
どのサービスも辞める続けるは本人がいつでも決められることで(就労移行支援は定められた利用期間で卒業となる)事業所が決める事ではない。
特に就労移行支援は人生のうちで定められた年数しか利用できないのだから、合わないのに続けるのは経験がもったいない。
また、障害福祉サービスを受けると「個別支援計画書」というものを事業所が作成してくれるのだが、これはうちの事業所でしかしていないサービスです、他所に行くとここまで支援してもらえませんと説明した事業所もある。
他所の事業所もなにも、どこの事業所もしなければいけないことだ。
事業所も利用者の増減には葛藤あると思う。
利用者が一般就労できて卒業するのは喜ばしいけれど、早く退所されてしまえば収入は減るのでまた利用者を増やさなければならない。
障がい者が自立することを応援しながらも、自立できない障がい者が必要であるのは、私のように繊細だと堪えるだろうな。
私は上記のサービスの利用、退所、また見学や体験をしつつ、ハローワークや求人サイトで障がい者採用の求人への応募をしていた。
ハローワークで応募書類の添削をしてもらっていても書類選考で落ちまくる。
応募書類に自信のない人はハローワーク行くと無料で教えてくれるし添削もしてもらえるので遠慮なくどうぞ。
有料で応募書類の添削サービスしているところもいっぱいあるし、もしかしたらすごいのかもしれないけれど、最初は無料から試してみる方が私は安心かと思っている。
そして、添削してもらって問題ないのに、一体何が悪いのか分からないけれど、年齢や経歴も関係あるだろうかと感じて10社目くらいで心は折れた。
これで終わりにして、次は就労継続支援B型に通おうかと決めた矢先、採用通知が来たのであった。
障がい者採用で入社
面接の際、朝の電車に乗ることができないことを伝えていたので、出勤時間は遅めにしてくれるということだった。
が、入社にあたっての事前説明を受けたところ、週一回だけは出勤時間は朝、希望していた週3日出勤ではなく4日になっていた。
やっぱり社会とはこういうものなのかと思った。
採用した会社の人たちも悪いわけではないのだし。
なぜなら、障がい者雇用は本来なら
フルタイムで働くことが推奨されているから。
私が採用された会社は出勤時間は朝7時くらいから深夜、シフト制のフルタイムが基本。ゆくゆくはそれが出来るようになって欲しいとは思っているけど強制はしないとのこと。
でも、働きながらフルタイムになりたいと前向きな気持ちになってくれたらいいなと思っているし、応援するという方針。
みんなみたいに働けるようになろうね。
頑張ろうね、応援するからね。
ここでも、私はみんなではない
みんなの中にはいない。
就労系社会福祉サービスを
提供している人たちも
障がい者雇用をしている会社の人たちも
だれも悪くはないし
むしろいい人たちなのだ。
社会的な「当たり前」の働き方をして欲しい。
それが働くということであり、豊かになることである。
それが基本の指針だ。
それに、もしその「当たり前」に疑問を持ってくれている人がいたとしても就労系社会福祉サービスや障がい者雇用では、将来独立してフリーランスになりたいという夢は表向きは応援してもらいにくい。(フリーランスを応援してくれる就労継続支援B型の事業所は知っているが僅かである)
基本は安定して雇用されるようになることが目的だし、その為に事業者や会社は補助金なども受け取ることができるのだから、それに大きく背くわけにもいかないは理解できる。
なのに、就労系社会福祉サービスや、障がい者雇用の募集の際にはこんなフレーズを見かける。
【障がい者が好きを仕事にできる】
【障がい特性を生かして自分らしく仕事しよう】
違うんだよね。
好きなこともできるけど、他の仕事も覚えてねってことだし、特性を活かすのも最初はそれから慣れてもらっていいから、もっと出来るようになろうねってことだ。
そしたら収入も増えるしね、いいことなんだよ、応援するからねってこと。
違うんだよね。
みんなにとってはそうだけれど
私はそのみんなではないんだよね。
みんな違ってみんな良いって言うよね。
これってみんな違ってみんな良くないよね?
みんなではない私はその応援を受け取れない。
優しい人ばかりだった
続かないかもしれないと思って、採用してくれた上司にみんなと同じ自分ではないことを話して、思っていたことと違うことも伝えた。
じゃあ、来ないでいいよって言われると思ったのだが、採用してくれた会社は障がい者雇用は初めてのケースで、補助金も受け取っていなかったそう。
雇用しなければいけないでもなく、一般就労として応募してきた人と同時に選考をしてくれていたことも嬉しかった。環境も良かったししばらく続けてみたら、もしかしたら、慣れるのかもと思った。
そこから2か月ほど経った。
朝から腹痛がひどかった。
この痛みは知っている。
また原因不明のやつだ。
病院行っても治療方法ないってやつだ。
痛み止めを飲んで、何とか毎日やり過ごした。
慣れるまで、そのうち慣れるまで…と。
とうとう、起き上がれなくなって退職した。
何がいけなかったのかな?と考えてくれるいい人たちばかりだから悲しかったし、苦しかった。
そして、ここからは読んで気分の悪くなる人もいる記事だから有料で。
読んだからと言って現実が変わるものでもないし、知らないと損とか、知ってて得とか、いいことが起こるとか起こらないとかそんな話でもないが、大事な真実を見たい人だけ読んで欲しい。
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