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【私小説】『鬼は〜外!』(ボツ作品)
【私小説】『鬼は〜外!』(ボツ作品)
……舞台は昭和40年代の田舎町の小さな商店。
母と幼い兄妹が、町のよろず屋として食品や雑貨を販売して生計を立てていた。
家長であるその家の父はそこにはいない。賭け事に明け暮れ、たまに帰ってきたと思えば、店の売り上げや子供たちのお年玉貯金にまで手をつける始末。そしてまたしばらく家を空け、都合が悪くなると帰ってきて大声をあげる。
賭け事だけに留まらず、他の悪事にも手を染め、警察のお世話になったことも数多い。町でも噂の的だった。兄妹を見る近所の目も、同情と蔑みが半々なのは子供ごころにも理解していた。あの父親さえいなければ…。
殺意さえ覚えた。
今日は『節分』、どの家庭でも豆をまき「無病息災」「家内安全」を願う。子供たちも近所のお寺の豆まきを楽しみにしていた。
その夜、あの父親がまた現れた。よりによってこんな日に…黙って家の玄関に立つその男。
兄妹は誰に言われたのでもなく、コタツの上にあった大豆を手にして、その鬼に豆を投げつけた!
「鬼は外!💢」
男は黙ったまま立っている。
「鬼は外!鬼は外!鬼は外〜!鬼は出ていけぇ〜‼️」
兄妹は喉が枯れんばかりの声を振り絞って、その鬼に豆を投げ続けた!
鬼は外💢
鬼は外💢💢
鬼は外💢💢💢‼️
母はその光景に目を伏せて黙っていた。
その家の節分に『福は内』の掛け声は無い。
男は何も言わず、そっとなにやら手土産を置いて出ていく。ようやく「鬼は外」に消えていった。
兄妹の育った小さな商店は、時代の流れにも乗り、地域でも有数のスーパーマーケットチェーンに成長していた。
✔︎あれから30年、家族3人がその男に再会したのは、終末医療施設の個室、旅立ち間近の人が最期を迎えるための部屋。そこにはもうあの家族を苦しめた「鬼」の表情は無かった🙏🏻
鬼「悪かったな🙏🏻」
……それからまもなく鬼は魔界に消えた。
今日も日本中の家庭で、子供たちの声が聞こえる。
「鬼は外!、鬼は〜外!」
🙏🏻「福は〜内💧」
(解釈はご自由にm(__)m)
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