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龍王山

ゴールデンウィークに奈良の実家に帰るのは9年ぶり。若葉のころの大和がこんなにも美しいとは、38年間も生きていて気づかなかった。地元・桜井出身の英雄ヤマトタケルが「大和は国のまほろば」と呼んだのは5月のはじめだったに違いない。

2月の蔵王以来、山に帰ってくるのは3ヶ月ぶり。3月のフルマラソンを終えて復帰するつもりだったが、大会前に腰痛になって、いまだに治らない。毎日、接骨院に通っているが本格的な登山はまだまだ先だ。

せめて足ならしと選んだのが、桜井の隣である天理市の龍王山。仰々しい名前だが、標高は586mで高尾山とほぼ同じ。穏やかな里山だ。

母親が作ってくれた朝ごはんを食べ、ホンダの原付で登山口に向かう。もう15年以上も駆動していて、エンジンがかかりにくくい。ろくに手入れもしない主人によく付き合ってくれている。感謝。

天理の柳本の交差点を右に曲がると、崇神天皇陵がある。ここは上京する前に働いてたミニストップの相棒の実家の近く。彼は現在、東京でミュージシャンとして活躍しているが、2人で勤務していたときは「コンビニのCはコンシェルジュのC」と言って日本一の活気と接客を目指していた。

連休明けの初日で国道169号線はいつもの渋滞を取り戻した。龍王山の登山口の脇に原付を止め、スタートしたのが8時45分。新緑が迎えてくれる。腰が悪いのでゆっくりと歩を進めたいが、生まれついての飛ばし屋が災いし、すぐに汗が吹き出すペースになってしまう。

2日前に父親が録画してくれた田中陽希さんのアドベンチャーレースを見たのも影響した。誰かとの競争でもないのに、全速力で山を登りたくなる。途中、2組の高齢者を追い越し、アップルウォッチのヤマレコの地図を頼りに長岳寺の仏像を抜ける。山頂まで50分。9時半過ぎに山頂を踏んだ。

森林に視界を覆われた山から一気に大和平野がドカンと広がる。大和三山はもちろん、葛城山、二上山、天気が良ければなんと兵庫の明石海峡大橋までが見える眺望。わずかの時間に世界が一変する感動は登山の醍醐味。

ここは姪っ子と甥っ子が小学生のうちに連れてきたい。町並みは令和だが、古代大和の悠久を少しだけ味わえる。

腰の痛みは増えてしまったが、山に来てよかった。頂上の西側にはツツジの花がつつましく咲いていた。




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