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地上の神話 Super Bowlへ
2月14日、前夜の大雪予想は外れて、新宿は小1時間ほど雪が降ったのみ。これだけテクノロジーが発達しても、人智を遥かに超えてくるのが天気とSuper Bowlだ。
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1年に一度、アメリカの首都が変わる日。ゴジラが上陸して都市が壊滅してもSuper Bowlだけは開催される。神様が産み落とした地上の神話だ。
どんな試合結果になろうとも、必ず伝説が生まれる。理由は無数にあるので毎年、少しずつ因数分解しないと論文になってしまうが、ひとつは国民の熱狂。
他の大会の視聴者数を比較してみると野球のワールドシリーズが1,200万人、バスケのNBAファイナルが1,500万人、それに対してSuper Bowlは1億1,000万人。これだけでも規模の違いがわかるが、多民族国家におけるアメリカで人口の半数の眼を集めるのは異例中の異例。
アメフト文化がないヨーロッパやアジア、アフリカ、南アメリカなどから人種が集まっているのに、本来は異なるはずの価値観が一斉に集中する。日本人が相撲を1億人が見るのとは違う。その異常な超常現象が神話を生み出す。
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遠く離れたここ歌舞伎町のダーツバーも月曜の仕事をサボったファンの熱気で溢れかえった。
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30人以上はいる。マスクもパーテーションも無し。そんなものは、フットボールの神様に失礼だ。
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たかが数年で流行した感染症など、地上の神話の歴史に比べれば台風の瞬間風速。Super Bowlは神様が見たがっているイベントなのだ。誰も我々の熱狂は止められない。
2月1日には史上最高のNFL選手であるトム・ブレイディが引退したが、Super Bowlのワクワク感は、そんなロスも遥かに上回ってしまう。
思えば2002年に当時2年目のブレイディを観てちょうど20年。今年は「2」の数字に縁があるが、56回目の神話の主役になったのもロサンゼルス・ラムズ。22年ぶり2度目の制覇だった。
ラムズの地元ロサンゼルスの本拠地SoFiスタジアムは7割がラムズファンで、新宿はほとんどがベンガルズファン。その若虎を率いるのは2年目のQBジョー・バロウ。
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トム・ブレイディやベン・ロスリスバーガーのように、わずか2年でチームを世界最高峰に導いた。来年からは、同じAFCのパトリック・マホームズと毎年プレーオフでしのぎを削るかもしれない。
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そして、スーパールーキーのWRジャーマール・チェイス。このキャッチの美しさ、躍動感を見て分かるように、今年22歳になる黒虎は、NFL史上最高のワイドレシーバーになる可能性を秘めている。この試合でタッチダウンは奪えなかったが、あまりにも強烈なインパクトとワンハンドキャッチを残した。
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奇しくも昨年に続いて、構図はベテランvs.フレッシュマン。しかも、両チームのヘッドコーチも36歳と38歳。NFLにも低年齢化の波は押し寄せている。だが、昨年のバッカニアーズ同様、勝ったのはベテラン。牡羊がベンガル虎を飲み込んだ。
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専門家の下馬評では、勢いに乗るベンガルズ有利が多かったが、攻守のバランスを考えても戦力はラムズ。自分の中では予想通りの結果だった。
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攻撃ではNFLナンバーワンのWRにしてスーパーボウルMVPに輝いたクーパー・カップ。レギュラーシーズンでレシーブ数、レシーブヤード、タッチダウン数で3冠を奪ったのは伊達ではない。
試合開始から厳しいマークを受け、オデル・ベッカムを第2クオーターに膝の負傷で失ったあとにギアを上げてきたのは本物の証。MVPも納得のパフォーマンスだった。
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そして、史上最高の守備選手のひとりであり、MVPを同時受賞してもよかったアーロン・ドナルド。ラムズ一筋7年間。試合を決定づけるサックでバロウを仕留めた瞬間、自らの指にリングをはめるジェスチャーはここ数年で最高のライムライトだった。
結果は23-20と、最後の1プレーまで勝敗がわからない好試合だったが、タッチダウンの1つがアンパイアの誤審(フェイスマスクを見逃した)なので、点数以上の実力差があったと言っていい。
しかし、これだけ盛り上げておきながら、さらに楽しみなのは来年だ。ベテラン勢の多いラムズが来年も同舞台に立つ可能性は限りなくゼロに近い。年齢や怪我の影響でチームを離れる選手も多く、選手が活躍するとすぐに年俸が爆上がりするため、移籍が活発でチームがコロコロ衣替えをする。
たった1年で別のチームに生まれ変わってしまうのがNFL。王朝を築きにくく、スーパーボウルには毎年フレッシュな顔ぶれが見参する。だからNFLは(Not for longの略)でもある。
若虎のベンガルズは今度こそ、ロンバルディ・トロフィーを戴冠するか、それとも別のチームが下剋上をするか。いずれにせよ、来年も地上の神話が生まれることは今から決定している。