
雑談集⑤
【紙上のリアリティ】
生成AIを使って小説を書いているのだが、読み返していて、あまりのリアリティにゾッとしている(内容は尋ねないでください)。
「紙上のリアリティ」という言葉があるらしい。小説において、荒唐無稽な物語にいかにリアリティを持たせるかという話だが、これにはいくつかの方法がある。重要なのは「隙間を埋める」ことと、「現実世界と小説世界をリンクさせる」ことだと思う。
前者は、例えば歴史上の人物を題材に小説を書く場合がわかりやすいだろうか。例えば、ある人物の経歴に数年の空白があったとする。その間、彼が何をしていたか資料が残っていない場合、学術論文や評伝であれば「わからない」とするほかないが、小説の場合は空想で埋めることができる。ただし、完全な空想ではだめで、読者に「本当にそうなのかもしれない」と思わせる必要がある。例えば、空海は出家後、遣唐使の一因となるまでの間の記録が乏しい。その部分は電気としてまとめるには空白になってしまうが、小説として書くなら、各地に残る弘法大師伝説をもとにストーリーを組み立てることができる。
後者は縦軸と横軸があり、縦は時間、横は空間である。時間とは歴史のことで、これはモーリス・ルブランが得意とした手法だが、物語を書く中で、歴史を巧みに取り込むのである。『奇巌城』や『棺桶島』、『カリオストロ伯爵夫人』などは歴史を利用した好例と言える。空間は実在する市町村を舞台にしたり、実在する建物や商品などを作中に取り込むことで、現実世界と地続きのところで物語が展開していると読者に思わせる効果が期待できる。
よく小説の書評をするときに「紙上のリアリティ」という言葉を使ってきたが、実際に書いてみて(文章自体はAIに書かせているわけだが)それがどういうものかよくわかった。
【筋書きより枠組みが大事という話】
ちょっとうろ覚えだが、『十角館の殺人』のプロローグで、犯人が計画を練っているところで「重要なのは筋書きではない、枠組みなのだ」という言葉がある。これは確かにそうだと思う。
例えば、旅行の計画を立てるとする。出発からチェックイン、翌日のチェックアウトから帰宅までガチガチに計画を立ててしまうと、渋滞や列車の遅延など不慮の事態が起きたときに融通が利かなくなる。一方で、行きたい場所のリストアップだけしておき、チェックイン・チェックアウト以外の時間はアバウトにしておくと、状況に応じて調整ができるので楽である。僕はいつもこのやり方をしている。
仕事のスケジューリングもそうで、多くは事細かにスケジュールを立てるよう指導されているような気がするが、そうするとやはり不慮の事態が発生すると対応できなくなる。一日のノルマを設定するより、大まかな節目だけ決めておき、それに間に合うよう仕事をするほうがむしろ効率的かもしれない。