第58回: 地震・雷・石・バッタ。。。 (Jul.2020)

 世の中に数か月遅れてようやく検査体制が整ったか、当地Bengaluruも感染者数が急に伸び始めた。ちらほら見かけていた完全閉鎖エリアも拡大し、スタッフの勤務時間・出勤頻度や送迎車のルートを見直したり、使用人の居住地・周辺環境を改めて確認したりと、気を使う場面が出て来た。再びLockdownか、という噂が流れ、急いで車を酒屋に乗り付けたら、“慌てて来ただろ? 店は開けてるから安心しな” と店主に笑われた。回復者が6割というが、インド全土の感染者は50万を超え、一月後には100万に至ると報じられる。Unlock 2.0に進む州、Lockdownを継続する州と各者各様、国際線再開は未だ不透明だ。

 Covid下のインドはなかなかの災難続きだ。先月、283年ぶりという “特大アンパン” が東部Kolkataを襲い72名の犠牲者を出したかと思えば (Super Cyclone Amphan, 最大風速240km/h, 中心気圧920hpa)、間を置かず “二猿が” 西部Mumbaiを直撃したのも2009年以来という (Severe Cyclone Nisarga, 110km/h, 990hpa)。激しい風水害への救援に現地政府も国も民間も奔走した。

 長年、火種を抱えつつも小康・均衡状態を保っていた北部国境では、1975年以来という小競り合いに発展。20名に上るというインド側犠牲者は投石合戦やら取っ組み合いやら釘付き棍棒による殴り合いやらの結果という。火器が用いられなかったのは自制か装備不足か単に報道されないだけか判然としないが、凄惨な現場が想像される。前後してネパールが地図上の国境線を一方的に書き換えたことに対するインド政府の抗議もあった。

 これを機に反中機運はより一層高まり、製品・ブランドの不買運動、“Vocal for Local” (国産化奨励) も強まる。輸入依存の高い電子部品の国産化を探るカンファレンスは絶えず、ポスコロNew Normを代表するビデオ会議アプリは報奨金付きで政府が代替品提案を公募している。当地の中華料理は、元来スパイシーなチベット料理を更にインド化したもので、日本人が期待する沿岸部の料理とは似ても似つかないが、これもボイコット対象だ。

 ここ2週間ほどは西部・東部の国境付近からM4-5クラスの報告も相次いだが、大都市の被災経験が少ないせいか地震への警戒感は薄い。かつてMumbaiで建材の売り込みをした際、Seismic Zoneの等級よりも暴風雨への対候性や高層建築での湾曲性・捻回性を問われたから、そちらの懸念の方が大きいのだろう。デカン高原の南端に位置する当地Bengaluruで何度か聞いた地鳴りは、地震要因説が有力でも明確な結果は分からず仕舞い。一月ほど前、市内全域から報告された爆発音は、数日に渡りMysteryと騒がれたが、その後、戦闘機が音速内に減速した際の衝撃波だったことを空軍が認めて一件落着。こんな人災 (?) より地震の方がよっぽど珍しい。

 この手の報道で先週、驚いたのは落雷だ。東部と北部の2州に跨り1時間足らずで107名が亡くなったというが、それだけ広範囲に重篤な被害が出た状況に想像が及ばない。氾濫警戒エリアに指定される低地の平野で、被災したのは主に農業従事者だというから、避雷針の商機を探るまでもなく、よほど何もない所なのだろうか。落雷による死者は全国で年間2-3千名だそうだから、人口比を1桁割り引いても年平均3名程度という日本よりまだ2桁多い。

 そして何より直近の話題はバッタ、Gurgaonのオフィス周辺にも大群が飛来した。日曜の午前中には珍しいスタッフからのメッセージ、“木を覆っている茶色は枯れ葉じゃないよ” というコメントと写真が送られてきて何の事かと首を傾げたが、続いて届いた動画で合点がいった。空を埋め尽くす大群と、バルコニーで列を為して行進するバッタ。慌てて扉を閉めたところで映像は途切れた。

 いったんは7月末から、と伝えられた新学期も9月末からに改められた。学年別に遠隔授業の基準を示す政府の御触れも出されたが、暫くは家族で引き籠り生活を続けることになりそうだ。忍び寄る足音も聞こえるが、ここまで平穏に暮らせていることに感謝すべきかもしれない。 

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