第82回: カラスの勝手でしょ? (Oct.2024)
Cosmopolitan が集い今や選択肢も豊富な南インド Bengaluru にいる限り、食を始めとした日常生活における個人の嗜好に関して、あれこれ周囲から「強制」されてやむなく従った、という経験はない。いや、日本人的には「矯正」と感じるほどしつこくオススメされることも時にはあるが、自分の Comfort Zone は自分で定めるのが前提だから、「君のオススメに従ったら、こんな目にあったではないか」と文句を言ったところで「いや、選んだのはお前だろ?」と返されるのみ。詰まるところの好き嫌いはいくら親しい身内や友人と言えども、他人には任せられない、すべきでない、というのが当地の常識。今日は第50回衆議院選挙の公示日、という日本語ニュースに触れた傍ら、Bengaluru らしい報道が目に付いたので話のネタ程度に。
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ルームメイトを募る女性の投稿に対して各所からのツッコミが止まない、という報道。本人同様、「 "Veg" (ベジタリアン) で Hindi speaking の若い女性希望」という基本条件そのものは話題にするほど珍しくない。が「来客・ペット・"loud music" ・アルコール・煙草が気にならない方」という付加条件が、比較的保守的に映る基本条件との対比で衆目を集めた様子。「何で酒も煙草も好きなのに肉は食わないんだ?」という疑問に対する回答は明確で十二分、"It’s about comfort and peace in the house"
更には「皆、Veg ばかり指摘するが、ポイントが違う。Bengaluru 在住で英語で投稿しているのに何故 Hindi speaking を条件にするんだ?共通言語はひとつで十分だ、Kannada ( Bengaluru を州都とする Karnataka 州のローカル言語) を学ぶ気がないなら "英語か Hindi speaking" と書くべきだ」と単に絡みたいのか、教育的指導をしたいのか、よく分からない指摘が続きSNSを賑やかしているという。
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次の記事もまたくだらない (誉め言葉)。地域柄 "Veg" として知られる西インドの都市、Shinkansen Bullet Train の主要駅も建設中の街におけるストリートフードの話題。ある屋台が "Cheese Anguri" (チーズ入りいも団子カレー) の調理動画を投稿したのが発端だ。通常、インドの Veg は、動物由来の一切を控える Vegan と異なり、乳製品が広く摂取される。従い Paneer (カッテージチーズ) を始めとしたチーズ類は Veg メニューの定番素材。しかしながら、この屋台が供する Sabji (野菜カレー) は "チーズ入り" の域を超越している、という指摘だ。
赤い水玉の少女で知られる国民的ブランドのプロセスチーズ、段ボールいっぱいに詰まった煉瓦大の業務用製品をおじさんが取り出すシーンから動画が始まる。青空の下、それをひたすらキューブ状に刻んで金盥に移し、山盛りになったものをキッチンに運び込む若者。既にクリームやバターがたっぷり使われた色合いの野菜カレーを強火の上でガシャガシャ振るシェフの傍ら、両手いっぱいのキューブを何掬いも鍋に放り込む助手。ずらっと並べられた深皿にリズムよくお玉一杯ずつ装った上空で、煉瓦大のチーズとグラインダーが踊り見る見るうちにシュレッドチーズが山盛りになる。更にキューブをひと掴みトッピングした上、50cmほど手前からピューと飛ばしたクリームをたっぷりと何往復か掛けて仕上げ、配膳カウンターに並べられる。
曰く「心臓発作でも起こさせたいのか?」、「せっかくの野菜カレーが過剰なチーズで台無しだ」とか。と思えば、「正しくイノベーションだ!私は食べたくないけど」、「一度は試してみたい!」という声と併せて紹介された上で、「ひとつ確かなことは『インドのストリートフードはいつも驚きに溢れていて、食べ物の定義を広げてくれる』」と記事は締め括られる。
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最近、当地の和食店・日本人シェフ仲間らと通っているモツ焼き屋は市場近くのお世辞にも綺麗とは言い難いエリアにある。見るからに新鮮な羊モツが部位ごとに並べられたオープンキッチン (?) で指差し注文すると、丁度うまい具合に炭火で焼いた上、オリジナルスパイスを塗して供される。隣の酒屋で好きな物を買って持ち込むスタイルだから、何人かで何皿かを頼んで指で摘まみながら、安い国産ウイスキーをちびちびやっている客が多い模様。外国人や富裕層が好んで訪れる環境ではないし、経験の限りでは男性しか見掛けたことはないが、鮮度も焼き加減も抜群だから好事家の地元庶民には評判らしい。現に送迎させている我が家のドライバーは、「うちのSirはあんな店に通ってる」と仲間に自慢 (!?) している様子。
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誰しも「カラスの勝手」に生きたい故、投票率も高い当地 ( 第79回: 世界最大の総選挙当日、「まつりごと」のあり方 )。さて、第50回衆議院総選挙への国民の関心やいかに?