早期からの緩和ケア - がん診療における新しい支援のかたち
こんにちは。やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間の医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は、早期からの緩和ケアについて話し合いました。
課題背景
緩和ケアは、終末期医療というイメージが強く持たれがちですが、本来は「がんと診断された時から」の支援を意味します。支持療法(サポーティブケア)の推進、がんとの共生支援、就労支援、そして自殺予防対策など、包括的な支援が求められています。しかし、医療者自身が「緩和ケア=終末期」という固定観念を持っていることが、適切な支援の障壁となっている現状があります。
カンファレンスでの意見交換
1. 緩和ケアの本質について
緩和ケア専門医A:「緩和ケアという言葉のどこにも『終末期』というニュアンスはありません。むしろ、症状を緩和することが本質です。医療者が『緩和ケア=終末期』という固定観念を持つことで、自ら支援の可能性を狭めてしまっているのかもしれません」
医師B:「がん対策基本計画でも、『地域の実情に応じて診断時から一貫とする体制を整備する』ことが明記されています。特に地方部では、治療のための通院が困難な患者さんもおり、地域での支援体制の構築が重要です」
2. 早期介入の必要性
緩和ケア医C:「遺族調査の結果では、約3割の患者さんが診断時や治療中から緩和ケアサービスを受けていましたが、4割以上の遺族が『もっと早く介入を受けたかった』と回答しています。特に、終末期の療養や介護に関する相談ニーズが高いことがわかっています」
在宅医D:「病院から依頼を受ける際には、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)が適切に行われていることが重要です。その際、現時点での希望を確認し、バックアップ体制を整えることで、より良い支援が可能になります」
3. 医療者間の連携について
腫瘍内科医E:「最近は、ゲノム医療の進展や新規治療法の増加により、オンコロジストの負担が増大しています。ACPや意思決定支援について、看護師やソーシャルワーカーとの分業を進める動きもありますが、まだ課題も多い状況です」
緩和ケア専門医F:「在宅緩和ケアの立場からできることとして、治療中の患者さんへの支援や、病院との連携強化があります。『この地域なら大丈夫』と患者さんが安心して治療を受けられる体制づくりが重要です」
4. 今後の展望と課題
在宅医G:「住民の方々は、病気の進行や死を経験したことがない場合が多く、緩和ケアに対して『縁起が悪い』といった誤解を持つことがあります。医療者がしっかりとナビゲートし、安心感を提供することが必要です」
統括医師H:「人生の3分の1はがんで亡くなる時代です。地域の患者さんが、診断時から安心して治療を受け、生活できるよう、医療者からの積極的な情報発信と支援体制の構築が求められています」
おわりに
早期からの緩和ケアは、単なる終末期医療ではなく、がん患者さんとご家族の生活の質を総合的に支援するものです。地域の実情に応じた支援体制を構築し、医療者間の連携を強化することで、患者さんが安心して治療を受けられる環境づくりを目指していきたいと思います。