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在宅診療における夜間頻尿への対応

こんにちは、やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は「夜間頻尿への対応」というテーマで話し合いました。

Take Home Message

  • 本人の生活リズムと精神状態の評価が重要

  • 誰が困っているのか(本人・家族・施設)をしっかり把握

  • 薬物療法の前に生活指導と環境調整を優先する

カンファでの意見交換


A医師:「高齢の患者さんで夜間頻尿の訴えが多いのですが、α遮断薬や過活動膀胱の治療薬を使用しても、なかなか効果を実感できないケースが多いです。皆さんはどのように対応されていますか?」

B医師:「薬物療法の前に、患者さんの生活リズムをよく観察することが大切です。夜間頻尿の訴えの背景には、不眠や不安などの精神的な要因が隠れていることも多いんです。もし薬物療法が必要な場合は、夜間多尿なのか過活動膀胱なのかで薬剤選択が変わってきます。高齢者ではイミダフェナシンなど半減期の短い薬剤を選ぶこともありますが、まずは生活指導からスタートするようにしています」

C医師:「私も生活習慣の改善を重視しています。特に夕方以降の飲水管理は重要です。お茶やコーヒーなどカフェイン含有飲料を好んで飲まれる方が多いので、その調整で改善するケースをよく経験します」

D医師:「誰が困っているのかの評価から始めています。施設の場合、スタッフの負担感から相談されることも多いですが、実際には患者さんの生活リズムや精神面に原因があることも。夕食が16:30で18時就寝という生活では、当然夜間頻尿として捉えられる時間帯が長くなりますよね」

E医師:「生活習慣の見直しで改善するケースは多いですね。ただ、男性で夜間多尿が明確な場合、最近ではデスモプレシンの選択肢もあります。もちろん適応はしっかり確認して、低ナトリウム血症などのリスクには注意が必要ですが」

F医師:「男性の場合、夜間3-4回の排尿は実は自然なことだとお話しすることもあります。患者さんは『私だけではないんですね』と安心されることが多く、不安の軽減につながります。過活動膀胱が疑われる場合も、β3作動薬などの選択肢はありますが、やはり生活指導が基本ですね」

G医師:「漢方薬の活用も一つの選択肢です。冷え症の強い方には八味地黄丸、全身症状を伴う方には五苓散など、その方の体質に合わせて選択しています。ただし、どんな薬剤を使う場合でも、生活習慣の改善を並行して行うことが重要だと感じています」

実践的な対応のポイント

生活習慣の評価

就寝前の飲水状況
カフェイン摂取のタイミング
日中の活動量
就寝・起床時間

精神面のケア

不安・寂しさの評価
睡眠の質の確認
環境調整の検討

生活指導

適切な飲水指導
日中の活動量増加
就寝時間の見直し

家族・施設との協力

本人の生活リズムの共有
心理面への配慮
無理のない介助方法の検討

おわりに

A医師は「薬物療法に頼りがちでしたが、生活習慣の見直しと精神面へのケアの重要性を実感しました。特に『誰が困っているのか』という視点は、今後の診療に活かしていきたいと思います」と締めくくりました。
本日の議論が、医療介護の現場での一助となれば幸いです。
やまとドクターサポートの原田でした。