新型コロナウイルス感染症の重症化リスクは変わったのか? - 2023年8月、現場医師たちの最新の実感
こんにちは。やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分で終わる医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は過去のやりとりで2023年8月時点での新型コロナについての動向がテーマでした。
Take Home Message
重症化のリスクは以前より低下している印象
施設でのクラスター発生は依然として要注意
感染後のADL低下など、二次的な影響に注意が必要
カンファでの意見交換
A医師:「今回は流行しているコロナウイルスについて皆さんの印象を伺いたいのですが、自分が思っている以上に100歳くらいの方でも数日熱が出てそれだけで終わってしまうとか、重症化する人をあまり見かけないなと感じています。皆さんはどうですか?また、抗ウイルス薬の使用状況についてもお聞かせください」
B医師:「当院でも以前より重症化する方は少ない印象です。ただ、救急外来で経験した若い未接種者の重症例を見ると、ワクチン接種の重要性を実感します。抗ウイルス薬については、個々の患者さんの状態、基礎疾患、併用薬を慎重に評価した上で使用を判断しています」
C医師:「介護施設でクラスターが発生しています。確かに以前より重症化率は下がっている印象ですが、高齢者や基礎疾患のある方は依然として注意が必要です。抗ウイルス薬の使用は、重症化リスクを評価した上で、慎重に判断するようにしています」
D医師:「お盆前に施設で複数のクラスターが発生しました。直接的な重症化は少なくても、その後のADL低下が気になります。コロナ治療は終わっても、その後の状態低下で在宅移行になるケースを何例か経験しています」
E医師:「当院では抗ウイルス薬の使用について、添付文書の禁忌事項や相互作用を確認し、個別に適応を判断しています。重症化リスクの高い方に対して、適切なタイミングでの介入を心がけています」
F医師:「施設の認知症患者さんでは安静保持が難しく、入院管理が必要になるケースもあります。基礎疾患や重症化リスクを評価した上で、適切な治療方針を決定するようにしています」
G医師:「検査については、1回目は陰性でも複数回検査で陽性が判明するケースを経験します。治療方針は個々の状況に応じて判断していますが、特に高齢者は慎重な経過観察が必要だと考えています」
H医師:「病院では車中での抗原検査後、陽性者は別室で診察する体制を取っています。入院については、5類に移行後も病院の受入れ体制によって状況が異なります。個室の確保が課題になっています」
J医師:「重要な情報を共有させていただきたいのですが、現在、流行株が変化してきています。EG.5(通称エリス株)が主流になりつつあり、これまでの株より感染力が20%程度強いとされています。重症化はしにくいものの、感染力の強い株が生き残って広がっていく傾向にあるようです」
「2023年9月以降のワクチンはエリス株にも対応したものになる予定です。高齢者など重症化リスクの高い方には、引き続きワクチン接種を検討する必要があると考えています」
おわりに
今回の議論(2023年8月時点)を通じて、新型コロナウイルス感染症の臨床像が変化してきていることが確認できました。重症化のリスクは低下している一方で、施設でのクラスター発生や感染後のADL低下など、新たな課題も見えてきています。
A医師:「やはり皆さんも重症化しにくくなっているという印象をお持ちのようですね。ただ、コロナをきっかけとしたその後の経過や、集団生活での感染対策など、依然として注意が必要な感染症であることを改めて認識しました。ウイルス自体が進化を続けている中で、私たちも対応を更新し続けていく必要があるのですね。ありがとうございました」
本日の議論が、医療介護の現場での実践の一助となれば幸いです。
やまとドクターサポートの原田でした。