在宅医療における置き薬をどうするか?
こんにちは、やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間の医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は、在宅医療における置き薬の運用について話し合いました。
カンファでの意見交換
A医師:「在宅における週末の患者さんで予測指示としてカロナールなど様々置いておくことが現実的にはあると思うのですが、実際各診療所の現状を伺いたいと思います。個人個人で内容が違うのか、それとも診療所として決まった置き薬セットなどはあるのか。また、置き薬を置くタイミングや、それらの運用方法について教えてもらえたらと思います。」
B医師:「診療所では置き薬としてのセットは特にないようです。各患者さんごとに、例えば飲めなくなったタイミングとか、がんの患者さんが週末期に近づいてきて置いた方がいいかなという時のタイミングで、各先生たちが腎機能とか患者さんの体重とかを見て必要な薬を出すという形でやっていました。確かにその各患者さんにどういう薬が何個あるというのがバラバラになってしまうので、そこを統一する方法もあってもいいのかなと思っていたところでした。」
A医師:「他の診療所ではどのように対応されていますか?」
C医師:「私が意識しているのは、カロナールを置いておくことと、週末期の患者さんで浣腸で困ることがあるので浣腸も必要かなと思うことがあります。あとは対応してくださる訪問看護師さんと相談して必要な薬を調整することが多いです。」
D医師:「うちでは『やまとセット』という名前で、透明な小さいバッグの中にソルデム、ロセフィン、点滴セットなどを入れています。特に寝たきりで、発熱など高度急変状態のリスクが高い人たちのところに置かせてもらっています。発熱した時に訪問看護師さんが行って対応できるようにしています。
コストと法令遵守の問題はありますが、患者さんファーストで考えて対応しています。医師の指示で使うようにという形ではやっています。」
E医師:「先生がいらっしゃった時に、構成剤を全家庭に処方してキープしておくというプロジェクトを一時期やっていたんですけど、薬局の方からもコメントがあったりして、法律的にちょっと難しいというか、実際リーズナブルではないですよね。確かに助かった部分もすごくたくさんあるんですけど、一方で実際処方した全体の何割がその構成剤を使ったかって多分かなり少ない印象です。
現実的にはやはり病態に応じたカロナールとか、あと骨盤とか座薬とか、あと点滴とか、例えば夏場が近い時に点滴を置いておくとか、そういう実情に応じた対応の方が現実的なのかなと思います。」
F医師:「私たちの所の事情として、土日とかお休みの時に訪問看護師さんが入ってくれない場合が多いんですね。入ってくださる方も本当に稀にいるんですけど。その休日のために、例えば末期の方で苦しくなってきて、もしかしたら注射を始めなくちゃいけない、セレネースを始めなきゃいけないかなという方には、あらかじめダイアップを出しておいて、一晩だけ本当に申し訳ないんだけどという感じで対応することはあります。実際は使わなかったですけれども。」
G医師:「診療所の方に様々なお薬を置き薬として置いていますが、居宅というか患者宅に置くことは極力少なくして、必要時に処方するという感じにしています。診療所にはセレネースの注射薬とか、ブロマゼパム、カロナールなどを置いていますし、変わり種としてはロナセンテープとかアセリオとか、レペタン、ダイアップといったものも一応置いて、いつでも持ち出して緊急時に使えるようにしています。ただ、当番の先生が夜間や休日に診療所まで取りに来て患者宅へ行くのは難しいため、なかなか不便をおかけしているという側面はあるんじゃないかと思っています。」
H医師:「やまと全体でも全患者さんに置き薬を置こうというプロジェクトが今まで3回ぐらいあるんですけど、なんか半年ぐらいするとなくなっちゃうんですよね。当然置いとくとメリット・デメリットがあって、続かない理由があるんだろうなと思っていて。そういう経過の中で多分皆さん、患者の状態把握と予測がうまくなっていくので、その患者に合わせてきちんとした処方だったり、置き薬の処方ができるようになってきているのかなというのを感じています。」
おわりに
置き薬の運用は、患者さんの安全と利便性を確保しながら、コストや法令遵守とのバランスを取る必要がある難しい課題です。各診療所で様々な工夫を重ねながら、より良い方法を模索している状況が共有されました。
特に印象的だったのは、置き薬の運用を通じて医師の予測力が向上し、より適切な処方ができるようになっていくという指摘です。今後も患者さんにとって最適な置き薬の運用方法を、チームで検討していきたいと思います。