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がん患者への早期在宅医療介入をどう考えるか? - 早期からの緩和ケアは誰のため

こんにちは。やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回はがん患者への早期在宅医療介入について話し合いました。

Take Home Message

  • 早期介入の意義と課題を十分に検討する必要性

  • 病院との役割分担と情報共有の重要性

  • 患者の意向を中心とした支援体制の構築

カンファでの意見交換

A医師:「がん患者の在宅医療について、積極的治療が困難になってからの紹介が多い現状があります。しかし、早期からの並行介入にはいくつかのメリットがあると考えています。例えば、患者との関係構築に時間をかけられる、マイナートラブルへの早期対応が可能、療養環境の事前整備ができる、ACP(アドバンスド・ケア・プランニング)を十分な時間をかけて行えるなどです。一方で、病院との役割分担や費用負担などの課題もあります。皆さんのご意見をお聞かせください」

B医師:「早期介入の是非は、まず患者さんの希望が重要だと思います。治療担当医と在宅医の両方と良好な関係を築ける患者さんもいれば『見放された』と感じてしまう方もいます。また、在宅医に対して『治せない医師』というイメージを持つ方もいて、なかなか難しい面があります」

A医師:「病院との連携について、具体的な工夫はありますか?」

C医師:「私は並行診療というより、早い段階から『在宅という選択肢がある』ということを患者さんに知っていただくことが重要だと考えています。ネガティブな理由での在宅移行ではなく、より良い治療継続のための選択肢として提示できればと思います」

D医師:「医師同士の連携だけでなく、多職種のスタッフとの情報共有も重要です。入院中のスタッフと在宅のスタッフでどのように情報をやり取りするか、具体的な方法を決めておく必要があります」

A医師:「実際の経験では、どのような課題がありましたか?」

E医師:「化学療法の副作用管理が難しい場合があります。がん治療医から具体的な注意点の指示をいただき、必要時にすぐ入院できる体制を整えておくことが重要です」

F医師:「医師同士のコミュニケーションエラーが課題になることがあります。誰が治療の主導権を持つのか、お互いの顔が見えない状況での介入の難しさなど、日々感じています。定期的な合同カンファレンスなどがあれば良いのですが」

実践的なアプローチ

  1. 早期介入の判断

    • 患者の希望確認

    • 病院側との事前協議

    • 役割分担の明確化

  2. 連携体制の構築

    • 定期的な情報共有の仕組み

    • 緊急時の対応方針

    • 多職種での情報共有方法

  3. 患者・家族支援

    • 十分な説明と選択肢の提示

    • 段階的な関係構築

    • きめ細かな症状管理

  4. システムの整備

    • 効率的な情報共有の仕組み

    • 費用負担への対応

    • 定期的な評価と見直し

おわりに

がん患者への早期在宅医療介入は、より良い緩和ケアを実現するための手段の一つとして期待されます。ただし、これは目的ではなく手段であり、患者さんにより良いケアを提供するという本来の目的を見失わないことが重要です。

今回の議論を通じて、早期介入の意義と課題が明確になりました。特に、医療者間のコミュニケーションの重要性と、患者さんの意向を中心とした支援体制の構築が必要であることが確認されました。

本日の議論が、皆様の診療現場での判断の一助となれば幸いです。

やまとドクターサポートの原田でした。