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在宅でのステロイド使用をどう考えるか? - DPP4阻害薬による類天疱瘡の症例から

こんにちは、やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間の医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は、在宅でのステロイド使用について、実際の症例を基に話し合いました。

Take Home Message

  • 在宅でのステロイド使用は、患者の状態と環境を総合的に評価して判断

  • 血糖コントロールなどのリスク管理が重要

  • 入院での管理が望ましい場合は、丁寧な説明を心がける

カンファでの意見交換の詳細

A医師:「DPP4阻害薬によって類天疱瘡を起こした症例を経験しました。結果として皮膚科にコンサルトして原因薬剤の中止とステロイド外用薬で良くなったのですが、もし良くならなかった場合、やはり重症性からステロイドで治療する必要があるのかな、全身投与が必要なのかなと考えていました。元々糖尿病があって、さらに入院も拒否されたりするような、指導にも少し癖がある方で、ステロイドの全身投与はあまりやりたくないと思ったんですが。」

A医師:「やるとしたら、しっかり糖尿病のコントロールも必要になってくる。その管理とか、もし悪くなった時どうしようかというところを悩みました。プレドニンなどで全身投与する場合、何mgぐらいまでだったら皆さん対応されることがあるのか、また高血糖などのリスクに対してインスリン調整が必要な場合、治療効果とリスクのバランスをどう考えているか、お聞きしたいと思います。」

B医師:「あまりステロイドを使用した経験は多くないのですが、入院して血糖値もコントロールしながらやっていくことを考えてしまいます。」

C医師:「特殊なケースですね。在宅で見ていくのは、例えば認知症で入院できない方です。私も類天疱瘡の患者さんを経験しましたが、レシピ通りにやりました。施設だったので、いつも観察はしっかりしてくださる場所で、看護師さんもいたため、病院にいるのと同じような観察ができると判断して開始しました。」

A医師:「具体的な量と観察のポイントについて、他の先生方はいかがでしょうか?」

D医師:「やみの方でもDPP4関連の疑わしい方が何件かいるのですが、いずれもプレドニンは使いにくいなと思って、それ以外の外用だったり原因薬の中止で何とか良くなったという印象です。プレドニンを規定通り使うとなると体重1mg/kgぐらいになるので、かなりの量になってきます。感染のリスクなど副作用が全面に出てしまうので、在宅だと難しいなと悩んでいました。」

E医師:「現実に対応する場合として、感染症が入っているかどうか、あとは感染がどれくらい発生するかとか、家族さんや施設の職員といった周りがどのくらいサポートしてくれるのかというのも重要だと思います。注射から内服に移行する場合やプレドニンを減らしていく場合も、患者さんと我々だけの関係では難しいですね。量が多ければ難しいし、維持量で5mgぐらいなら見ていけますが、10mgぐらいでもある意味嫌ですね。」

F医師:「私はどちらかというと躊躇なくステロイドを使っていく方なんです。ステロイドの種類や副作用をちゃんと理解した上で、一般的にステロイドの副作用やリスクって世間的に強調されすぎている印象を受けています。特に私たちの患者さんは基本的に残された時間が短い方が多いですし、リスク管理をしながらベネフィットを追求していく姿勢が大切です。リスクを過剰評価してしまうと、本当に患者さんに向き合えないんじゃないかと思います。」

A医師:「実際の使用経験について、他にありますか?」

G医師:「私は消化器内科なので、外来では潰瘍性大腸炎の増悪に対してステロイドをよく使います。プレドニゾロン30mgから始めて、抵抗性であれば60mgぐらいまでは外来で使います。バクタを1日1回内服させながら、糖尿病がある人でリスクが高い場合は、24時間血糖測定の機械をつけてもらって自宅でスライディングスケールをやったこともあります。」

H医師:「実際の経験で言うと、PMRの人で15mgを継続して内服している方もいました。例えばステロイドパルスで入院して1000mgとかそういうのは家ではやりづらいですが、家族の希望との兼ね合いが一番大切だと思います。入院してもいいと言うなら入院した方が安心だし、家でやれることであれば、リスクをしっかり説明しながらやるという選択肢になるのかなと思います。」

I医師:「がんの終末期の悪液質疑いの方には、デカドロンを使用していました。その時は終末期だったので、高血糖や脱水を心配するというよりは、食欲不振が問題になってきた印象があります。血糖は上がっても、終末期として対応したケースが多かったです。」

A医師:「私も在宅でステロイドはある程度積極的に使用していて、がんの終末期にデカドロンを使うのは一般的になってきたと思います。関節リウマチでRS3PE症候群のような場合は20mg程度から開始して、5mgまで漸減していくことが多いです。10mg以上を1ヶ月以上使用する場合はニューモシスチス肺炎の予防としてバクタも使用しています。」

おわりに

在宅でのステロイド使用は、リスクとベネフィットのバランスを取りながら、個々の状況に応じて判断する必要があります。特に、観察体制の確保と適切な血糖管理が重要となります。

また、入院での管理が望ましい場合は、患者さんやご家族に丁寧に説明することも大切です。今回の議論を通じて、在宅医療におけるステロイド使用の実践的なアプローチについて、多くの知見を共有することができました。