見出し画像

在宅医療学会2024から考える、これからの学びのあり方 - 現場からの報告

こんにちは、やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は2024年の在宅医療学会の振り返りを行いました。
Take Home Message

  • 在宅医療の質評価には新しい指標と方法論が必要

  • 実践知の共有と研究的アプローチの両立が重要

  • 15分カンファでの対話を通じた学び合いの価値

カンファでの意見交換

A医師:「学会に参加された先生方、印象に残った発表はありましたか?」
B医師:「私は『在宅医療におけるアウトカムの可視化』の講演が印象的でした。」
A医師:「どんな内容でしたか?」
B医師:「医療の質評価をストラクチャー、プロセス、アウトカムに分類して、個人・施設・地域ごとに考えていく手法です。特にプロセスの評価が課題として挙げられていて。地域づくりにどう活かすかという視点が興味深かったですね」
C医師:「私も様々なセッションを見ましたが、正直、いろいろありすぎて(笑)。特に研究手法の部分が面白くて。在宅って症例数の制限があってN数の確保が難しいじゃないですか」
A医師:「そうですね」
C医師:「でも、施設間共同研究とか、映像を使った質的研究とか、新しい手法が出てきているんです。これまで診療と地域活動で精一杯で見えていなかった視点でした」
D医師:「私はデジタルポスターをいくつか見ましたが、特にカルテデータとレセプト、薬剤情報を組み合わせた研究はよかったです。」
A医師:「私も見ました。再現可能な取り組みという点で興味深かったですね。ところで、全体的な印象として感じたのは、中規模の在宅診療所が増えてきていることです」
E医師:「具体的には?」
A医師:「人口10万人程度の都市でも400人規模の診療所が珍しくなくなってきていて。昔は都市部の老舗診療所だけでしたが、長野や新潟など、地方でも増えてきているんです」
G医師:「研究的な視点で気になったのは、緩和ケア病棟での質評価の蓄積についてです」
A医師:「それは具体的にどんな内容でしたか?」
G医師:「東北大学の看護学分野で、何年も継続して行われているデータ収集があるんです。そのノウハウは私たちにも参考になるかもしれません」
H医師:「従来の医療の評価って、医療者がサービスを提供して患者さんが受け取る、という一方向の関係で測れましたよね。でも在宅ケアはもっと複雑で...」
A医師:「どういう意味でしょう?」
H医師:「例えば、診療所が地域のゲームチェンジャーになれるかどうか。サッカーで言えば、後半20分から入った選手がチームの流れを変えるような。それを数値だけで測るのは難しいんです」
I医師:「私は若手なので、少し違う視点なんですが...」
A医師:「どんな点が気になりますか?」
I医師:「医療や病態のことだけでなく、精神面のサポートについて学びたいんです。例えば、生きる意味が見いだせない高齢者の方への接し方とか」
J医師:「私も新人なので、他の先生の診療を実際に見てみたいです。シャドーイングの機会があると聞いていますが」
A医師:「そうですね。シャドーイングについて、具体的にどんなことを期待していますか?」
J医師:「できれば患者さんの同意を得て、診療場面を動画に撮らせていただけると。何度も見返して学べますし」
K医師:「この木曜朝の15分カンファでも、いつも新しい気づきがありますよね。知識の提供というより、お互いの経験からインサイトが得られる」
A医師:「そうですね。実は今日の議論を通じて感じたのは、私たちが必要としているのは単なる知識の共有以上のものかもしれません」
L医師:「どういうことでしょう?」
A医師:「それぞれの医師が日々の実践の中で感じる『問い』や『気づき』。それを共有し、深め合える場が大切なんだと思います。学会は刺激になりましたが、このような直接的な対話の場も同じくらい重要かもしれません」

おわりに

医学的知識や技術の向上はもちろん大切ですが、在宅医療ならではの学びがあります。それは患者さんとの関わり方であり、家族との対話であり、地域との関係性の構築です。これからも15分カンファを通じて、お互いの気づきを共有し、学び合っていきたいと思います。
本日の議論が、医療介護の現場での一助となれば幸いです。
やまとドクターサポートの原田でした