地域中小病院の未来像とは? - コミュニティホスピタルへの挑戦
こんにちは。やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分で終わる医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は「高齢者の入院適応」について話し合いました。
Take Home Message
地域の中小病院は「コミュニティホスピタル」としての機能が求められる
高齢者の慢性期救急への対応が重要な役割に
在宅医療との連携強化が今後のカギ
カンファでの意見交換
A医師:「今日は仙台のやまと関連の病院での取り組みについてご紹介したいと思います。病床数140床で、ホスピス・緩和ケア20床を持つ病院です」
「これからの病院は、高度急性期病院と地域多機能病院に二極化していくと考えています。特に200床以下の中小病院は、在宅のバックアップと総合診療を提供する『コミュニティホスピタル』として機能していく必要があるのではないでしょうか」
B医師:「急性期救急に対して、慢性期救急という概念はまさにその通りだと思います。在宅医療を行う中で、高齢者の急変時の受け皿は常に課題になっていますから」
A医師:「病院改革には課題も多くて。まずは地域と顔の見える関係作り、次に80人ほどいる看護師のマネジメント、そして医師同士のチーム医療の構築と段階を踏んで進めていく予定です」
C医師:「在宅診療の文化と従来の病院の文化は違いますよね。最近は病床稼働も問われるので、患者さんの人生に寄り添うというより、言い方は悪いですが、なんとなくやり過ごそうという雰囲気の方も多いと思います。その文化を変えていくのは大変そうです」
A医師:「その通りです。この病院自体は小児科から緩和ケアまであり患者さん地域に寄り添ってきた病院ですが、それでも歴史ある組織の文化を変えていくのは難しいですね。今後は総合内科の若手医師が増えていくと思います。総合診療専門医の若い先生たちの活躍の場として、こういったコミュニティホスピタルは良いのではないかと考えています」
D医師:「外来診療の位置づけはどうお考えですか?」
A医師:「一般的な外来は地域のクリニックと連携して、当院は在宅患者の受け入れ、専門性の高い領域に特化していきたいと考えています」
E医師:「地方では特にそういう役割を持つ病院が必要になっていきますね。ただ、外来を縮小した場合の人員配置はどうなりますか?」
A医師:「入院と救急に特化すると人員構造は変わってきます。当院は若手薬剤師が7人ほどいるので、医師が全て見るのではなく、薬剤師や看護師へのタスクシェアも必要になってくるかもしれないです。」
参考
コミュニティホスピタルは、地域包括ケア病床の活用を含め、今後の中小病院の活路となる可能性が高いと考えられます。以下にその理由を説明します。
地域密着型の医療サービス提供
コミュニティホスピタルは地域に密着した医療サービスを提供し、地域包括ケアシステムの中核となることが期待されています[2]。これは、高齢化社会における医療ニーズに適合しています。多機能な医療施設としての役割
コミュニティホスピタルは、回復期から慢性期までの幅広い入院機能を持ち、地域包括ケア病棟を含む多様な病床を活用できます[2]。これにより、地域の医療ニーズに柔軟に対応することが可能です。経営改善の可能性
全国8,200病院の中で7割を占める200床以下の中小病院5,800病院の経営改善が急務となっています。コミュニティホスピタルのモデルは、これらの中小病院が地域包括ケアシステムの中核となることで経営改善を図る有効な選択肢となり得ます。包括的な医療・介護サービスの提供
コミュニティホスピタルは、入院、外来、在宅、地域をシームレスに連携し、超急性期以外の医療とケアをワンストップで提供することができます。これは、地域包括ケア病床の効果的な活用にもつながります。地域のニーズへの対応
コミュニティホスピタルは、地域の医療ニーズに合わせて柔軟にサービスを提供できるため、地域包括ケア病床を含む様々な機能を効果的に活用することができます。
以上の理由から、コミュニティホスピタルは地域包括ケア病床の活用を含め、中小病院の新たな方向性として有望であり、今後の活路となる可能性が高いと言えます。
Citations:
[1] https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1541211910
[2] https://mediva.co.jp/recruit/blog/working/14507/
おわりに
地域医療の将来像として、コミュニティホスピタルという新しい形が見えてきました。在宅医療との連携、慢性期救急への対応、そして若手医師の育成の場として、その役割は今後ますます重要になっていくでしょう。本日の議論が、医療介護の現場での実践の一助となれば幸いです。
やまとドクターサポートの原田でした。