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温泉研究家物語 第十五話「熊本・黒川温泉の静寂と癒し」

温泉研究家物語 第十五話「熊本・黒川温泉の静寂と癒し」


一 南国の山間へ


次なる旅先として千路座右衛門と希依が選んだのは、熊本県の黒川温泉。阿蘇山の北麓に位置するこの温泉地は、自然と調和した落ち着いた雰囲気で、多くの温泉愛好家に愛されている。


「黒川温泉は、都会の喧騒を忘れさせる静寂の湯として知られておる。自然と一体となる湯とはどのようなものか、興味深い。」

千路座右衛門は、地図を眺めながら期待を膨らませた。


「黒川温泉は『温泉街全体が一つの旅館』というコンセプトで運営されていて、どの宿でも温泉巡りが楽しめるんです。露天風呂巡り手形が有名ですよ!」

希依は温泉巡り用の手形を手に、早速計画を立てていた。


二人は飛行機とバスを乗り継ぎ、阿蘇の雄大な山々を越えながら黒川温泉へと向かった。


二 黒川温泉との出会い


黒川温泉に到着した二人を迎えたのは、山間に広がる静寂と、木造建築が立ち並ぶ温泉街の風景だった。緑豊かな木々の間を流れる川が心地よいせせらぎを奏で、湯けむりが漂う様子はまるで隠れ里のようだった。


「これは……湯だけでなく、この地全体が癒しを提供しておる。見事な湯の都だ。」

千路座右衛門は、その静けさに感嘆した。


「黒川温泉では、自然との調和を大切にしているんです。どの宿も景観に溶け込むように設計されていますよ。」

希依の言葉に、千路座右衛門は頷きながら温泉街を歩いた。


二人はまず、温泉街の中心にある露天風呂のひとつを訪れることにした。


三 露天風呂巡りの始まり


黒川温泉の露天風呂巡り手形を使い、二人は複数の温泉を体験することにした。最初に訪れたのは、渓流沿いに位置する露天風呂だ。湯船に浸かると、目の前に広がる川の流れと木々の緑が心を落ち着かせてくれる。


「この湯は、まるで自然に抱かれているようだな。」

千路座右衛門は、湯の温かさと自然の冷たさが織りなすコントラストに感動していた。


「川の音と風の音が心地よいですね。温泉だけじゃなく、この環境全体が癒しになっている感じがします。」

希依もその静けさに心を奪われていた。


次に訪れたのは、洞窟風の露天風呂。湯に浸かりながら岩壁を眺める体験は、また違った趣があった。


「湯がこのような形で自然と共存しているとは……。江戸時代には考えられぬ湯の形だ。」

千路座右衛門は、湯の多様性に驚きながら記録を取っていた。


四 温泉街の魅力


黒川温泉の魅力は湯だけでなく、温泉街そのものにもあった。小さな土産物店やカフェが点在し、歩くだけで心が癒される雰囲気が漂っている。


二人は地元の名物である「温泉たまご」を楽しみながら、川沿いを散策した。


「この地の人々が湯を守りながら、文化を育てておる様子が伝わる。温泉街全体が一つの旅館という考えも素晴らしい。」

千路座右衛門は、地域の一体感に感銘を受けていた。


「観光客が楽しめるだけじゃなく、地元の人たちが誇りを持てる場所になっているんですね。」

希依もまた、温泉街の魅力を肌で感じていた。


五 温泉地の未来を考える


黒川温泉では、地元の旅館の主人たちと話をする機会も得た。環境保護を重視しながら観光地としての魅力を維持する取り組みが、地域全体で進められているという。


「湯は自然からの贈り物である。これを守り続けるためには、人々の努力が欠かせぬな。」

千路座右衛門は、地元の人々の話を聞きながら深く頷いた。


「黒川温泉って、本当に素敵な考え方で運営されていますね。自然と共存しながら発展しているところが、他の温泉地とは違います。」

希依もその取り組みに感銘を受けていた。


六 次なる旅へ


黒川温泉での旅を終えた二人は、新たな旅への期待を胸に出発の準備を始めた。この地で得た静寂と自然の力は、二人の心に深く刻まれた。


「黒川の湯は、静けさそのものが湯となっておった。次はどのような湯が我々を待っているのか……楽しみだ。」

「次は日本海側に戻って、山形の蔵王温泉なんてどうですか?冬の露天風呂は最高ですよ!」


次なる冒険への期待を胸に、二人は再び旅立つ準備を整えた。


第十五話完

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