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発明家 ドラクワ

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〜12月14日 08:30

第1話「天才の誕生」


19世紀末、フランスのパリ郊外にある静かな村。小高い丘に立つ風車のそばで、一人の少年が地面に這いつくばるように何かを覗き込んでいた。彼の名前はアルセーヌ・ドラクワ。まだ10歳にも満たない少年だが、その目は大人びた鋭さを持ち、常に何かを探求しているかのようだった。


「アルセーヌ、またそんなところで何をしているんだい?」

村の仕立屋である母、マリーが声をかける。しかしアルセーヌは振り返らず、手に持った古びた懐中時計を分解している。歯車の動きに魅了されている彼を見て、母は微笑むしかなかった。


「また時計をいじっているのね。でも、その時計はお隣のジャンさんのものじゃないの?」

「うん。でも壊れて動かなくなってたんだ。だから直してあげようと思って。」

彼の言葉は自信に満ちていた。そしてその言葉通り、翌日には見事に修理された時計がジャンの手元に戻っていた。


天才の片鱗


アルセーヌは幼い頃から普通の子供とは違う特性を持っていた。彼は玩具に飽き足らず、大人たちの使う道具や機械に興味を示した。村の鍛冶屋や農具職人のもとを訪れ、その技術を見ては自分で再現しようとする。彼の手先は器用で、わずかな材料でも何かしら新しいものを作り出すことができた。


そんなある日、村に一人の訪問者がやってきた。その男、ピエール・ベルトランは都市の技術者で、農業機械の改良を進めている人物だった。彼はアルセーヌの才能に気付き、興味を持つ。


「君がこの村で評判の少年か?」

「評判なんて知らないよ。ただ、壊れたものを直すのが好きなだけ。」

アルセーヌの素直な返答にピエールは笑い、こう続けた。

「その好奇心は素晴らしい。もしよければ、私の工房に来てみないか?もっと大きな機械を見せてあげよう。」


初めての工房


ピエールの招待を受け、アルセーヌはパリ郊外の工房を訪れることになった。そこには、村では見たこともないような大規模な機械や装置が所狭しと並んでいた。蒸気機関、プレス機、歯車の山——すべてが彼の興味を刺激した。


「ここでは何をしているの?」

「私は新しい農業機械を作っているんだ。農民たちがもっと効率よく作業できるようにね。」

ピエールの説明に、アルセーヌは感銘を受ける。科学と技術が人々の生活を変える力を持つことを初めて実感した瞬間だった。


その日からアルセーヌは毎週のように工房を訪れるようになり、ピエールのもとで機械の原理や設計の基本を学び始めた。彼の吸収力は驚異的で、短期間で多くの知識を習得していく。


小さな革命

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