映画レビュー「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」
本作はウクライナとポーランドの合作。
舞台は第二次世界大戦のウクライナ。
当時はポーランド領スタニスワブフ。
まさにロシア侵攻の真っただ中で作られた作品。
いや、制作は少し前で侵攻を予測してたのか。
ウクライナは常に時代に翻弄されているのか・・・。
穿った見方をすればロシア批判とも受け止められる。
ウクライナの悲痛なメッセージとも受け取れる。
確かにここで描かれるロシア(当時のソ連)は酷い。
今も昔も変わらないのかもしれない。
しかし、本作はそんな偏見で短絡的は見せ方はしない。
戦争がもたらす悲劇を平凡な家庭を中心に描いている。
どんな国であれ戦争は悲劇をもたらす。
僕らがニュースで目にするのは軍隊が爆撃を繰り返すシーンや崩壊した街の姿。
傷ついた家族も目にするがその日常までは分からない。
時代は違えども、いつも犠牲になるのは何の罪もない普通の家庭。
その事実は今も昔も変わらない。
同じ過ちをいつも繰り返すのか・・・。
映画は戦争の無意味さを家族の絆を通して教えてくれる。
本作には戦闘シーンや銃撃シーンは出てこない。
厳密にいえば、一度だけ発砲シーンはあるが、
戦争映画にありがちな戦車や戦闘機も登場しない。
描かれるのはほぼ家庭内。
それも戦争によって親を亡くした子供とその子供の面倒を見る家族が中心。
子供に罪はない。
ドイツ人だろうとポーランド人だろうとウクライナ人だろうユダヤ人だろうと関係ない。
お互い好きな歌を歌う。
クリスマスソング「キャロル・オブ・ザ・ベル」が幸せをもたらすと信じて・・・。
とても無垢だ。
その子供たちの愛らしい姿や歌声がより戦争の悲惨さを映し出す。
せつなくやりきれなくなる。
国や大人たちのエゴに振り回される。
本作はフィクションだろう。
実際に描かれる物語は存在しない。
だが、そんなことはどうでもいい。
それに近いことや、
もっと悲しい事実は世界のあちこちで起きている。
僕らはそれに目を背けることなく向き合わなきゃいけない。
必ずラストシーンのような世界が待っていると・・・。
感動で流す涙があれば過ちは繰り返さないと。
そう信じていたいけどね。
観ておいてよかった作品。