映画レビュー「劇場版 アナウンサーたちの戦争」
NHKスペシャルで放送された作品の映画化。
TVドラマと映画とは一体どこが違うのか。
重箱の隅を突くよう見方はしない。
よほどの訴求力もあったため映画化されたと期待する。
日本でも海外でも戦争を描く映画は多い。
僕も毎年必ず観ている。
第二次世界大戦が舞台の作品は「オッペンハイマー」「人間の境界」
「関心領域」「ぼくの家族と祖国の戦争」と今年だけでも4本。
最近は戦争ど真ん中の激戦ではなく周辺の人々を描く作品が多い。
その方がより悲惨さは伝わる。
本作もそう。
1939年から1945年までのラジオ放送局が舞台。
本来、事実や感動を伝えることがラジオの使命だが、
戦争によって役割は大きく変わった。
国民を鼓舞するプロパガンダがその使命。
勢いよく情報を流すことで戦意高揚を図る。
新聞などのメディアが政府の意のままに動かされたことは知っていたが、
アナウンサーも当たり前のように巻き込まれていた。
間もなく戦後80年を迎えるが、事実を知るのはかなり遅い。
僕の知識不足は否定できないが、もっと早い段階で事実を知っておくべき。
NHKの制作への意義は感じるがもっと早い段階で作られてもいい。
このジャンルをオープンにしたくないのか。
感動の裏にそんなことを感じた。
また、同じことが今後起きないとは限らない。
これからはネットが中心だが、情報操作によって正しさが失われる可能性もある。
僕らが当然のように聞き入れる日々のニュースも100%正しいといえるか。
巨大な権力を前に正義を貫けるか。
戦時中より可能性は高いが絶対とは言い切れない。
このような作品は時代ごとに公開したほうが自身への戒めになる。
元々はTVドラマなので、映画的な迫力に欠けるのは仕方ない。
韓国作品なら桁違いのスケールで訴えかけるだろう。
テーマの重要性は十分なので、描き方を拘ればもっと訴求できる。
それでも実話を伝えることは素晴らしい。
役者陣もよかった。
主役和田信賢アナウンサーを演じる森田剛がこんなに上手いとは思わなかった。
奥さん役の橋本愛の凛とした姿もよかった。
美しすぎて戦時中には合わない面もあるが。
「あんのこと」の毒親役の河井青葉は健気な母親。
180度異なる役に女優魂を感じたり・・・。
残念なのは観客数。
映画館を独占してしまった。
ローカルな映画館で時間帯も微妙だったが、これは寂しい。
日本代表のアニメ作品もいいが、このジャンルももっと観てもらいたい。