映画レビュー「本心」
予告編を何度も観てかなり気になっていた作品。
予告編を観なかったとしても多分、観ただろう。
描かれる世界は少し先。
具体的には令和7年からの数年間を描く。
来年の話かと思いながら観たが、実際にはこんな世界にはならないと思う。
しかし、10年先と言われれば分からない。
本当にこんな世界が現実になるかも。
空間が広がる楽しみもあるが、それ以上に恐ろしさも感じる。
それは作品の通り。
知らなくてもいいことまで知るのは楽しみよりも恐ろしさ。
「本心」はまさにそんな作品。
”自由死”を選択し他界した母親にその理由を知りたいために
息子が仮想空間上で母親と交流をするストーリー。
それは予告編でも分かるのでネタバレにはならない。
僕は親子の関係を突き詰める展開かと思ったが、それだけではなかった。
その要素がメインなのは間違いないが、周辺で起きる出来事が近い未来を予感させる。
それは可能性と失望を生む。
「リアル・アバター」とか「VF(バーチャル・フィギュア)」は現実になるかもしれない。
シアワセのために使われるのならプラスの効果だが、必ずマイナス面も表れる。
それは今のSNSと同じ。
使い方次第では不幸に陥ることは多い。
本作はそんなことを俯瞰しているのではないか。
今年観た日本映画では僕の中にかなり突き刺さった。
まさにリアルとバーチャルが交錯。
描かれる世界だけでなく、現実の世界がリアルで映画の世界がバーチャルという意味もある。
それも交錯しているように思えてならない。
最近の石井監督作品はほぼ観ているが、この先どんな作品を撮るのかも興味が湧く。
娯楽作品もあるが、「茜色に焼かれる」や「月」のように社会性を露わにする作品が魅力。
そして、原作者の平野啓一郎の頭の中も気になった。
「ある男」や「マチネの終わりに」も映画を観て気になったが、本作は更にそう。
小説は一度も読んでいないので、ついにポチッと押してしまった。
今後、ハマったりして・・・。
そして、最後にほぼ同姓同名の名前で出演した三吉彩花。
僕は密かに好きな女優さんだが、彼女のあるシーンで「あっ」と小さな声を上げてしまった。
少し驚いた。
まあ、これは観てのお楽しみ(笑)。
とりとめのない流れになったが、未来を考えるにはいい映画。
近い存在でも「本心」なんて知らない方がいいかもしれない。