映画レビュー「蛇の道」
個人的に黒沢清監督作品を評論するのは難しい。
前作「スパイの妻」はヴェネチィア国際映画祭銀獅子賞作品で評価も高かったが、
僕の中ではそれほどでもなかった。
面白くないといっているのではない。
人物の描き方が特徴的過ぎて、上手く感情移入できなかった。
それはセンスとか好みの問題であくまでも個人的なこと。
数多い受賞が優れた作品の証。
異論を唱えるつもりは毛頭ない。
そんな意味では、本作も絶賛する者とそうでない者と分かれるだろう。
やはり描き方は独特。
僕はミステリアスな予告編に惹かれ足を運んだが間違いはなかった。
黒沢監督のセルフリメイクとは知らなかった。
どうやら前作と比較しながら観るとより魅力的に感じるようだ。
今は出番のない香川照之が主演のようなので機会があれば観てみたい。
黒沢作品で彼が主役の「トウキョウソナタ」は素晴らしい作品だし。
本作の舞台はフランス。
フランス・日本・ベルギー・ルクセンブルグ合作だが、タイトルからエンドロールまで全てフランス語。
ルクセンブルグあたりはどう絡んでいるんだろうね(笑)。
柴咲コウ演じる精神科医の小夜子はフランス語、英語、日本語を操る。
柴咲コウのフランス語がどこまで上手いかは分からないが、違和感なくドラマは展開。
これだけクールな彼女を観たのは初めて。
表現は正しくないかもしれないが、カッコいい。
いや、ちょっと違う。
冷徹で狂気か。
笑うことも泣くことも一切ない。
やや怒った表情しか映し出されない。
それは過去の出来事がそうさせていると後で気づかされる。
笑顔がステキな女優さんなのに・・・。
少しだけ説明すると、娘を殺された父親と彼に手を貸す精神科医小夜子が繰り広げる復讐劇。
父親が娘を殺した犯人を捜し追い詰めるのだが、主導するのは小夜子。
正直、この父親は人間っぽいのか、バカなのかよく分からない。
小夜子はそれを見切っていたのかもしれない。
そのあたりの描き方が実に難解で黒沢監督的。
観る者を惑わせる。
正しさが存在するようで、正しさのかけらもない。
ストーリーと何ら関係のない西島秀俊もきっと大きな意味があるはず。
現段階で僕には分からないので、誰か教えて欲しい。
画面越しの青木崇高は理解できるが・・・。
不思議マークがつくことの多い黒沢作品だからこそ芸術性が高いと評価される。
これからもそんな不思議さを求めて、僕も観てしまうんだろうね。