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映画レビュー「ティル」

今から70年ほど前の実話。
同じようなストーリーは何度となく観てきた。
白人による黒人差別。
それがあたかも正しいことのように振舞う人たち。

客観的にみれば違和感はハンパない。
どうしてこんな行動ができるのか。
同じ人間で平等じゃないか。

まっとうな教育を受けてきた僕はそう思う。
他の日本人も同様。
当然の認識として受け止める。

しかし、それは全世界共通なのだろうか。
同じように冷静に物事を判断できているのだろうか。
当たり前が当たり前じゃない世界があると思った方がいい。

きっとこの作品も観て、不快に思う人もいる。
自分の常識は本作に登場する白人と何ら変わらない。
そう考える人もいるはず。
だからこの70年も前の事件を映画化するのには意味がある。

僕は「エメット・ティル殺害事件」は知らなかった。
それを知れただけでも大きな価値。
この事件をきっかけにアフリカ系アメリカ人の公民運動が活発になった。

吞気な僕はそんなことを初めて知り、
その運動が一人の女性の愛によって生まれたことに感動を覚えた。
子を想う母親の存在は絶大。
ここまでの力を発揮するには愛だけではなく勇気が必要。
それも中途半端な勇気ではない。

もし、母親が沈黙を通したのなら、時代は変わらなかったかもしれない。
時代を変えるのはいつも普通の人。
それも至極まっとうに生きている人。
本作はそれを証明してくれる。

立ちはだかる高い壁に通常なら諦める。
いわれのない誹謗中傷に傷つき、前に進めなくなる。
99%そうなるんじゃないだろうか。
だが、1%を諦めない。

本作は今もはびこる差別問題へのメッセージを強く感じるが、
同時に信じて前を進む大切さを教えてくれる。
平和に暮らすことは大事でそれを維持するのが僕らの使命だが、
そうではなくなった時に立ち上がれるかどうか。
強く生きる意志を自分に重ね合わせることも必要。

「ティル」ってどんな意味?
と映画を観る前に思っていた僕は反省をしなきゃいけない。

本作の製作はウーピー・ゴールドバーグ。
懐かしい感じがしたが、主人公メイミーの母親役として登場していた。
気づかなかった。
80年代、90年代の印象とは大きく違う。
30年以上経過しているので、当然か・・・。
その彼女はこんな作品で世に問いたかったのだろう。

「どこかで起きている悲劇は全員の問題です。」
このセリフを自分事として受け止められるか。
映画は多くのことを教えてくれる。

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