映画レビュー「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
最近、実話をベースにした映画ばかり観ているが、本作は違う。
いや、数年後、映画の世界が本当になったりして・・・。
さすがに勘弁してもらいたいが、あり得ないとは限らない。
アメリカが分断され、政府軍と政府から離脱した西部勢力との内戦が起こる。
そうならないとは限らないということ。
予告編を観ながら内戦を中心とした戦争映画と思っていた。
その要素はあるが、メインは戦場カメラマンらジャーナリストの視点。
大統領の取材のためにニューヨークからワシントンへの向かう旅が中心。
観方を変えればロードムービー。
一般的にロードムービーは牧歌的な雰囲気だが、本作はまるで逆。
常に命を奪われるかどうかの世界。
平凡な精神力であれば途中で投げ出す。
あえて困難な取材を試みようとは思わない。
ジャーナリストとしての使命感だが命懸け。
実在する戦場カメラマンはこんな感じかもしれない。
僕らは無責任に戦争の惨状を写真や映像で観るが、撮影するのは本作と同じかも。
兵士の背後に潜みながら撮影を続ける。
銃弾に倒れる可能性もある。
しかし、ここにしかない1枚のために動き続ける。
そんな姿も描かれていた。
そこにはどっちが正義でどっちが悪なんてない。
敵か味方かしかない。
同じアメリカ人というザッパな括り方は存在しない。
容赦なく殺される。
どちらが政府軍でどちらが西部勢力か観る者も迷う。
これが星条旗か・・・。
予想していたより戦闘シーンは少ない。
それよりも全体を俯瞰し飛ぶヘリや1対1で向き合う兵士の方が恐ろしい。
その方がリアルに感じるからだろう。
知らない人が大量に殺されるより、一人の仲間が目の前で殺される方がショックは大きい。
破壊された町や逃げ惑う人をずっと見ていると鈍感になる。
今、日々流される報道でもそう。
僕らはそんな戦争を非難しても、実際の傷の痛みは分からない。
しかし、それが目の前で起きれば・・・・。
主役戦場カメラマンリーを演じるのはキルステン・ダンスト。
映画を観ながら、ずっと何に出てたっけ?
とどうでもいいことが気になっていた。
「あ~、スパイダーマンやパワー・オブ・ザ・ドッグね・・・」
彼女が戦争の悲劇を映し出す演技をしていた。
人の表情や動きだけでも伝えることができるわけね。
最近、アメリカ映画は大人しいと思ったが、本作は大胆。
僕はよく知らないが配給は「A24」という新進気鋭のハリウッドスタジオ。
かなり尖った作品を送り出してる。
やはり新しい力が新しい動き作り出す。
こんな世界はない方がいいが、これからも楽しみにしたい。