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映画レビュー「セプテンバー5」
実話モノの映画が好きだ。
それも時代を忠実に反映させ緊張感で押し迫ってくる作品が。
本作もそんな作品といえる。
描かれるのはミュンヘンオリンピック開催期間の1972年9月5日。
この一日だけを描く。
だからタイトルはセプテンバー5。
そのままである。
小難しいタイトルよりも好感が持てる。
パレスチナ武装組織によるイスラエル選手団の人質テロ事件を描く映画を
この時期に公開するのはなんらかの意図があるのか。
考えすぎなのかな・・・。
僕はこの事件はうっすらと知っているものの詳細は知らなかった。
当時は6歳。
日本人選手が活躍する競技も後の時代に知るだけ。
この事件は日本でも大きなニュースになったと思うが、どこまで世間が揺れ動いたかは想像できない。
生中継が与える衝撃は相当だが、ドイツと日本の時差は8時間。
生中継の時間は夜中なのかな?
イスラエルとパレスチナとの緊張感も重要だが、より重要なのはジャーナリストとしての姿勢。
事実を伝えるのがジャーナリストの務めだが、真摯にそれだけに向き合えるのか。
1970年代であろうと2020年代であろうと変わらない。
倫理観は持つとはいえ自社メディアが他社よりも優位に立つ使命感も必要。
自社や他社、自分と戦いながらどう関わっていくか。
賛同を得る行動と批判に晒される行動は紙一重。
賛同を得て評価されれば名声に繋がるが、その逆のパターンもあり得る話。
誤ったニュースを伝え、よかれと考えた報道がマイナスに進むと180度違う展開になる。
メディアの功罪といえる。
最近、公開される時代を描く作品は今に繋がっているように思えてならない。
時代を映す鏡。
ネットが繋がっていようとなかろうと。
本作はドイツとアメリカの合作。
英語とドイツ語が飛び交う。
どちらも分からない僕は字幕に頼るだけ。
その2か国語の仲介に入り通訳も務めるのがレオニー・ベネシュ。
どこかで観た女優と思っていたら、昨年観た「ありふれた教室」の主役。
本作といい感情表現が難しい役を上手く演じていた。
僕らはこうした作品を通して歴史的な事件の真相を理解する。
こんな機会はありがたいし、こんな作品が世界情勢を語る。
エンタメ映画もいいが、骨太の映画も大切にしたい。