映画レビュー「スオミの話をしよう」
三谷幸喜監督らしい作品だが、なぜか評価が低い。
酷評も多いので期待値を下げて映画館に足を運んだか、気にすることはなかった。
最初から最後まで笑わせてくれる面白い映画だった。
評価が低い人はどんな期待をしていたのだろうか。
確かに映画から何かを学ぶという点はない。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でファンになった人には得るものが少ない。
政権を維持するためには身内でも殺す残酷さなど鎌倉時代を生き抜くために
過酷な戦いを強いられてきた人物の凄みに感動した人には物足りないのかも。
登場人物は軽い。
刑事が複数関わっている割には対応が甘い。
セスナであんなことができるわけがない。
そう思うだろう。
そんなことはどうでもいい。
三谷監督は全て分かった上で作っているはず。
楽しむ点はそんなところではない。
ほぼ一つの部屋で繰り広げられる展開を楽しめばいい。
これは内のこと。
長澤まさみ演じるスオミの変幻自在の人物像は外のこと。
内と外で翻弄される男共の自己主張を無責任に眺めればいい。
密室劇ではあるが映画としてのスケールも感じる。
アッと驚くような奇想天外な展開ではないが小気味いい。
この範囲に留めておくのが平和。
それで十分。
時代を映し出す社会性も人間の本性をあぶり出す醜さもない。
映画を観終わった後に考えさせられることもない。
僕は重厚で暗い作品に惹かれることが多いが、本作のような軽快な作品もいい。
ストレス発散には持ってこいだ。
本作では出演する役者が自ら楽しんでいるように思える。
もしくは三谷監督に好きなように使われている。
それも喜びながら使われている。
「鎌倉殿の13人」の流れでいえば坂東彌十郎、宮澤エマ、瀬戸康史がいい味を出していた。
小林隆や梶原善らの常連組のようにこれから重宝されるのか。
そして「鎌倉殿の13人」ではナレーターだった長澤まさみ。
やはり彼女の魅力。
僕は西島秀俊の妻の時のスオミかな(笑)。
ヘルシンキは頭に叩き込まれたね。
ヘルシンキはそんなにいいのだろうか?