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リスクをマネジメントする

自然環境リテラシー学 参加コースA-2 第一回 2021年7月3日~4日

初めまして。アオキと申します。三重大学の自然環境リテラシー学で体験したことを書いていきます。2021年は2020年より状況がいいものの大学の実習が少なそうなので、一つ一つを噛みしめてやろうと思います。ホルモンも木っ端微塵です。

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早朝の話

夜は雨が相当降ったらしい。長距離を朝3時起きで出てきた友人は、土砂降りの雨に起こされて来たとのこと。

帰ってから知ったが、7月3日だから、この雨雲は熱海に向かったのだろうか。雨量は土砂災害の主な原因でなかったというが、他人事には感じられない。

これはカヤックどころじゃなさそう、初日は座学か…と沈んだ気分で電車とバスを乗り継いだ。

しかし、着いてみると青空が。

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バスの車窓に残っている雨粒からも夜の天気がご想像できるだろうが、その奥の景色はうってかわって超が付くほど穏やか。大雨・波浪・強風・雷注意報が出ているとは思えない。

アウトドア活動の実施は、現地の状況を知ったうえで判断した方がいいらしい。今回はそのいい例で、波も低いことから決行することとなった。

ロッジさらくわと周辺情報、竃方の塩

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出典:地理院地図 / GSI Maps|国土地理院

今回の拠点はロッジさらくわという施設。現在営業を中止しており一般客は入れないが、特別に使わせていただけることになった。実習中はもちろん感染症対策を入念にし、テントも食事も一人用、体温測定と体調チェックも前後2週間ずつ、実習の要項には想定と対策がビッシリ、などという徹底ぶりだ。正直言ってかなり面倒だが、仕方がない。

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出典:地理院地図 / GSI Maps|国土地理院

ここはリアス式海岸なのだが、これがカヤックにピッタリの地形らしい。まず、入り江になっていることで波が無くなる。そして、海に山が接しているので陸からだと山を越えないといけない海岸がある。

ただし、静かな海は地元の産業にも恩恵を与える。したがって,漁業・水産業・渡船業などを営む人々の船の往来が多い。カヤックが迷惑をかけてはいけないので、船が通るときには早めに退避する必要がある。

この地域では塩づくりをしており、1日目に見学をさせていただいた。その塩は夕飯で頂き物の猪肉にかけて食べたが、スーパーの塩と違って美味しかった。詳しくはカマドの画像に貼ったリンクへ。(竈方の紹介ページです。)

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カヤックとリスクマネジメント

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本題に入ろう。

私はこの二日間で、リスクマネジメントの大切さを学んだ。

具体的には、まず冒頭でも触れた天気・海気。海気とは、辞書で引くと「海辺の空気のこと」。自然環境リテラシー学では、二日間を通じて天気や風向風力、波、水温などの予報と結果を確認していた。

ガイドの方々は、入り江に侵入してくるうねりを見れば、湾の外の様子は大体わかると仰っていた。二日目の朝は霧だったが、そういう時は迷わないようひたすら岸沿いに進んだり、目標を小刻みにするらしい。世界の海を旅するときは、どうにもならない海流や潮流もあるそうだ。(海流は黒潮や親潮など常に流れているもの、潮流は潮の満ち引きによって生まれる流れ。)

実際にカヤックに乗ると、その場に止まっているつもりが潮の流れでいつの間にか何メートルも流されていることがあった。またカヤックは、実は風や流れに追われるのに弱く向かってくるものに強いことも体感した。風と潮の流れが目的地から出発地に向いている日、行きと比べて帰りは蛇行してしまいパドルも空回りする感覚があった。結果、体力を大きく消耗してしまった。

こういった天気・海気の予測と対応は、怠ると命を落とす可能性があるだろう。

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次にコミュニケーション。海の上では、距離が離れるため大声とハンドサインでの情報共有が必要になる。お猿サイン(「Y.M.C.A.」のMを片手でする格好)はOKのサイン、パドルを垂直に高く上げると「助けて」などのハンドサインがある。返事がなければ情報が全員に伝達されたかわからない。また中間にいる人が伝達することも重要。

二日目の復路で、三人一組で横並びになっていくことになったのだが、いつの間にか列は崩れ、一人が波に酔ってしまっていた。コミュニケーションが取れていれば、体調が悪くてペースが落ちた人に気づけただろう。その場はリーダーが酔った人をロープで牽引することで事なきを得た。

一方、リーダーやガイドの方々は、海の上でも自分たちに「体調どう?まだイケる?」と頻繁に声をかけてくださった。私の組の人に気づけたのも、こうして声をかけたからなのだろう。安全に実習を進めるために気を配っていることが伝わってきた。

また、危険生物がいることも忘れてはならない。今回はウニが海底に大量にいた。カヤックを乗り降りする岸にはカキの殻が落ちていて、足を切らないようにしなければならなかった。食事の時には、鹿の鳴き声が近くで聞こえた。

この実習の目的は自然環境のことを人々に伝えることだが、こういったリスクは自分も周りの人も全員が知っていなければならないと思う。楽しい自然体験は、安全と健康が大前提だ。

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最後に

真面目なことを書いたが、やっぱりカヤックは楽しい。これが一番の感想だ。この感動を共有したいので、少し想像してみてほしい。

リアス式海岸は山が沈んでできた地形だ。ということは、カヤックで山の谷間を飛んでいるということだ(?)。しかも、カヤックなので船舶免許がないのに自分の思うままに移動できる。そう、鳥になれるのだ。そのうえ、たどり着いた砂浜は歩いてくると半日かかる場所。カヤックに乗れれば、1時間。そんな砂浜でカップラーメンを啜れるなんて、誰もが天国だと思うだろう。

「山と海、行くならどっちがいい?」という、山も海も好きな私にとっては非常に返答に困る質問があるが、これからは「リアス式海岸でカヤック」に決まりだ。

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