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映画『プアン/友だちと呼ばせて』の感想

『プアン/友だちと呼ばせて』はウォン・カーウェイ制作総指揮によるタイ映画である。
監督は『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のナタウット・プーンピリヤ
2022年8月公開。

題名からして、ハズレ臭がプンプンする。
実際に映画が始まると、登場人物たちには感情移入できず、展開は退屈で寝そうになった。
しかし、後半に急展開が訪れ、主人公や友人の背景がわかるとジワジワ引き込まれた。
これは良い映画だ!

以下ネタバレになります。

あらすじ

アメリカ・ニューヨークでバーを経営するボスの元に、タイ・バンコクで暮らす友人のウードから連絡がある。
何年も音信が無かったウードは白血病で余命幾許もない状態だった。彼は人生を清算するため、昔付き合っていた恋人たちに渡したいものがあるという。
友人の頼みを聞くためにタイに帰国したボスは、ウードの元恋人たちを訪れるドライバーを任される。
久しぶりに再会を果たした2人は、楽しくもほろ苦い旅の時間を過ごす。
そして旅の終わりに差し掛かった時、ウードはある大切な秘密をボスに打ち明ける。
一部Yahoo映画より引用

映画はAパートとBパートの2部構成となっている。

Aパートはボスとウードがウードの元恋人たち3人に会いに行くロードムービー的な話である。この辺りは結構退屈で長く感じた...。
しかし、Bパートになるとウードが抱えていた秘密をボスに打ち明ける。これによってボスは傷つくが、受け入れて立ち直っていく過程がとても素晴らしい。

良かったところ

音楽による演出

作中、至るところで60年代の音楽が流れる。ニューヨークやタイの風景とマッチして、ノスタルジックな雰囲気の演出になっていた。

エンディングの主題歌はタイの国民的スターのSTAMPさんという方が歌っている。
映画鑑賞以来、たまに聴いてしまう。

ローカルなタイの風景

メジャーなバンコクやプーケットだけでは無く、チョンブリーなど、マイナーなタイの場所にも訪れる。その国の様々な側面を見ることができるのは、ロードムービーを観る一つの醍醐味である。

クソ野郎でも愛すべきキャラクターたち

主人公のボスは親が金持ちのクソ野郎である。そしてウードは金持ちに嫉妬した、貧乏なクソ野郎だ。
最初は見てられなかったが、彼らが自分たちの過ちや弱さを受け入れ、最終的に前に進もうとする彼らの姿に共感できた。

残念だったところ

邦題はそれで良いのか?

原題は『One For The ROAD』という。
意味は帰りがけのもう一杯という、バーやレストランで使われる言葉である。
余命宣告されたウードはボスにずっと言えない秘密を持っていた。ドライバーをお願いするという内容でボスをタイに呼び寄せるが、ウードがボスを呼んだ理由は別にある。
長年ウードが言い出せなかったボスへの秘密を打ち明けることだ。
そして、この秘密が明かされた時、新しい物語が立ち上がる。

友人に打ち明けたい事があって酒や食事に誘ったが、なかなか言い出せなくて終わり頃にようやく本題を切り出せた、という経験は誰でもあるだろう。
この「帰りがけの一杯の話」こそが、この映画の本命なのだ。

そうなると「プアン/友だちと呼ばせて」では原題の意図が損なわれてしまってるように感じる。
ちなみにプアンはタイ語で友だち、という意味だそうだ。
しかし、日本人でプアンという単語を知ってる人がどれだけいるんだろうか?しかも、副題でも「友だち」と言ってる。
わざわざ原題を変えた邦題にするなら、日本人が大多数理解できる単語にすべきではないか。

せっかく原題は意味のあるオシャレな題名なのに、もったいないと思う。

観た感想

もっと知られて、評価されて良い映画だと思う。
興味がある方は是非観て欲しい。
ネタバレは極力しないように書いたので、面白さが伝えられたか自信がなく申し訳ない。
しかし本当に観て良かった。出会えて感謝である。

ナタウット監督の前作『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』も興味が湧いてきたので、近いうちに観たいと思う。

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