すき家での出来事
仕事を終えて、帰り道の途中にある「すき家」でご飯を食べることにした。
帰ってからご飯の支度をする余裕がまるで無いので、サラッと食事を済ませて、早く寝たい夜だったのだ。
平日の夜、時間は深夜まではいかないが、夜が少し進んだ時間帯。すき家は少し混雑していた。
田舎のすき家にここまで人が集まるのは珍しいなと考えていたのだが、どうやらここのすき家の経営者も同じように考えているようだった。
見渡すと、従業員が2人しか居ないのだ。
厨房で牛丼を作る係が1人。ホールに1人。
いつものお客の入り方ならば、十分にお店を回せるのだろう。
2人に対してほぼ満員の店内は、てんやわんやしていた。
牛丼屋の良いところは、早く、安く済ませられるところである。
それを期待して僕は入店した。
ピンポンを押して待っていた。
店員さんは来ない。
さらにピンポンを押す。
「ただいま〜!!」という声は聞こえる。
店員さんが来ない。
このような時、怒鳴り散らかす人が多数いる。
「注文押してるだろうが!!」
「おい!こっちは!?」
叫んでいる人を見ると、胸が苦しくなる。
しかし僕は店員さんに、強く言うことはできない。
目に見えて忙しそうだからだ。店員さんも決してサボっているわけではない。
「早く済ませたかったのに」と後悔することはあるが、それは店員さんのせいではない。
偶然人が集まってしまったから。
僕が自分で選んで入店したのだから。
結局のところ、入店してから20分間、僕の注文は通ることがなかった。
それでも怒ることはない。
たかが牛丼が少し遅れたくらいなのだ。
みんな怒らないでほしい。
怒るのなら、人手を配置していない本部?に怒るべきだ。
現場で頑張っている人は、応援してあげようよ。
「ご馳走様でした」と笑顔で声をかけて、店を出た。
広い心を持った自分を、自分で褒めながら、夜風に揺られて酔いしれていた。
しかし、口の中がスッキリしないなと考えていると、お水を飲まずに牛丼を食べていたことに気がついた。
思い返すと、水を出してもらえていなかったのだ。
どれだけ待っていても落ち着いていたのだが、水が出されていなかったことを考えると、無性に腹が立った。
けれど、怒ってはダメである。
歯を食いしばった顔で、口角を無理やりにでもあげていく。
その日は寝る直前まで、出されなかった水が頭から離れることはなかったのだ。