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つい、そうしたくなるデザイン

今回はデザインの話をしたいと思います。
いきなりですが、皆さんはアフォーダンスという言葉を耳にされたことはありますか?
主にデザインの世界で使用される言葉で、意味としては、物が持つ形や色、材質などが、その物自体の扱い方を説明しているという考え方です。
(ウィキペディアで調べたら、元々の意味としては少し違うようです。)

具体的な例で説明しましょう。TOPのマグカップの画像、右の取っ手の部分を掴んでカップを口まで運ぶと直感的に理解できますよね?
何を当たり前のことを!と思われるかもしれませんが、要するにそういうものを指します。
他にも、蛇口をひねると水が出るとか、貯金箱に小さな溝はお金を入れるためのものと分かりますよね。

では、ゲームにおけるアフォーダンスにはどの様なものがあるでしょう。
「なぜ人はゲームにハマるのか」で著者の渡辺修司さん、中村彰憲さんはまず定義としてこのように書かれています。

たとえば椅子に座る習慣がある地域であれば、椅子の座り方を教わることでストール、ベンチ、ソファーなど、その形状に近い家具であれば、あらためて学習することがなくても、それらは座るものだと知覚できます。(中略)
このようにアフォーダンスとは、学習を通して形状を知覚、解釈し、その形状が示唆する「行為」を行うことの「価値」や「意味」を見いだして行くことなのです。

さらに、同著ではゲームにおけるアフォーダンスについて、この様に紹介されています。

 さらに認知科学者のドナルド・A・ノーマンは、このアフォーダンスという概念をデザイナーの視点から整理しました。優れたデザインは、それがいかなる行為をアフォードしているか、記号によって明確に示すべきたと主張したのです。
 この点をゲームにおいて指摘したのが、メディアプロデューサー兼研究者の桝山寛です。ゲームにおけるアフォーダンスの例として、次のようなものを挙げています。
 ●「スーパーマリオブラザーズ」では、冒頭からマリオが右側を向いていることで、具体的な指示がなくても「右に進むべき」であることが示される。
 ●「ドラゴンクエスト」では、「セーブ」機能を「ふっかつのじゅもん」という名称にした上で、パスワード設定の文字数を「俳句。詠み人」の文字数にあたる「五・七・五・七・三」にしている。
 この様な例を挙げたうえで、プレイヤーから指示を得るゲームは往々にしてアフォーダンスデザインが優れていると指摘します。

この様なゲームにおける例は他にもたくさんあります。

例えば、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」に登場する棒きれはそれを振ってボコブリンを攻撃することも分かりますし、火を付けて松明として使えることも分かります。

また「ワンダと巨像」では巨像には草の生えた崖と同じ様に登れそうな表面になっています。

あるいは「ロックマン」なら破壊可能な壁はヒビが入っていたりします。

トリッキーな例だと、ストリートファイター2に登場する自動車があります。通常、自動車なので乗り物かなと思ってしまいそうですが、格闘家の前に配置されていることで、攻撃して破壊するものだと分かります。

この様に様々なゲームにおいて、アフォーダンスが機能していることが分かります。
アフォーダンスを使う効果としては、文章による説明が省けるということもあります。
例えば引用にあるマリオの例だと、「右ボタンを押して、マリオを右側に進めてください」という説明がなくても自然と操作が分かるというわけです。

さらにゲームではないですが、文章で伝えるよりアフォーダンスをうまく利用して伝えた方が効果があった例を紹介して今回はおしまいにしたいと思います。(女性にはピンとこない例かもしれません…)

よく、男性トイレで「一歩進んでください」や「きれいに利用していただいてありがとうございます」のような張り紙を見かけますよね。この張り紙にも一定の効果があるのかもしれませんが、アフォーダンスを利用してスマートに解決している例を教えてもらったことがあります。

それは、小便器の足元に段差をつけることだそうです。段差があることで自然と適切な位置に立って用を足すようになるということです。
実際、このことを意識して見てみると、小便器の足元に段差が付いていることが多いのに気付くと思います。

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