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ファンを巻き込んで成長するコンテンツ

3月27日にコミックマーケット98の開催中止が発表されました。

 コミケで思い出した話があります。
以前、出版社の方から聞いた話だっと思うのですが、コミケは出版社側にもメリットがあるという話です。
コミケでは多くの二次創作の作品が出品されます。中にはBLなど公式では絶対にできないような作品もあります。
普通に考えたら、ブランドを既存するリスクや、そもそもオリジナルの売り上げの一部を食ってしまうことが懸念されそうですが、版元の出版社は特に対策を講じたりはしていません。

それはなぜか。
実はオリジナルから二次創作の方向だけではなく、二次創作からオリジナルの方向へのファンの流入が見込めるからです。

例えばオリジナルの作品を二次創作を通じて興味を持ったとか、例えばしばらく見てなかったけど二次創作で熱が再燃したというようなケースです。こうしてオリジナルだけだとリーチできなかったファンを呼び込んでくれる効果があるため、オリジナル側がとやかく言うことはないそうです。

この様な例は1960年代に結成されたバンド「グレイトフル・デッド」にも通じるところがある気がします。(バンド名はジョジョのスタンドとして知ってるという方もいるかも知れませんね。)

グレイトフル・デッドについては糸井重里さん監修の「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」という書籍に詳しく書いてあるので一部を引用します。

例えば、ライブに来たファンに自由に録音させ手作りのテープをファン同士が交換することを許した。これは基本的なサービスを無料で提供する「フリーミアム」の先駆けだった。無料の音楽が原動力となり、ファンのパワフルな口コミ・ネットワークができた。録音を取り締まらなかったことで、最も人気があるツアーバンドになり、チケットを何億ドルも売り、いつの間にか収益の高い「企業」を作り上げていた。レコードの大ヒットがなかったにもかかわらず、グレイトフル・デッドは素晴らしい成功をおさめ、この時代で最も象徴的なロックバンドになった。このカウンターカルチャーを象徴するようなロックバンドが、消費者を取り込む「ブランド」となり、文字通りデッドヘッズのためのライフスタイルをいっしょに作り上げたのである。

また、ファンと言えば、世界で最も熱狂的なファンが多いコンテンツのひとつがスター・ウォーズではないでしょうか。ファンの例として川原一久さんの著書「スター・ウォーズ論」にこんなエピソードが紹介されています。

特別篇が公開された一九九七年、南カリフォルニア州に住むファンの一人、アルビン・ジョンソンは帝国軍のコスチュームを着るファン団体「501st Legion」を立ち上げる。映画に登場したコスチュームにどこまでも近いものを追求した彼らのコスチュームのクオリティは、最終的にはルーカスフィルムから著作権違反として抗議を受けるほどにまで高まっていき、両者の間にはしばらく緊張関係が続いていた。(中略)
有志を集めて病院を訪問したのだ。子供たちは狂喜乱舞して彼らを迎えた。(中略)するとルーカスフィルムもそれまでの認識を一変し、彼らと協力してチャリティ活動を行うことになった。(中略)
今やファンの絆は世代だけではなく、国境をも超えて広がり続けている。

私も何度か六本木でランチをしているジェダイの集団に出くわしたり、コミコンでとてもリアルな皇帝のコスプレの方を拝見したりしたことがあります。このスター・ウォーズファンの熱量の高さとファン同士の結束はファン団体「501st Legion」のように世界を変えてしまうエネルギーさえ持っているように感じます。

この3つの例で分かるのは、ファンを権利で抑制するよりは、二次創作を含め自由にコンテンツを楽しんでもらう方がファンが育ち、ひいてはコンテンツそのものが成長するということのようです。

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