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二度三度来たくなる観光地作り⑧/広域連携で魅力アップ

 大分県の湯布院町湯平温泉にある小さな旅館「山城屋」が、コロナ禍を経験して見つけた大切な宝物。そして、これから益々グローバル化する観光業界の取り組むべき課題について回を分けてご紹介します。


観光素材の発掘と情報収集

 私が会長を務める「インバウンド全国推進協議会」は、大分県が公募した委託事業「観光産業リバイバル推進事業」を受託しました。

  そこで、私たちが提案した事業名は、ずばり、「インバウンド復活を見据えた観光産業の課題解決支援事業」です。
 
 コロナ禍が明ければ必ずインバウンド(訪日外国人旅行)は戻ってきます。そうすれば、再び全国の観光地は外国人客の争奪戦となり、何も手を打たなければ、コロナ前と同じように一部の地域のみオーバーツーリズム状態で、他の地域は相変わらず閑散となることは目に見えていました。
 
 このことを少しでも回避するためには、まだ外国人客が訪れていない地域の観光素材の発掘と、その情報収集が必要と考えました。 
 
 今回の支援事業を活用し、私たちの協議会のメンバーでディスカッションを重ねた結果、大分県内をより広域的に紹介する2種類の動画「おおいたの小さな旅」(A small trip in Oita)を制作することにしたのです。

『おおいたの小さな旅』動画タイトル

 その2種類の動画とは以下の通りです。
 
(1)  複数の観光施設間を周遊するモデルコースおよびアクセスできるルートを検証してビデオ撮影し、多言語で案内する。
 
(2)  別府駅や由布院駅等知名度の高い主要交通拠点から観光施設までアクセスできるルートを検証してビデオ撮影し、多言語で案内する。
 
 今回は、(1)の複数の観光施設間を周遊するモデルコースの動画についてご紹介します。

複数の観光施設間を周遊するモデルコース

 複数の観光施設間を周遊するモデルコースは、大分県内の7つのエリアを日本語・英語・中国語(簡体字)・韓国語の言語ごとに制作しましたので、全部で7本×4言語=28本の動画となりました。

 大分県で人気の観光地である別府湯布院はもちろんですが、その他のまだまだ知られざる県内の観光地を、交通アクセスも含めて外国人の方にも出来るだけわかりやすく紹介することに留意したのです。

 そのため、対象となる観光施設を含め、現地の交通事情に最も詳しいと思われる人たちを当協議会の会員さんの中から選出し、制作する側も会員さんの中から動画撮影を専門とする方たちへ協力依頼をしました。

 また、広いエリアに点在する複数の施設を既存の交通機関で結んだモデルコースとして紹介していますが、この交通機関もデマンドバスシェアサイクルなど、日本人でも地元の人しか知らないようなレアな情報をあえてピックアップしています。
 
 「二次交通・三次交通が不足している」といわれる地方の観光地も、実はよくよく調べてみると、その地域特有の交通手段が存在していることがわかります。

 この、「存在はしているものの知られていない」ということが、地方の観光客誘致において最も優先的に解決すべき課題だと思うのです。

大分県 奥日田 津江・大山 モデルコース

 「複数の観光施設間を周遊するモデルコース」は、大分県内の7つのエリアごとに制作しましたが、その中のひとつ「奥日田 津江・大山 モデルコース」の動画についてご紹介します。

 このエリアである日田市(ひたし)は、大分県の北西部に位置する市です。

 古くから江戸幕府の直轄地「天領」の一つとして栄え、その歴史と文化を色濃く感じられる観光名所が数多く点在しています。

 その代表的な観光地が「豆田町」という街並みで、江戸時代から残る商家や白壁の土蔵が大切に保存され、国土交通省の「美しいまちなみ大賞」も受賞している人気の観光スポットです。

 しかしながら、広い日田市内には、この他にも鯛生金山(たいおきんざん)という歴史的産業遺産や、フォレストアドベンチャーなどの体験型観光スポット・グルメなどが数多く点在しています。
 
 これまで、これらの観光スポットを巡るにはマイカーは必須と思われ、その他のアクセス方法があまり知られていないことはインバウンド集客において大きな課題でした。

 なぜなら、いまや外国人旅行者の大半を占めるFIT(海外個人旅行)の多くは公共交通機関を利用して移動しているからです。

 また、ひとつひとつの観光スポットを単独でPRするよりも、「点と点を線で結ぶ」ようにモデルコースを作り、広域的にPRをする方がより地域の魅力度もアップするはずです。

 そこで、今回は、この日田市の中でも特に奥日田と呼ばれる山間部の津江地区大山地区の見どころとなる複数の観光施設を独自のアクセス方法で結ぶ動画を制作したのです。

 それでは、この動画の見どころと特徴を5つのポイントでご紹介します。

①日田市はそもそもどこにあるのか?(位置関係)

 観光地を紹介するときに、日本人であれば概ね地理的な知識があるので詳しい説明を省略しがちですが、対象が全世界となるとそうはいきません。

 先ずオープニングは、世界地図からの日本→九州→大分県へとフォーカスします。
 
 実は、「九州」そのものも、外国人からすると日本のどこにあるのかわからない場合があるからです。

世界地図からの大分県


大分県の中の日田市 津江・大山エリア

 更に、紹介する観光スポットの画面の左側には必ず近隣のエリアとの位置関係の地図を表示します。
 
 外国人旅行者の行動範囲は私たちの常識を超えています。
 
 彼らは限られた滞在日数の中で、より多くの観光地を巡りたいと考えるため、候補地となるエリアが1日で観光を完結出来るか否かは大きな関心事といえます。
 
 そのため、この位置関係を明確にすることで、それらの判断が可能となるからです。

フォレストアドベンチャー(地図)
フォレストアドベンチャー(体験)

 こちらの「フォレストアドベンチャー・奥日田」は、日田市南部の緑豊かな山間部にあります。

 通常、ここまでのアクセスはマイカーを前提としていますが、実は既存の交通機関を上手に利用すればマイカー以外でも訪れることが可能なのです。

 そこで、ご紹介するのが「デマンドバス」です。

日田市営バス(デマンドバス)

 日田駅前からは路線バスの日田バスで約1時間、松原停留所というところで下車します。

 次に、写真の日田市営のデマンドバスに乗り換えるのです。

 デマンドバスとは、通常のバスや電車などのようにあらかじめ決まった時間帯に決まった停留所を回るのではなく、予約を入れて指定された時間に指定された場所へ送迎する交通サービスのことです。

 予約の必要はありますが、あらかじめ行く先が決まっている場合は、乗り手側の時間に合わせてくれますので非常に便利です。

 このような交通機関を出来るだけ広くご紹介することが重要と思われます。

②隣接する観光スポットとセットでPRする

 次に、フォレストアドベンチャーに隣接する「鯛生金山(たいおきんざん)地底博物館」をご紹介しています。

 鯛生金山は、1972年に閉山した金山の坑道を利用して作られた体験型博物館で日本近代化産業遺産にも認定されています。

鯛生金山地底博物館
砂金採り体験

 こちらの施設は、入口から800mほどの坑道を歩いて見学できるだけでなく、実際に砂金採りの体験コーナーもあり、専用のホルダーに入れて持ち帰りも可能となっています。

 この動画では、フォレストアドベンチャーと鯛生金山という、異なる2つのタイプの体験型観光施設を同時にご紹介することで、双方の魅力をより増幅する効果が得られることを狙っています。

③より多彩なアクティビティを紹介

 デマンドバスを使えば、更に広域的な観光スポットを巡ることが可能です。

 こちらは、九州唯一の国際公認サーキットの「オートポリス」です。

オートポリスサーキット場

 ここでは、通常のレース観戦の他に、ご自分の車でサーキットの体験走行も可能となっています。

 また、写真のようなオフロードでのバギー乗車体験も楽しむことが出来ます。

バギー乗車体験

④もちろんグルメも紹介

 歴史・文化とアクティビティと来れば、次は当然グルメのご紹介です。
 
 モデルコースでは、このあと最初に下車した松原停留所まで戻り、再び路線バスの日田バスに乗り換えます。そして、次に下車する場所は「水辺の郷 おおやま停留所」です。ここでは、地元野菜やフルーツのほか、全国コンクールで最高評価の梅酒・梅干し等を取り揃える直売所があります。
 
 また、イタリア人シェフ、サルバトーレクオモ氏がプロデュースしたジェラート店「GELATERIA LAB3680 OKUHITA」で、果物の含有率50%以上の体に優しいジェラートを楽しむことが出来ます。

「GELATERIA LAB3680 OKUHITA」のジェラート

⑤詳しいことはQRコードでリンクする

 この他にも、この日田市出身の漫画家「諌山 創」先生の人気漫画『進撃の巨人』のAR体験スポットなど多くの情報が紹介されている動画ですが、出来るだけ短くまとめたために全体で7分50秒の長さとなっています。

 当然、伝えきれない情報もあり、より詳しい情報提供が必要と思われますが、その提供方法の工夫として画面上にQRコードを表示しています。

詳しい情報へリンクするQRコード

 情報は常に進化していますので、常に最新の情報を伝えるためには各公式サイトへのリンクを貼ることが最も有効であると考えます。

「交通検証に特化した動画」も必要

 「複数の観光施設間を周遊するモデルコース」の動画は、当協議会がかねてより掲げてきた「地域資源の活用」「地域連携の問題」「インフラの問題」という3つの課題を少しでも解決するために取り組んだものです。

 また、市場を世界として見据え、字幕や一部音声も4言語(日本語・英語・中国語・韓国語)で制作しました。

 しかしながら、実際に訪れてみると、バスや列車の乗り方など、より詳しい利用方法や、そもそも大分県までのアクセス方法(特に九州の玄関口である福岡県から)などについての動画も必要であると考えました。

 次回は、そのために制作した「交通検証に特化した動画」のご紹介をします。

(今回の動画)
YouTube おおいたの小さな旅 「大分県 奥日田 津江・大山 モデルコース」

マガジン(これまでのまとめ)



 



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