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慌ただしかったけど、会って話すことに溢れてた2024年。

2024年もあと少しになりました。いまだに終わらない原稿執筆に終われているやまがたです。年内に仕上げたかったんやけど、無理そう。せめて、松の内には。

今年、ほんとに慌ただしかったです。何が慌ただしかったのか、よくわからないくらいに。昨年秋にコース主任ってのに任じられたけど、それだからってことではたぶんないです。そりゃ会議は増えたけど。

そのあたりも含めて、簡単に振り返ってみようと思います。


1|ゼミのこと。

1-1|post-COVID19な感じになってきたゼミのプロジェクト。16th。

いや、じっさいのところCOVID-19も消滅したわけではないですし、インフルエンザも流行ってますし、マイコプラズマ肺炎も流行ってたりで、感染症が鎮まったわけではないです。が、ゼミのプロジェクト=価値創造デザインプロジェクトは、2023年あたりからようやく“コロナ禍”状態を脱して、いよいよ2024年度は通常運転といってもいい状態になったかなと感じます。もちろん、miroやzoomなどオンラインの活用は当然のようにやっているので、そのあたりはpre-COVID19とは異なります。とはいえ、それぞれのプロジェクトでいろんな活動を展開できるようになったのは、ありがたいことです。

今期のプロジェクト、もちろんいつもどおりに試行錯誤の連続ではあったわけですが、それぞれにしっかりと活動はできていたように、側で見ていて感じます。もちろん、まだ成果報告会が残ってるので、何も終わってないのですが、そしてそこにこそ課題が残ってるのですが、ともあれメンバーたちはいろいろ悩みつつも、どうやったら展開していけるかを考えて、進めてくれていたように思います。

16thを見ていて、というか、うちのゼミにおいて受け継がれてきている側面と言ってもいいと思うのですが、誰にどのような価値を感じてもらいたいのか、そのために何をどう進めていく必要があるのか、ということは考えていてくれたかなと。もちろん、それは最初からできていたわけではなく、やっていくなかで気づくようになった、というのが実際だと思います。それでいいのです。

プロジェクトというのは、ゼミメンバーだけで好き勝手に進めていけるものではありません。ご一緒くださる企業さんや地域の方々、さらに関わってくださるみなさん、さらにはイベントなどにきてくださる方々、見えないところでお力添えくださっている方々などなど、いろんな方が「このメンバーたちやったら、一緒にやったろう」って思ってくださって初めて、プロジェクトは動き出すのです。そのことを、ぜひ次の代=17thも念頭に置いておいてほしいなと願います。

1-2|15thの卒論。

ただいま、閲読&添削中です(笑)
毎年、前期2回、後期2回の報告を求めてるのと、後期になると「俺、スライドじゃなくて、本文でコメントするから」って伝えているので、ちゃんと進めることができてるメンバーは、それなりに何とかなってます。いい出来のものもあります。

ただ、やっぱりそうなってないメンバーも何人かはいます。その場合は、提出された本文もなかなか厳しい。

それ以上に、大学でアカデミック・ライティングのトレーニングをやっていないってのは、やっぱりまずいと思うんですよね。それなしにいきなり卒論書けってのは。そりゃ、高校までで身につけておいてってことなのかもしれませんが、大学受験のしくみとかを考えたら、そうはならないのは明白で。ってなると、どこで身につけるのか。やっぱり、大学に入ってすぐってことになるのかな。

論文を書くというのは、たしかにしんどいです。ましてや、研究者になるわけではない学生にとって、その意義って伝わりにくいはずです。けれども、論文を執筆するという一連の行為は、論理的に考える、criticalに考える、さまざまな文献や情報にあたる、データを集め、分析する、そこから考察するなど、社会で実践していく際にも基礎になる学びが織り込まれています。その点で、卒業研究&論文執筆というのは、重要な意義を持っていると、私は考えてます。

そのあたりが、ゼミのメンバーに伝わってくれるといいなあと思います。

1-3|意味のイノベーションPJ(近畿大学アカデミックシアターACTプロジェクト)としての活動。

2024年度、ゼミとは別に意味のイノベーションPJとしての活動も、けっこうありました。

ここ数年の恒例になってきた、ReDesigner for Student/Goodpatchの田口和磨さんにお願いしている「サービスデザイン実践短期ゼミナール」(前期と後期それぞれ)に加えて、2024年度前半には私が担当するかたちで「サービスデザイン超入門」という3回セットのワークショップをやりました。ここでは、構想してストーリーを組み立てるというところに焦点を当てています。というのも、このトレーニングって、日ごろから「こんなんあったらいいな」って妄想して、ストーリーを想い描ける人なら、特に必要ありません。ところが、そうではない人にとっては、意外と難しいってのも、ここ最近になって肌感覚でわかってきました。そのトレーニングの場として設けてみました。

ここに参加してくれたメンバーの何人かが、後述する価値創造探究プロジェクトにも参加してくれてて、その点でもやった意味はあったかなって感じてます。

そして、後期には今触れた「価値創造探究プロジェクト」。The GARAGEの会員企業さんに参加を募って、自社の資源をあらためて掘り起こしながら、どういう事業の可能性があるのかを考えてみるというものです。これは、昨年度に山本光学さんと実施したものがベースになっています。

参加してくれているのは4名ですが、かなり積極的に取り組んでくれてて、ひじょうに嬉しいなって思ってます。

このあたり、自分で自分の時間を割いてる感もないではないですが、それでも意欲的に参加してくれる学生がいるので、それで救われているところもあります。

2025年度、どういうことをやっていくかはまだ決めてませんが、続けていきたいなと思っています。

2|講義のこと。

振り返ってみると、意外と講義準備に時間を食ってしまった2024年でした。昨年度の後期から急遽ひさしぶりに担当することになった1年生向けの経営学(経営学A/B)、もちろん以前の講義ノートなどがないわけではなかったのですが、穴埋めノートも含めて新たに作り直しました。内容的な改訂は若干程度ではありますが、それでもほぼ毎回の穴埋めノートを用意するのは、それなりに時間を要しました。

大学生にもなって穴埋めノートかって思われるかもですが、穴埋め箇所だけを説明するわけではありませんし、文章で書いてもらうところもあります。それに、空欄にけっこう書き足すので、自分でノートをつくっていってもらう感じです。

こちらは、2025年度は基本的にそのまま流用する予定なので、少し準備の手間は減るかな。

3|研究のこと。

3-1|今年は(も?)書けなかった。1本だけだった。

言い訳でしかないですが、今年は思った以上に時間がなくて書けませんでした。唯一、活字化できたのは、榊原研互先生(慶應義塾大学商学部教授/現在は名誉教授)の慶應義塾大学を定年でご退職される記念号に寄稿させてもらったものだけでした。こちら、まだリポジトリなどにはアップされていませんが、いずれは出るものと思います。

山縣正幸(2024)「経営学における一つの認識視座としての価値創造:21世紀のドイツ語圏における経営経済学の研究展開から」『三田商学研究』第67巻第3号, 351-377頁。

ここ最近、依頼されて書くことが多かったので、もともとの自分の関心だけで書く機会がありませんでした。いや、書けばいいだけの話だったんですが、どうしても後回しになってしまって。

榊原先生は、小島三郎先生の科目を継承されたドイツ経営学史の研究者であられます。なので、この機会に書かないままに放置してしまっていたテーマで書かせてもらった次第です。

内容的には“デッサン”の域を越えませんが、ひとまず概観しておきたい諸学説を整理するという作業はできたかな、とは思ってます。ドイツ語圏でのWertschöpfungという概念が成果指標と、成果の生成過程という二側面を持っているがゆえに、企業をめぐる「価値創造」という事象をうまく捉えることができるという点を示したつもりです。ここは、私自身の経営という現象を捉える際の基盤になってます。それを学史的に跡づけるという仕事は、ずっと前からやってるんですが、いまだに単著にまとめることができてません。ただ、今回のこの論文でだいたいのピースは揃ったようにも思います。

今日び、ドイツ経営学史の本を出させてくださる出版社さんがあるかどうかわかりませんが、来年と再来年くらいで出せたらなぁとも。

3-2|早く脱稿しないと…。

もう企画が立ち上がって丸二年になろうかというのに、私の懈怠でまだできあがっていない師匠との共著企画。こちら、ドイツ経営学の入門的な本になる予定です。実質的に、学史ですが。上で書いたドイツ経営学史の本というのは、私の関心にもとづいて整理するやつなので、採りあげる学説は限定的になりますが、こちらはもう少し満遍なく。だからバランスが難しいというのは、あります。

あと、書き方もいろいろ考えてしまって。

そもそも、ドイツ経営学って何やねんって問いも、当然に浮かんできます。少なくとも「ドイツでの企業経営」の学ではないです。ドイツ語圏でさまざまに打ち出されてきた経営学における問題意識の展開をたどりつつ、現代的に活かしうる点を見いだしていくというのが、ここでのドイツ経営学って領域です。

私自身は、ドイツが好きでドイツ経営学史の研究を始めた、というわけではありません。むしろ、独特の概念体系や視座などに興味を持ったというのがほんとうのところです。だから、ドイツ語圏の経営学研究者がドイツ語で本や論文を執筆するかどうかというより、根底にある考え方を活かしたいというのが、私の基本姿勢です。

どこまでいけるかわかりませんが、そのあたりを少しでも提唱できる本に仕上げられればと思います。松の内には、何とか。

3-3|アントレプレナーシップの美学的アプローチの研究。

こちらは、2024年にあまり進めることができませんでした。文献はたくさん揃えることができましたが(笑)

ただ、いつもの文化の読書会でホイジンガの著作を読んだりしながら、またサービスデザインとのかかわりなどで関心を持ちはじめた文化人類学などのアプローチや生活史と呼ばれる社会学のアプローチなどに触れるなかで、どういうアプローチが可能なのかというあたりは、少しずつイメージができつつあります。

また、昨年に出た谷川嘉浩先生の『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(ちくまプリマ―新書)と、青田麻未先生の『「ふつうの暮らし」を美学する』(光文社新書)は、この研究にとってもひじょうにありがたく、また重要な新書でした。

いずれもデューイを通じてつながっていて、昨年度はあまりじっくり本を読む時間を取れなかったのですが、このあたり文献収集はそれなりにできたので、2025年には何らかのかたちで文字化していきたいと思っています。

さらに、幸い今年、木村石鹸さんの百年祭をはじめとして、いつもの年よりも接点を多くいただいたなかで、そこにアプローチしていくための手がかりは見えてきた気もしています。

それと、9月にはDe-Siloさんからお声がけをいただいて、以下のようなオンラインイベントにも登壇させてもらいました。

こういうかたちで「引っ張り出し」てくださる方がいらっしゃると、否が応でも研究は進みます(笑)まだ生煮えなのに、このテーマでお声がけくださり、ほんとに嬉しかったです。と同時に、もっと研究進めないとなって、自分を戒める機会にもなりました。

2025年はこの研究もちゃんと進めていきたいです。

3-4|書きたい、そろそろ書きたい。

今年は、ほんとに研究という面では表立っての進捗がひじょうに乏しい一年になってしまいました。自分自身に苛立ってるのもたしかです。ただ、苛立ったところで何にもならないので、2025年はちょっと構想を練り直して、着実に進めていきたいと思います。

学会報告もできるようにしていかないと。

4|会って話す機会が、めっちゃあった2024年。

今年は、いろんな人に会って、話ができた一年でもありました。これは、ひじょうにありがたいことで、大きな収穫でもありました。

2月にはMIMIGURIの安斎勇樹さんとオンラインでお話ができ、そこから3月にはMIMIGURIでの動画収録という機会も(4月公開)。

サービスデザインやデザイン経営という文脈でお声がけをいただくことは、今までも何度かありましたが、経営学史で話をさせてもらったのは、もしかしたら初めてかもしれません。その意味でも、ひじょうにありがたい機会でした。

それから、5月には狂言方和泉流の石田淡朗さん主催のワークショップに参加することができました。能楽にはかかわらせてもらってますが、舞台に立つということはしたことがありませんでした(あえて距離を置いてたってのもないわけではないです)。その意味でも、ひじょうにありがたかったです。その折に、クラシコムの青木耕平さんやITジャーナリストの尾原和啓さんはじめ、お名前は伺っていた方々と時間と空間をご一緒できたのも、これまたひじょうに嬉しいことでした。

そのほかにも、8月に渡邉康太郎さん、近内悠太さん、堀江麗さんとお話しする機会をいただいて、ひじょうに楽しかったです。そして、そこからみなさんに11月15日の大槻文藏『実方』/野村萬『箕被』においでを願えたのも、今年の大きな思い出の一つです。

まだあります。金春流能楽師の中村昌弘さんがやってらっしゃる狛江市のコミュニティFMコマラジの「日本の文化のそのあした」に出演させてもらったり、これは『能楽タイムズ』2025年2月号に掲載予定とのことですが、観世流能楽師の谷本健吾さん、坂口貴信さん、川口晃平さんがやってらっしゃる三人の会のお三方と対談させていただく機会をいただいたり。

そして、2024年でもっとも大きかったのは、やはり木村石鹸さんの百年祭とそれに関連する諸イベントでした。4月の社内向けイベントにもお声がけくださり、さらに9月の百年祭にも伺わせてもらいました。

木村祥一郎さんとは、8月に近畿大学のThe GARAGEで対談したあと、11月には青山ブックセンターで対談するというありがたい機会も頂戴しました。このあたり、いろんな発見もあったので、いずれ文字化したいと思っています。

さらに、錦城護謨の太田泰造さんが主催してくださる「マンジェの会」でご一緒させてもらったリングスターの唐金祐太さん、木村石鹸百年祭で初めて直にお目にかかった「もちはだ」の鷲尾岳さんはじめ、ご縁が拡がったのも2024年の大きな出来事でした。唐金さんには、生駒のチロル堂の会にお誘いをいただいたり、鷲尾さんとは暮れにお話をさせてもらう機会をもらったりと、ここから2025年に拡がっていきそうな感じがしています。

ここに書いていないconversationもたくさん。今年はほんとに多くの方と会ってお話をする機会をいただきました。あらためて、心から感謝申し上げます<(_ _)>

会話そのものが、何か論文に直結するのかといわれると、あまりそうではないです。けれども、そこで得られるいろんな示唆は、何かを考えるときにすごく重要な手がかりとなっているのは間違いありません。これは、企業実践に携わっておられる方のみならず、能楽師/能役者さんとの会話の場合でも同じだったりします。もちろん、何でもかんでも経営の話に結びつけるつもりはありません。

そもそも、何か自分の専門領域の“境界”みたいなのが変容しつつあるような感じもしていたりします。これは、経営学をやめるという話ではありません。むしろ、私のなかでの経営という概念の捉え直しなのかもしれません。あまり雑学のようになってしまうのは本意ではないので、そこはちゃんと整理をしながら考えていきたいと思います。

ちょっと話がそれましたが、会話/対話的に思索を深めていくというのは、もしかすると文化の読書会の影響があるのかもしれません。ということで、次に文化の読書会について書いておきます。

5|2024年の文化の読書会。

このnoteで私が投稿している大半は、安西洋之さん、澤谷由里子先生、北林功さんと続けている文化の読書会についての読書記録になってます。もう少しほかの投稿もできたらいいんですが、とりあえず投稿を続けることができてるという点でも、ひじょうに大事な読書会です。

2024年の3月あたりまでは、アリストテレス『ニコマコス倫理学』とソフィストに関する納富信留先生の本を読んでました。ここらへんも論文に直接使うということはほぼないですが、やはり血肉にはなっています。ことに、ニコマコス倫理学が「しつこく」追究する〈中庸〉というのは、それが単なる〈中間〉ではないということ、そしてある種の極限状態を想定しつつ、そのなかで文脈を考慮しつつ、あるべき位置づけを見いだしていくという思索プロセスであるということが感じ取れたのは、大きな収穫でした。そして、ソフィストという存在をみていくことで、思考をどう外化していくのかということについても、あらためて考えることができたように思います。

5月以降、現在に至るまでホイジンガの著作を読み続けています。これまた以前に読んだブローデルをも想起させるところがあって、読みながら見えてきたことではありますが、この読書会に適った選択だったなと感じてます。

ブローデルなどを読んだおかげで、私自身のものの見方はけっこう変化した気がしていますが、ホイジンガを読むことで、そのあたりがより強化されている実感があります。

同時に、これは間違いなく、アントレプレナーシップの美学的/詩学的アプローチの研究にとって有益ってのも確信しています。いいかげんに、このあたりは2025年に文字化していきます。

この文化の読書会は、私にとって大きな思索の淵源になってます。これからも慌てずに長く続けていければと思ってます。

6|別の仕事たち。

6-1|3期目の八尾市産業振興会議。

こちらも、3期目になりました。今回は「万博後の八尾市」というのがテーマ。7月に始まって、実質半年。議論&実践するテーマはだいたい見えてきた感じがします。今のところ、「いきいきとした地域を生み出していくうえで、企業/事業者はどんな貢献が可能か」というあたりに収斂しつつあります。もちろん、そこから拡がる可能性はいろいろとあります。

いつものことながら、委員のみなさんや八尾市のみなさんが、すごく乗ってきてくださるので、議論も進みます。2025年は提言書をまとめていく段階に入りますが、その前にいろいろと試行的な企てができるといいなぁと思ってます。

そういえば、2024年にはアリオ八尾にOPEN FACTORY CITY YAO「コ・クリエーションスペースぬか床」ができました。

近鉄八尾駅から近いので、八尾の事業者のみなさんにどんどん活用いただければと願ってます。

6-2|池田泉州銀行さん×CEMENT PRODUCE DESIGNさんとの新事業開発ゼミ“CHANGE”。

こちらは、池田泉州銀行さんからお声がけをいただいて、CEMENT PRODUCE DESIGNさんが主となって運営しておられる新事業開発ゼミです。私も、近畿経済産業局さんのデザイン経営の研究会で座長をやらせてもらったりしてる関係で、参加することになりました。

ゼミの15thの根本裕成も一緒に参加させてもらって、参加企業さんが展開するとしたらどんな新事業がありうるかを、サービスデザインの考え方をベースに報告させてもらったりしました。

この新事業開発ゼミ、参加しておられる企業さんも大変だと思います。それは、横で企業さんのプレゼンテーションを伺いながら、また共有いただいた資料などを拝見しながら、ものすごく感じます。だからこそ、どう考えていけばいいのかということも、同時に深く考えさせられます。

その意味で、私自身も勉強になっています。

7|能のこと。付・バレエのことも。

2024年、じつは能の舞台をそれほどたくさん観ることができたわけではありません。むしろ、何やかんやと忙しくなって、観れなかった舞台もけっこうあります。

1月3日 大槻能楽堂新春公演
■『翁』観世三郎太/茂山千五郎/観世淳夫/茂山竜正
■『末広かり』茂山逸平
■『高砂 八段之舞 流ㇱ八頭 太極之伝 礼脇』観世清和/福王和幸

1月4日 大槻能楽堂新春公演
■『翁 弓矢立合』観世清和/観世銕之丞/大槻文藏/野村万作/野村萬斎/野村裕基/大槻裕一
■『三本柱』野村萬斎
■『望月 古式』観世銕之丞/観世淳夫/福王知登

1月20日 若手能(大阪)
■『忠度』高林昌司
■『栗燒』小西玲央
■『葵上』上野雄介

2月2日 王祇祭黒川能
■演目割愛

2月12日 大槻能楽堂自主公演
■『景清』梅若猶義
■『二人袴』善竹隆平/善竹隆司
■『木曽 願書』斎藤信隆

3月9日 三人の会
■『野宮』谷本健吾★
■『苞山伏』野村太一郎
■『邯鄲』川口晃平

5月8日 国立能楽堂定例公演
■『隠笠』山本則孝
■『夕顔 山ノ端之伝』岡 久広★

6月15日 大槻能楽堂自主公演
■『古演出による自然居士』大槻裕一

7月7日 轍の会
■『清経 恋之音取』本田芳樹/鬼頭尚久
■『清水』山本則秀
■『伯母捨 古式』櫻間金記★

7月13日 大槻能楽堂自主公演
■『谷行』梅若紀彰/梅若猶義/福王登一郎/福王知登/福王和幸ほか

8月17日 大槻能楽堂自主公演
■『蝸牛』善竹彌五郎
■『恋重荷』赤松禎友/大槻裕一

9月7日 喜多流青年能
■『三輪』狩野祐一★
■『清水』飯田 豪
■『熊坂』谷 友矩★

9月22日 香川靖嗣の会
■『止動方角』野村万蔵
■『卒都婆小町』香川靖嗣★

9月23日 塩津能の会
■『自然居士』塩津圭介/塩津希介
■『饅頭』山本東次郎
■『山姥』塩津哲生/佐々木多門★

11月3日 友枝会
■『隅田川』友枝昭世
■『文荷』野村 萬
■『殺生石 女体』友枝雄人

11月8日 銕仙会
■『巻絹 出端之伝』大槻文藏/大槻裕一★

11月13日 近藤乾之助を語る会(映像)
◆『安宅 延年之舞』近藤乾之助☆

11月15日 国立能楽堂企画公演
■『箕被』野村 萬★
■『実方』大槻文藏★

11月27日 能登半島復興支援大槻文藏チャリティ能/石川県立音楽堂
■『杜若 素囃子』大槻文藏★

12月21日 大槻能楽堂自主公演
■『朝長』浦田保親★

12月27日 大阪能楽養成会研究発表会
■『田村』金春嘉織
■『鍾馗』稲本幹汰

漏れ落ちがなければ、以上です。★をつけたのは、特に印象的だった舞台。12月27日の大阪能楽養成会の2番もつけたいところですが。

このなかでも、やっぱり文藏さんの舞台はすごかったです。とりわけ11月に観た3番はどれもすばらしい成果で、驚嘆しました。仕事があって行けませんでしたが、12月18日に開催された明星大学能楽鑑賞会(明星大学人文学部の村上湛/田村良平先生の講義を受講されている学生さん向け)での『景清』もやはりすばらしい舞台だったとか。

『能楽タイムズ』2025年1月号に書かせてもらいましたが、11月15日の『実方』もこの曲の描こうとするところを十二分に現し出した舞台でしたし、11月27日に石川県立音楽堂で舞った『杜若 素囃子』も、濃密すぎるくらいの60分で圧倒されました。

そして、9月。22日、23日と連日で観た香川靖嗣さんと塩津哲生さんの舞台も、ひじょうに充実していました。

香川さんの『卒都婆小町』は初演の折にも観て、ある種の鋭い美が現れた印象的な舞台(これ以来、香川さんの舞台はできるだけ観たいと思うようになりました)でしたが、今回は枯れに枯れた百歳の老婆でした。しかも、それは香川さんが年齢を重ねたというだけではなく、あくまでも老女の表現でした。この小野小町は、見た目としては汚いはずなのです。しかし、そこに美が滲み出るというのがおもしろいところだと思うのです。それが、香川さんが根底にもっている勁さによって立ち現れたというのが、ひじょうに魅力的でした。

翌日の塩津さんの『山姥』。足の不調はありますが、それがまったく気にならない圧倒的な舞台。前場での優しくやわらかで、穏やかさが滲み出ているのに、なぜか「尻の穴が竦むような」(←その日の私の控え)凄みがありました。後場での身体扱いも素晴らしく、「あら物凄の深谷やな」と山を遠望する姿やそれを謡と詞で表現してしまうところの空間現出が鮮烈。優しくも恐ろしい、まさに“崇高”が具現化されていました。「柳は緑、花は紅」と舞台をハコブ姿に、さながら柳や桜の下を歩いているかのような状態が見えたのには、深い感銘を覚えました。

9月上旬に観た喜多流の若手二人(狩野祐一さん、谷友矩さん)の舞台も、それぞれに魅力あるもので、狩野祐一の立居や動く姿の美しさ、谷友矩の視線と身体がきっかりと割り付けられた先にある曲趣の現出は、ひじょうに清々しく、これからを期待させてくれるものでした。★は付けていませんが、高林昌司さんも含めて、2025年もできるだけ観たいなと願っています。

若手という点では、年末に観た2番も印象的でした。なかでも、2025年早々に千歳を披く稲本幹汰さんの『鍾馗』も、出の姿や下ニ居ル姿がしっかりしていて、素直な風体が好もしいです。もちろん、これからこれからの人だと思うので、いくつも越えないといけない山があるでしょうけれども、がんばってほしいです。

他にも、囃子方を含めて、若手で注目したい人が出てきているのは嬉しいことです。

そして、中堅。今年の3月の谷本健吾さんの『野宮』は、昨年の『道成寺』と併せて、内側からの力のような面が出てきて、これからさらに期待したいところです。今年はシテとしての舞台を観れなかった喜多流の佐々木多門さんはじめ、1970年代生まれの能役者も、いよいよこれから。こちらも楽しみです。

能ではないですが、今年になってバレエの舞台を観ることが増えました。基本的に東京ばかりなので、そう簡単にたくさんは観れませんが、2025年もぼちぼち観に行ければと願ってます。

8|2025年に向けて。

もう48歳になってしまいました。なのに、単著1冊のままというのは、さすがに怠慢だなとも思っています。

なので、2025年は「書く」ことを大事にしたいと思っています。この歳になると、抱負とかいうのも何か大仰やなと感じてしまったりもしてます(笑)とはいえ、ちょっとここ最近は“研究者”というより“勉強家”になってしまっているきらいがあるので(勉強することが悪いのではありません、念のため)、書くことにシフトしないとなと思っています。

ということで、2024年もほんとうにお世話になりました。
2025年も、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!


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