【備忘】山縣ゼミ/価値創造デザインプロジェクトでの成果報告会のための論文化:ゼミメンバー向けのSlackより
写真は、昨年度の価値創造デザインプロジェクトの成果報告会の様子です。
価値創造デザインプロジェクトの成果報告会を開催します!
今年度も価値創造デザインプロジェクト成果報告会を開催いたします!昨年に引き続き、LINEヤフー 大阪オフィスの中川さんはじめ皆さまのお力添えで、グランフロント大阪にあるLINEヤフー大阪オフィスで開催させていただく運びとなりました。ほんとにありがとうございます!
対面参加(20名;PJ先のみなさまは別枠です)と、3回生の価値創造デザインプロジェクトの成果報告限定ですがYouTube LIVEでの配信もございます。よろしければ、ぜひご覧くださいませ<(_ _)>
さて。
数年前までは、合同ゼミに参加させてもらってたので、必然的にプロジェクトをベースにして論文としての構成を考えないといけなかったんですが、昨年度から合同ゼミがいったんお休みになったこともあって、公表はしてませんが論文化してもらうことにしてます。
昨年度は、まだ合同ゼミの可能性が残っていたのですが、2023年度は最初から予定に入っていなかったため、ちょっとこの論文化でどのチームも苦戦してるみたいです。なので、Slackを使って、以下のような枠組を提示しました。
PJ実践を論文化する
【プロジェクトベースからの研究報告】
以下の研究報告のスタイルしかないというわけではないです。ただ、一つの構成のしかたとして参考にしてもらえれば。
(0)はじめに
(1)プロジェクトについて
(2)プロジェクトをやって浮かび上がってきたこと:経験的発見と理論的問い
(3)理論/概念枠組
(4)プロジェクトで得られたデータ(1)を(3)にもとづいて分析する
(5)分析した結果から、わかること=知見を導き出す
(6)おわりに
ただ、これでもまだぴんと来てないみたいなので、さらにさっきこんな追記を。
【PJ論文を書くにあたって】
今さらなのですが、けっこう↓で動けなくなっているチームが多そうなので、手がかりを。
(3)理論/概念枠組
採り上げる(=プロジェクトで見えてきたことを分析するための)概念の説明
その概念を使って、どういうことが説明できるのか
その概念や領域の教科書や先行研究(本、論文など)をもとに、考える枠組を提示する
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(1)PJ実践から浮かび上がるキーワードを見出す
(2)そのキーワードにかかわる専門書や論文を読む
(2)補足:文献の読み方
- いきなり一言一句精確に読もうとしない。かえって、わけわからなくなることがある。
- まずは目次を読む。全体の流れを押さえる。
- 本の場合は、まえがきやあとがきを読んで、何が書かれているのかをざっくり押さえる。
- 翻訳の場合で、訳者解説みたいなのがある場合は、それも読んでおくとわかりやすい。
- ここまでで文献の構造/構成を捉えておく。
- そのうえで、本文を読んでいく。ただし、その場合も、何度も読み重ねるように。
- その本を引用・参照しようとする場合、部分だけを切り取るのではなく、あくまでもその文献の著者の論旨に即して理解したうえで引用・参照する:ここ卒論のときには、めっちゃ大事。
- ただし、完璧に理解できるなんてこともないから、ひとまず↑を外さないようにだけ意識する。
- 本を読むときは、できるだけ自分で買って、線を引いたりしながら読むことを奨めます。線を引くのが嫌なら、メモを取ったりする。
(3)キーワードたちがどうつながるか=概念枠組を考える
(3)補足:概念枠組の組み立て方
- まずはベースになる概念=基礎概念を見定める
- その基礎概念の定義を先行研究にもとづいて確かめる:定義は論者によって異なることがある!
- 基礎概念から広がる概念を整理(リストアップ)する。
- それらの概念がそれぞれどういう意味で用いられているのか、何を説明するための概念なのかを押さえる。
- 基礎概念と関連する諸概念がどうつながっているのかを見定める。
- その概念枠組によって、何を、どういう視点から説明できるのか、まとめる。
ここまでできたら、事象を説明できるようになります。
この概念枠組にもとづいて、何をどう記述・測定するのかという段階が次にきます。
(4)概念枠組にもとづいて、事象を記述・測定する=質的/量的データを収集する
(5)「データ」を分析・解釈する:事象の因果関係などを明らかにする
(6)事象のメカニズムを踏まえて、自分たちの見解を提示する=考察
これは、卒論でも基本的に同じプロセスなので、今回もこのプロセスを踏まえてください。
これが絶対なわけではないですが、ひとまずここは踏まえておいてほしいなと山縣が考えているところです。もちろん、違うやり方もあるはずです。なので、あくまでも以上は山縣の備忘を兼ねたメモとして。
なぜ、PJ実践を論文形式でまとめてもらうのか。
最近、経営学に限られたことではありませんが、協同実践やProject-Based Learning(PBL; Problem-Basedの場合もあります)は盛んにおこなわれています。そのこと自体は、けっこうなことだと思う一方、ただ「やってみた」というだけではあまり意味がないとも思ってます。もちろん、実践経験を早いうちから、あるいは失敗できる環境においてやってみることができるというのは、有益でしょう。ただ、コルブの経験学習モデルくらいは意識しておきたいなとも思います。
私のもともとの研究スタイルは、抽象的概念化に主軸があります。ここばっかりやりすぎてきたというのもありますが(笑)
私が本格的にプロジェクト型を摂り入れようと思ったのは、このモデルに触れてからでした(←2016年ごろなので遅い)。
経営学って、他の学問領域に比べて、実験というのがやりづらいんですよね。もちろん、できることもあるんですが。ただ、プロジェクト先のご理解にも大きく依存するのですが、ここをわかってくださる企業さんや組織体さんだと、この経験学習モデルを軸にした経営系(うちのゼミは、サービスデザインを軸にしてます。その根底〈私限定ですが〉にはドイツ経営学的な価値の流れの現代版があります)のプロジェクトを展開できるかなと、2016年ごろに思うようになったのが、この価値創造デザインプロジェクトを始めるきっかけでした。
合同ゼミへの参加は、このプロジェクト以前からさせてもらってたので、むしろ、プロジェクト実践をどう「研究」として整えるかというのが課題として先にありました。そのことも、うちのゼミとしてはありがたいことでした。
その合同ゼミが一区切りとなって、どうしようかと思ったのが2022年度でした。この段階で、曲がりなりにもいったん論文としてまとめるという経験をしておいてもらったら、4回生での卒論の執筆にも有益かなと。
そんなわけで、グループでの論文執筆になりますが、しばらくは続けてみようかと思ってます。