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風邪かと思ったらマイコプラズマ肺炎で即入院になった話

私は普段、風邪をひいても乾いた咳しか出ない。

痰ができにくい体質なのか何なのかは知らないけれど、ちゃんと痰のからむ咳が出る人が子供の頃から羨ましかった。

痰のからんだ咳の音は仮病ではない証拠だ。
乾いた咳は元気な人でも出せるし、体調もそこまで悪くないと思われがちだ。どうして「本物の咳」が出ないんだろう、と子供ながらに悩んだものだ。


だから約2週間前、ふと咳をした時にのどがコロコロと音を立てた時、「あれ?」と思った。


熱もなければのども痛くはない。
風邪の症状はなかった。まぁ、よく分からないけどそういう日もあるのだろう、と自分を納得させることにした。


***


状況が変わったのは、それが3日続いた金曜のことだ。


夕方に悪寒がし始めて、仕事を早めに上がり少し横になった。こういう時は在宅勤務が本当にありがたい。


「風邪引いたかな?」
『旅行から帰ったばかりで疲れが出たのかもね』
「旅先で未知のウィルスもらったかな」


夫と話しながら、寝ていればすぐ治るだろうと思った。

この時の体温は37.3℃。
夜には38.5℃まで上がった。

この時もまだまだ楽観的だった。
ちょうど土日に入るから、風邪薬を飲んで安静にしていれば月曜からまた働けるだろう、と。


ところが土曜日も熱は上がり続け39℃を突破。
夜になる頃にはぴったり40℃を叩き出した。

湿った咳も徐々に強く、頻繁に出るようになる。
声は枯れ、うまく喋れない。


***



私は急に不安に襲われた。

新型コロナにかかった時ですら、最高は39.3℃だった。今、私の体内ではそれ以上の何かが起きているというのか。

実際、40℃は凄まじかった。
脳が指令を出しても体が動かない。薬を手にとっても体を操縦できず、飲めるまで数分ぼーっとしてしまう。

そして常に眠い。
眠いのか朦朧としているのか分からないが、「体を起こして水を飲もう」と考えても、眠すぎてまぶたが閉じる。その繰り返しだった。トイレに行こうと歩くとフラフラして、床が柔らかく感じる。

咳は本当に止まらず、ウトウトしてもすぐに起きてしまい夜は眠れない。少し動くと息が苦しく、浅い呼吸しかできない。



ただ、感覚として今回がコロナではないという確信はあった。のどの痛みはない。食欲はない。咳は痰がからみ、倦怠感が強い。コロナの時とは症状が真逆だったからだ。

どうしたらいいのか分からず、「発熱 40℃  救急車呼んでいいのか」と検索したりもした。でも、週末の夜間に病院へ行ったところで点滴をして帰らされるだけだろうと思った。

夫は懸命に看病してくれた。幸い風邪薬もよく効き、38℃前後まで下がるタイミングもあった。やはり自宅で寝ていようと判断した。

しかし日曜日も熱は39℃前後が続く。
もう1日だけ様子を見ようと、月曜は有休をとることにした。


***


月曜日も依然として熱は下がらない。

ここで私はようやく「絶対におかしい」と確信した。4日間も安静にしているのに、39℃超えの熱が下がらないことなど今まで一度もなかった。

何より咳に違和感があった。
痰がからむだけでなく、体の向きによっては気管から妙な音がする。紙パックのジュースをストローで飲み、口を離した時にストローがたてる音に少し似ている。小さないびきのような音がする時もある。


「肺炎」という言葉が脳裏をよぎったのはこの時だ。

ネットで調べると症状も合致する。
もうこれは肺炎に違いない。そしてどうやら寝てれば治るものではなさそうだ。

夫には翌日午前休をとってもらい、火曜の朝イチで近所の大きな総合病院に行くことに決めた。

肺炎かもしれないと気づくのが遅れた理由として、私は肺炎が発熱を伴うことを知らなかった。今まで周りで肺炎にかかった人はおらず、「肺炎=肺だけ具合が悪くなる」というイメージがあったのだ。

***


火曜、診察開始時間の30分前には病院に着き、受付を済ませた。

ここからが本当に長かった。

まずは別フロアでコロナとインフルの検査を受けなければならない。鼻の奥まで綿棒を刺された結果、やはり両方とも陰性で待合室に戻される。

待合室には診察を待つ人が大勢いる。
その中で延々と咳が止まらないのが本当に申し訳なく辛かった。鼻までマスクをすると呼吸なんて出来ず、やむをえず鼻は出した。あまりの咳に、近くに座っていた人が怪訝な顔で移動していく。


処方が出るかもしれないからと、持参していた風邪薬は飲まないように看護師が言う。私の苦しそうな様子を見かねた夫が別室で待てないかとお願いすると、処置室に移動することが出来た。

そこで少し休ませてもらい、採血後にやっと解熱剤を点滴してもらえたのは病院到着から2時間半後。この時の体温は40.4℃だった。

点滴を受ける私のもとに医師が診察に来てくれたのはさらに2時間後。病院到着から4時間半が経過していた。この4時間半が何よりも辛かった。

そこからはサクサク話が進んだ。

血液の炎症値が突出していて、マイコプラズマ肺炎が疑われると医師が告げた。その後CTを撮ったところ左の肺に影が写り、肺炎であることが確定し1週間程度の入院を勧められた。

自宅で服薬のみの治療も出来ないことはないそうだが、夫と相談した結果入院した方が点滴も出来て、症状が安定するという点で入院を選んだ。

一度自宅に戻って荷物をまとめ、病院に戻る。

夫の午前休は結局全休になってしまった。でも点滴のおかげでその頃には熱は37.9℃まで下がり、かなり楽になっていた。


***


熱は下がったが、咳は止まる気配がなく苦しい。

そう訴えていたので入院したら咳止めを出してもらえると信じていたけれど、そんなことはなかった。

処方は飲み薬の抗生剤と点滴のみで、咳は相変わらずノンストップ。横向きで寝ると肺が圧迫され咳が止まらず、仰向けも呼吸が苦しい。

結局夜はベッド用テーブルに枕を置き、授業中にサボって寝るスタイルで目を閉じた。それでも朝5時まで咳は止まらず、起床時間は6時だから初日はほぼ眠れなかった。


翌日医師に相談すると、咳を止めてしまうと治りも遅くなってしまうと言う。弱めの咳止めと痰切りを出してもらえたが、効果はさほど感じられなかった。

熱は入院2日目以降平熱で落ち着くようになり、それだけでも本当に気持ちが楽になった。日を追うごとに咳が出ない時間も少しずつ増えていく。入院3日目には再び採血とレントゲン撮影をし、経過は良好。

少し元気も出てきて、前回のnote「パン屋の太った店長と変わったお客さん達の思い出」は病室のベッドで書いた。


入院中はひたすら眠かった。
ご飯の時間や看護師さんが定期的に検温や血圧測定に来る合間をぬって可能な限り仮眠をとった。一応暇つぶしのための本も持って行ってはいたけれど、結局読むことはなく1週間が経った。

不便だったのは、食事の際ですら水やお茶がもらえないこと、シャワーを浴びるのに予約が必要で時間が限られていること。それ以外は思ったよりも快適な入院生活だったと思う。夫も2日に1回はお見舞いに来てくれた。


1週間後、最後の採血とレントゲン撮影をした。
炎症値も平常値まで下がっていて、肺の影もほぼ消えており無事に退院許可が下りた。

ちなみに、初日にとった唾液の生体検査の結果が出たのは入院6日目。おそらくマイコプラズマ肺炎で間違いないようだったけれど、初日時点では抗体があまり出来ておらず、マイコプラズマだと断言はしづらいようだった。


***


現在は退院して2日経過した。

咳は入院時ほどではないが相変わらず頻繁に出ていて、声は完全に枯れている。もう発症から2週間経つので3,4週間は覚悟した方が良さそうだ。


感染経路については、おそらく夫からだと思う。
思い返すと私が発症する2週間前くらいに夫が高熱を出していたのだ。咳もしていたが、喘息で普段から咳はするので気にもとめず、風邪だろうとお互い思っていた。

聞くと、マイコプラズマは感染しても自然に治る人がほとんどで、肺炎まで進行するのは3〜5%程度らしい。潜伏期間は2〜3週間。喘息の薬のおかげか夫は自然治癒し、私は悪化してしまったのだろう。


入院費用は1週間で10万円ほどだった。
保険である程度は返ってくるし、看護師さん達にはとても良くしていただいたので入院を選んだことに後悔はない。

肺炎になって良かったことが唯一あるとすれば、体重が3kg落ちたのはちょっと嬉しい。「痩せた」よりも「やつれた」という表現が正しいかもしれないけど。

でも、やはり健康は何物にも変えられない。
30代もそろそろ後半に入ってくるので、今まで以上に体は大切にしなければと思う。


これから寒くなる季節。
家族4人(犬猫含む)、元気に健康で過ごしたいと改めて思った出来事だった。


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