リアム・ローソンが見た日本と海外の違い ~motorsport.comのインタビュー記事から読み解く~
始めに
スーパーフォーミュラに参戦し、レッドブルF1のリザーブを務めるリアム・ローソンがF1へのスポット参戦を果たした。
それは、アルファタウリから途中復帰したダニエル・リカルドがオランダGPのFP1で起こしたクラッシュによるケガから起因した。
リカルドの完全復帰まで時間がかかるとみられ、オランダGPとイタリアGPの2戦にローソンは代役としてアルファタウリから参戦。
シンガポールGP、日本GPごろまでには復帰すると思われており、F1でみられる青き目のサムライの姿はこれまでであろう。
この青き目のサムライとなったローソンに対してmotorsport.comのウェブ版が行ったインタビュー記事か先日公開された。
インタビュー記事の中で日本と海外との違いについて興味深い回答をしていたので、本記事に取り上げることにした。
インタビュー記事から一部を抜粋し、彼を読み解いていこうと思う
そもそもリアム・ローソンとは
リアム・ローソンはニュージーランド出身の21歳。(2002年2月生)
角田とは2歳差である。
7歳でカートに乗り始め、ニュージーランド国内の様々なカート大会に出場。2014年には2つのタイトルを獲得しており、この時期から速さの片鱗を見せ始めている。
2015年に国内のジュニアフォーミュラに参戦し総合2位とルーキーオブザイヤーを獲得、翌年、国内のF1600選手権にて15戦14勝という驚異的な強さを発揮しチャンピオン獲得。
2017年にオーストラリアへ渡りF4へ参戦、シリーズ5勝をし総合2位に。
2019年にトヨタ・レーシング・シリーズに参戦し参戦初年度でチャンピオン獲得、翌年も継続参戦するもイゴール・フラガに敗れ総合2位に。
その後も様々なカテゴリーに参戦し、好成績を収めていく。
2021年に参戦したDTMでは現在ウィリアムズに参戦しているアレクサンダー・アルボンとチームを組み参戦。
同年、F2に参戦開始、2年戦う。2022年にはウィリアムズに所属するローガン・サージェントと共に参戦している。
2023年現在はスーパーフォーミュラとF1の二足の草鞋を履く。
と、幼いころから素晴らしい速さの持ち主として知られており、それに応じた好成績を収めている。
同郷には日本での活躍経験のあるニック・キャシディがおり友人関係である。
ローソンの現在の立ち位置
ローソンは昨年までF2に参戦した後、日本に渡りスーパーフォーミュラにて無限から参戦している。
シリーズランキングでもチームメイトの野尻に続いて2位という高位置につけ、シリーズ3勝を挙げている。
現在の勝利数は野尻や宮田が記録している2勝を抑え単独トップである。
また、2019年のシリーズチャンピオンを獲得したニック・キャシディ以来となる5シーズンぶりの外国人選手のチャンピオンが期待されている。
前述の通りの記録をもってF1に臨んだローソン。
予選のタイムを限定してみるとチームメイトとなった角田のタイムに迫る勢いである。
これは角田自身も急なスポット参戦といえど驚いたはず。
決勝はオランダ、イタリアのいずれも完走を果たしており、ノーポイントにで終了している。
インタビュー記事の中身とその掘り下げ
F2参戦中のローソンはあまり良いシーズンでなかったと語っており(2022年の成績は総合3位)、同時にレッドブルF1のリザーブも並行して決まっていたため、大会数が少なくF1への影響も少ないカテゴリーはどこかという観点でスーパーフォーミュラ参戦に決まったと思われる。
また参戦チームに関しても彼の過去の戦績からトップチームの無限と契約を交わしたのであろう。
F2参戦中のローソンはあまり良いシーズンでなかったと語っており(2022年の成績は総合3位)、同時にレッドブルF1のリザーブも並行して決まっていたため、大会数が少なくF1への影響も少ないカテゴリーはどこかという観点でスーパーフォーミュラ参戦に決まったと思われる。
また参戦チームに関しても彼の過去の戦績からトップチームの無限と契約を交わしたのであろう。
参戦初年度ながらトップチームの無限と契約を交わしたと報道された時は、私も驚いた。
昨年に現在のTGMがレッドブルとのスポンサー契約を交わしていたのだが、それが今年になって突如解消されたことがあり、ローソン参戦にレッドブルというパッケージから終了したと解釈している。(そこにレッドブルプロジェクトドライバーの大湯のTGM契約が重なってしまい、最終的な2023年シーズン全体のドライバーズラインナップ発表が遅れたということもある)
スーパーフォーミュラに関して言えば、今年からSF23にマシンが変わり、進化した各パーツのフィーリングや他チームとの競合など「F1に近い」とだけあってレベルが断然飛躍したなと今シーズンのレースを見ていて常に思う。
F1だけではなくインディカーシリーズへ進歩したりフォーミュラEへ移籍したりと様々なフォーミュラ格式のカテゴリーへの足掛かりとしたドライバーは多い。
アルピーヌ所属のピエールガスリーもスーパーフォーミュラ経験者の一人でスーパーフォーミュラの経験がF1に多く活かせていると過去に語っている。
ローソンにはスーパーフォーミュラの経験を今後のF1帯同でさらに活かせるようになると良いと思う。
これに関してはドライバー間のつながりやチームとのつながりを見れば一目瞭然である。
ただ、これはSUPERGTが関係していると思われる。
SUPERGTはご存じの通り1台のマシンを2人で共有する。
また1台に関わるメカニックの人数も多い。
これらのことからチーム内での親和性、信頼関係がチームを優勝へと導く。
そしてSUPERGTに参戦しているGT500チームやSUPERGTに関係のあるメカニックが多くエントリーしているスーパーフォーミュラ。
その関係からかカテゴリー全体で強いつながりがある。
しかし、ローソンは続けて
と答えているのだが、これに関しては全くの同感である。
ドライバーズラインナップがほとんど固定でたまに見ていてつまらないと感じることがある。
特に日本ではメーカー内での所属ドライバーのしばりつけが強く他メーカー同士の移籍が殆ど行われない。
また、日本のメーカーは現在F1へのルートを持っているのはホンダだけで、トヨタはWECやNASCARどまり、日産はフォーミュラEどまりとなんとも中途半端と言ってしまえば失礼だが本当にそうなのだ。
まあ、海外カテゴリーへのメーカー参戦はコロナで一度ほとんどなくなってしまったのが現状で、そこから復帰しなおすのもメーカー内ではためらわれているということ。
そして、海外ドライバーの新規参入が少ない。
今年はスーパーフォーミュラが大きく変化したことで一気に増えたがこれも一時的だろう。
来年にはまた日本人だけのシーズンを迎えるような予感がする。
ローソン以外の海外ドライバーの成績を見てもかなり下位に沈んてしまっている。
これは日本人ドライバーのレベルが非常に高いということも関係しているが、本来ならスーパーフォーミュラ・ライツからステップアップすることが望ましいと私は感じるが、いきなりトップカテゴリーに参戦し中々日本に順応できていないのではないかと私は思う。
各海外ドライバーの戦歴をみてもF2経験者が大体ではあるが、F2でも成績が下位に沈んでいる。
そのようなドライバーがトップカテゴリーに参入して苦しむのも必然。
それで自信を無くすようなら一度ライツを経験したうえでステップアップすべきだと考える。
しかし、スーパーフォーミュラ自体の海外からの注目度が高い。
現に、元F1ドライバーのヤルノ・トゥルーリの息子エンツォやジャン・アレジの息子ジュリアーノなど日本を修行の場として考えている者も多い。
F1のみならず、様々な海外カテゴリーへステップアップしているドライバーは非常に多い。
F2やF3にライセンスやエントリーの問題などで参戦できないドライバーから有力な候補の一つとしてみられているのだ。
今シーズンから提供が開始されたSF23は、開発コンセプトの中に「多くのバトルとオーバーテイクをもたらす」とあり、実際にシーズンが開幕してからバトルの数もオーバーテイクの数も昨年以前から増加している。
空力パーツのマウント位置や形状など昨シーズンまで使用したSF19とは細かく異なる。
バトルやオーバーテイクがやりやすい形状に変化しているので、より闘いにマッチしている。
激しい戦いが多いF2と比べ少しトーンダウンしているかと思うが、これまでローソンが鍛えてきた走り方とマシンが非常にマッチしていると思う。
また、他のフォーミュラ格式のカテゴリーの中で唯一特出すべき技術がある。
それは「オーバーテイクシステム」である。
これは、決められた持ち時間の中でボタン作動後から一時的にエンジンの出力を増加させオーバーテイクを促進させるというもの。(フォーミュラEの「アタックモード」に近いものである)
オーバーテイクシステム自体、ローソンにとってはF2にはない驚いたものの一つであろう。
果敢に攻めるために使用したり、防御に使用したりと様々な使い方ができる。
初戦となった富士もギリギリまでローソンもシステムを使用していたので、彼の戦い方により付加価値を与えたであろう。
まとめ
ローソンがF1に出場してから早2戦。
スーパーフォーミュラではシーズン折り返しを迎え、無限の1-2体制が続いている。
スーパーフォーミュラで素晴らしい経験を得ているローソンは、元々持ち合わせている速さにさらに付加価値を与えていると私は感じている。
ニュージーランドの青き目のサムライはさらに日本でもF1でも躍進するのだろうか。
今後の彼の戦いに注目していきたいところだ。
今回、引用させていただいた記事
今回、motorsport.com様にて公開されている上記の記事に掲載されている一部文章を引用させていただきました。
ありがとうございます。