めちゃくちゃ面白い!GTワールドチャレンジの魅力
はじめに
これを読んでいる読者の皆さんは生粋のモータースポーツ好きの方が多いのではないだろうか。
レースをこよなく愛する皆さんは様々なレースフォーマットを日々追いかけていることでしょう。
ハコ車やフォーミュラ、プロトタイプカー等々・・・。
様々なレースフォーマットが存在する中、私が最近発見し面白いなと感じたカテゴリーがある。
それは「GTワールドチャレンジシリーズ」である。(以下、GTWC)
現在、日本ラウンドが行われており先週鈴鹿ラウンドが行われたばかりで、GTWC Asiaでは日産GT-R GT3を走らせる500号車のチーム5ZIGENが唯一日本車で参戦するチームとして2018年以来となる勝利を挙げた。
今回はGTWCとはどのようなカテゴリーなのか、日本のSUPERGTとの違い、注目すべきポイントなどGTWCの魅力をお伝えしていく。
GTWCとは
世界各地で展開されるグローバルカテゴリー
GTWCとは、SROモータースポーツグループ(以下、SRO)が世界各地の様々な場所で展開しているグローバルカテゴリーである。
SROはイギリス・ロンドンに本拠地を構え、1995年にフランス人のステファン・ラテルによって創設され、GTWCを始め、スパ・フランコルシャン24時間耐久レース、インターコンチネンタルGTチャレンジなど様々なモータースポーツイベントを運営しており、GTカーレースのグローバルリーダーと称されている。
現在ではeスポーツイベントやツーリングカーイベントなど多くのモータースポーツイベントにも関与しており、SUPERGTではGT300クラスのGT3車両向けの性能調整(BoP)の策定を担当している。
GTWCはアジア、ヨーロッパ、アメリカで確立されたSROコンチネンタルシリーズを統合することによって2019年に誕生したレースカテゴリーである。
それぞれが独立したカテゴリーのままでありながら、チームやメーカーはグローバルチャンピオンシップに向けてポイントをかけて戦う。
GTWC Asia、GTWC Europe、GTWC Americaの3カテゴリーに加え、2021年からはGTWC Australiaが追加され、合計4カテゴリーが存在する。
GTWC Asiaとは
2017年にブランパンGTシリーズのアジア版として発足し、Group GT3とGroup GT4の2クラスが混走してレースを戦う。
2021年にル・マン24時間耐久レースを運営するフランス西部自動車クラブ(ACO)とSROが、2023年のアジアンル・マンシリーズの開催に向け協力することとなり、GTWC Asiaとアジアンル・マンシリーズの合算ポイントによるチャンピオンにル・マン24時間の招待枠を与えることを発表。
2022年には日本チーム・ドライバー向けに設けられたジャパンカップ開催を発表。
2023年には中国圏内で行われるチャイナカップを設けることを発表した。
GTWCの面白いところ
レースは1回1時間
皆さんが思い浮かべる自動車レースと言えば、決められた周回数を周ることだと思うが、GTWCは違う。
GTWCは1つのレースを1時間で行い、その中で1回のピット作業義務が施行される。
タイマーが止まればそれでレース終了となる。
周回数が決められているレースでは75周で行われる場合1時間30分から2時間が経過する。(1周1:15:000~1:30:000で計算)
しかしクラッシュなどの出来事でセーフティーカーランが発生すると、決められた周回数を周回しなければならないことから、非常に時間がかかることがある。
これはレースの安全性を担保しなければならないことから、クラッシュ時のマシンの移動やコース上に散らばったパーツの回収など、コース上が完全にクリーンになった状態でレースが再開されることとなるため、セーフティーカーランが長引く可能性が常にある。
そのため、レースの展開が長時間変化しないことがあるので中だるみしやすく、時間つぶしのためにファンはSNSを見たりゲームをしたりする。(私は良くやる)
しかしGTWCの場合、どのようなことが起きようが1時間で完全終了するため、中だるみも少なく見やすい。
レース初心者にもおすすめしやすい。
目まぐるしい展開の多さ
GTWCは様々な国籍の選手が参戦しており、GTWC Asiaの場合ヨーロッパ系と中国系の選手がその大半を占めている。
彼らの戦い方は日本人とは異なり、非常にエキサイティングな戦い方をする。
良く言われるのが、「日本人はおとなしく上品な戦い方だが、ヨーロッパ人は好戦的な戦い方をする」ということ。
1対1だろうが複数台での戦いだろうが、ノーズの先端をねじ込みポジションアップに意欲を見せる。
GTWC Asiaもヨーロッパ系の影響か、中国選手もエキサイティングな戦い方をしているが、彼らはどちらかというとヨーロッパと日本を合わせたような、上品かつエキサイティングな戦い方を好む選手が多いように見受けられる。
これらの目まぐるしいレース展開と併せて、ピット戦略も重要なカギを持っている。
ピット行為はレース60分の内、25分から35分の10分間のうちに行わなければならず、ピットレーン速度は50km/hで入口から出口まで90秒で通過しなければならない。
また、前のレースで1位から3位を獲得したチームには、1位15秒・2位10秒・3位5秒とそれぞれ追加タイムが課され、連勝することが難しくなっている。
このようなピットルールによってチームの戦略が大きく異なり、先述のような選手が好戦的ということもあり、争わない安全策を取るリスクが付きまとうため、見飽きることがない。
様々なクラスが合同で戦う
GTWCはGT3総合とGT4総合の2つに大きく分けられているのだが、その中に、GT3プロ・アマクラスとシルバークラス、アマクラス、GT4シルバー・アマクラスとアマクラスと細かく分類されている。
各クラスはFIAが定めるドライバーグレードによって参戦できるクラスが異なり、どのグレードのドライバーがどのクラスを走れるかは今回は省くが、グレード違いのドライバーが混走することで経験値獲得や将来のGTマイスター誕生のきっかけにもなれる。
ドライバーズランキングは各クラスのランキングと全てのクラスを統合した総合ランキングの2つによって争われ、獲得ポイントはレースの順位が参照される。
そのため、クラス別の戦いを制し、総合ランキングについても考える必要もあるため、チーム・マシンの総合力が非常に重要視されている。
一線級の選手が大量参戦
GTWCは様々なカテゴリーで活躍してきたドライバーやメーカーから派遣されるような一線級のドライバーが多く活躍しているため、非常にレベルの高い戦いを見ることが出来る。
GTWC Asiaの場合、ジュール・グーノンやパトリック・ピレ、マーカス・ヴィンケルホック、アレッシオ・ピカリエロなどル・マンやIMSAなど国際的なGTレースで活躍する選手ばかりである。
また、日本人や日本にゆかりのあるドライバーも何名か参戦しており、アンドレ・クートや永井宏明、脇坂薫一など過去にSUPERGTなどの日本のカテゴリーに参戦してきた選手も多い。
そして様々な出自を持つ選手も参戦しており、現マレーシア国王のご子息であるアブ・バーカー・イブラヒム殿下が参戦している。
兄のアブデゥル・ラーマン・イブラヒム殿下と共に兄弟で選手として活躍しており、他の選手にも引けを取らない速さが魅力的な選手である。
このような様々な経歴を持つ選手が一堂に会するカテゴリーはGTWCくらいしかないとも思えるド派手なカテゴリーである。
SUPERGTとの違い
レースフォーマットの違い
GTWCは1時間のレースであると前の項目で解説したが、SUPERGTの場合は基本的に決められた周回数を周るレースである。
今年に入ってからSUPERGTは3時間レースや350kmレースといった耐久面が試されるレースが増やされたが、3時間レースでもGTWCの3倍である。
ピット作業義務はどちらのカテゴリーも施行されている
GTWCは25分から35分までの10分間で行い、ピットレーンは50km/hで走行、90秒間かけてピットレーンを通過しなければならない。
SUPERGTはレースの3分の1から3分の2までで行わなければならず、一人のドライバーがレースの3分の2以上を走行してはならない。
ピットレーンの速度は80km/hではあるが、走行時間や全レースの成績によるピット作業加算タイムは存在しない。
マシンをドライブするドライバーはどちらのカテゴリーも2人でなければならないが、GTWCの場合は1人のみの参戦も認められており、レースの全てを走り切ることが出来る。
しかしSUPERGTは2人のドライバーの運転が義務付けられており、1人での走行は禁止されている。
先述のピット作業規程に抵触するという理由もあるが、細かいレギュレーションによる規定があるようだ。
優遇処置に関しては、GTWCは前のレースの1位から3位にピット作業時間の加算がされ、強制的にピット作業を遅らせられることとなる。
SUPERGTは各レースごとにポイントを獲得した1位から10位に獲得ポイントの2倍のサクセスウエイトと呼ばれる重りを載せることとなり、GT500では最大100kg、GT300では最大80㎏が上限となる。
またGT500の場合、サクセスウエイト50㎏ごとに燃料リストリクターと呼ばれるパーツを装着しなければならない。
クラス規定とドライバーの違い
GTWCはGT3とGT4の各クラスに細かく分類され、クラス別のランキングと全クラス統合の総合ランキングで争う。
SUPERGTはGT500クラスとGT300クラスの2つに分類され、各クラス別のランキングで争う。
使用するマシンはGTWCがGT3、GT4、GTカップカー、GTXのいずれか。
SUPERGTはGT500は日産Z GT500、トヨタGRスープラ、ホンダシビックタイプR-GTのいずれか、GT300はマザーシャシー、GT3、JAF-GTのいずれかとなっている。
GTWCは海外から参戦するドライバーが非常に多く、日本人は少ない。
ル・マンやIMSAなどの国際的カテゴリーに参戦するドライバーが非常に多く、メーカー派遣のドライバーもいる。
SUPERGTは日本人が大半を占め、外国人は非常に少ない。
日本国内のカテゴリーにのみ参戦するドライバーがほとんどで海外で活躍するドライバーは一定数いる状態で、メーカー直属のドライバーが半数以上。
楽しみ方は全く別
それぞれのカテゴリー別の楽しみ方がある
GTWCとSUPERGTの違いについて触れたが、レースフォーマットから使用するマシン、ドライバーに至るまで大きく異なることが分かった。
GTWCとSUPERGTには集中した楽しみ方とゆったりとした楽しみ方があると考えられる。
GTWCの1時間のスプリントレースでは好戦的なドライバーたちによる白熱した接近戦が楽しめ、画面から目が離せない集中した楽しみ方ができる。
SUPERGTの周回数レースでは350kmという長距離をどのような戦略で攻略していくかという、時間をかけた戦いを見ることができゆったりとした楽しみ方ができる。
このように見ていくと、全く楽しみ方が変わっており、レースの醍醐味がそれぞれである。
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