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【いそがしいとき日記】その9
本日、2回公演のマチネが終わったところです。
連日満席の客席。本当にありがたいことだなーと思っています。
当初、「舞台セットが斬新!」「音楽が斬新!」と、斬新斬新の言葉が飛び交っていたグレートコメットですが
この頃は「不協和音が気持ちいい!」とか「セットも美術も照明も綺麗!」とか、嬉しい感想がたくさんな感じ。(エゴサの鬼)
もちろん、グレコメ特有の不協和音やEDM的シーケンサーを多用した音楽が肌に合わない方もいらっしゃるでしょうけれど、はじめは「わからないーーー」とおっしゃってた方が「病みつきになる」という感想に変わっていってたりすると
「よっしゃ!」と、心の中でこっそりガッツポーズしてます。笑
たとえば、いまやミュージカルの王道作品になった「ウェストサイド物語」も、初演時のブロードウェイでの評価はあまり芳しくなかったみたい。
シリアスな社会的題材、主人公が死ぬバッドエンド、現代音楽とモードジャズ的要素が絡まった斬新なスコアなどが、当時のブロードウェイのスタンダードな演目とかけ離れて良すぎて、
つまり少々「センセーショナル」すぎて興行的にはそれほど成功しなかったとか。
(ちなみに「ウェストサイド」がこれほどメジャーな演目になったのは、映画のヒットののち。)
長いミュージカルの歴史を紐解けば、たとえば「ヘアー」や「ジーザス・クライスト・スーパースター」などのロックミュージカルの登場もセンセーショナルだっただろうし、ソンドハイムの複雑な和声による作品も人々の人気を得るまでにはしばらく時間がかかったみたい。
「ライオンキング」の登場だってそれまでのミュージカルの常識を覆すものだったし、「ハミルトン」の興行的成功によってヒップホップミュージカルがメインストリームに躍り出たのも、ひと昔前までだったら考えられなかったこと。
こうして、はじめは「え!?これがミュージカル!?」という受け取られ方をするような意欲的な作品があらわれても、それがお客様に受け入れられ、たくさんの方が支持してくださると、ミュージカル界の「スタンダード」になっていく。
そうしていくことで、ミュージカルの作品群に多様性が生まれて、新たな音楽とのコラボレーションや、新たな演劇・舞台芸術との融合が図られていく。
とっても素晴らしいサイクルだと思います。
「グレートコメット」が、日本のミュージカル界においても、そういった「新しい価値観」を一般化させて、「ミュージカルとはこういうもの」というマジョリティの考えに多様性を与えていく存在になりつつあるなと、
舞台に立ちながらそんなことを日々感じています。
ただ、どれだけセンセーショナルなことをやろうと、その結果「わけがわからん」という感想に終始してしまったら意味がない。
ミュージカルがミュージカルとして支持されるためには、「愛」や「生きること」に焦点をあてるようなドラマが不可欠だと思うし、「前衛的」でありながらも、見ている人の心を揺さぶるような瞬間が必要。
幸運なことに、「グレートコメット」のスクリプトとスコアには、ロシア文学の名作である「戦争と平和」に描かれている「愛」や「人間が生きるとはどういうことか」についての率直で温かな眼差しがちゃんと宿っている。
この作品の素晴らしさをご来場いただいたお客様に手渡すことと同時に、日本のミュージカル界のこれからは、前に進めば進むほど多様性が受け入れられるより豊かな世界が広がっていくはずだという理想に少しでも近づくため、
グレコメの後半戦(そうなの!今日で中日なの!)1回1回の公演も、大切に演じていこうと思います。
夜も頑張るモイ!!!
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