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東京文化財研究所公開シンポジウム🌲森と支える「知恵とわざ」-無形文化遺産の未来のために-に行ってきました🌿

かご編み仲間が、「おもしろそうなシンポジウムの情報があったので、お知らせします」と7月の始めに共有してくれたのが、これでした。チラシにはこう書かれていました。

” 伝統的な無形文化遺産は自然素材とその加工技術に支えられていますが、近年、里山の荒廃や食害により素材の確保が難しくなり、その継承が危機に直面しています。このシンポジウムでは、こうした課題を広く共有し、森と共に育んできた知恵や技の実態を広く知っていただき、現状理解や問題意識の共有を目的としています。” ←要約

https://www.tobunken.go.jp/info/event/2024/0809/leaflet.pdf

なるほどかご編み人なら、引き込まれずにはいられない内容です。特には「森と共に育んできた知恵や技の実態を広く知っていただき」という一文にはビビッと来ました⚡️

というわけで早速申し込みさせていただきました。

シンポジウム

内容は、前半が職人さん達が実演する技の披露、そして基調講演があり、後半は森の自然を使った技の事例報告がありました。

「解説カエデ類でつくる小原かご(滋賀)」 
実演:荒井 恵梨子(作り手)
「サルナシとバッコヤナギでつくる面岸箕(岩手)」 
実演:延原 有紀 (作り手)
「ヨシでつくる篳篥のリード」 実演:中村 仁美 (篳篥奏者)
「キリでつくる文化財保存桐箱」 実演:小島 秀介 (美術木箱小島)
「里山の木でつくる削り花」 解説:関田 徹也 (作り手)

講演「文化の基盤としての自然」蒔田 明史(秋田県立大学 副学長・植物生態学)

事例報告「無形文化遺産を支える森・知恵・わざ」

「森を使う知恵と技-籠を例に」 
今石 みぎわ(東京文化財研究所 無形文化遺産部)
「素材を育む自然・社会環境-ヨシを例に」 
前原恵美(東京文化財研究所 無形文化遺産部)
「森と職人を繋ぐ-キリを例に」 
倉島 玲央(東京文化財研究所 保存科学研究センター)

総括(登壇者・共同研究者によるコメントと総括)

情報を受け取ってからすぐに申し込みましたが、あっという間に定員になってしまいました。

展示

当日初めて行く場所だったので、早めに行き、1時間前から展示が見られました。いろいろな展示がありましたが、特に興味を引いたものを紹介したいと思います。

何と言っても一番の興味は、かごと箕です。一体どんな風に作るのか、取り入れられることがあるのか、正直なところそこが一番知りたいところです。実演が始まる前ですが、展示品を見るだけでもかなり参考になります。

樹皮やつるを編んださまざまな作品
樹皮やつるを編んださまざまな作品

スズタケとヤマザクラ樹皮の創作かご

スズタケは笹の一種です。現代ではかご・ざると言えば竹ですが、笹でもこんなにかごが編めるんですね。縄文時代は竹より笹を多く編んでいたという報告もあります。笹はパイオニア植物(植物の生育にとってきびしい環境である裸地へ最初に侵入する植物)なので、災害後でもすぐに生えてくるでしょうし、背丈も小さいので女性でもすぐ採取できますから、上手く取り入れられれば強い味方になりそうです。

コシダのかご(広島県廿日市市)

シダの茎のところを使ったかごだと思います。シダも身近にたくさん生えていますので、材として使えたらとても便利です。シダも原初的植物なので、災害などで土地が荒れた時は、いち早く出て来るでしょう。この編み方も興味深いです。

展示をあれこれ見ていると、かご編み仲間3人がやって来ました。4人で共有しながらあれこれ考察しているうちに、あっという間に開会の時間がやってきました。

実演

実演は、参加者が自由に見学し質問もできるようになっていました。他の人がする質問を聞くのも大変参考になりましたし、参加者同士の情報交換もできて、とても良かったです。

✴︎「解説カエデ類でつくる小原かご(滋賀)」

今日の一番の目的はこれ!
見出し画像にあるものもそうです。

実に興味深い編み目です。

イタヤカエデをの木をこのように割っていき、さらに割って、割って最後には薄いひごにまでにして、かごを作ります。

材となる木の見分け方、ひごの作り方と実演を交えながら、丁寧に教えてくださいました。一朝一夕にはいかない大変な仕事です。そんな中でも真似してみたい情報がありました。

ヒゴの断面をかまぼこ型にするというところです。そうすると組んだ時にガッチリとハマって隙間ができ難いのだそうです。杉の皮でできるかどうか分かりませんが、次のワークショップで挑戦してみたいと思います♪

ひごを作る包丁の刃は特注で、柄はご自分で作られるそうです。

✴︎「サルナシとバッコヤナギでつくる面岸箕《おもぎしみ》(岩手)」

これも興味深い実演でした。樹皮を面岸箕用に道具(上の写真手前一番右)を使ってひごにするところを実演して見せてくださいました。

この職人さんは、この樹皮を使ってご自分のバッグも作っておられました。後ろにチラッと見えるのがそうです(´∇`)

かご以外にも、森にある自然素材を利用した技なので、キリでつくる文化財保存桐箱やヨシで作る篳篥のリード・里山の木で作る削り花など、興味深いものがありました。

講演と事例報告

ここでは自然の大切さがひしひしと伝わってきました。人間は自然なくしては生きていけないのですが、今ほどそれに取り組んでいかなければならないときはないと思います。そして演者の皆様、これだけの調査と準備をするのはどんなに大変だったかと思います。ありがとうございました。

驚きの参加費無料

これほど充実した内容で参加費が無料だったことに驚きました。独立行政法人の国立文化財機構が主催しているので、国の機関が関わっているのだと思います。

しかもこんな素晴らしい資料も頂くことができました。

中には箕の詳しい作り方まで載っています。感激です!!!お金を払ってもこれだけの資料はなかなか手に入りません。

最後に

文化遺産とも言える貴重な技を、惜しげもなく披露してくださるのは、失われていく自然をどうにかしたいという思いからのようです。自然の恵みを使う作り手の方々は、年々材の確保が難しくなっていく現状をこのシンポジウムで訴えられていました。しかし主催の趣旨説明の方からも、それをどうしたら良いのかは答えが出ていないとのことでした。長年に渡って問題となってきた自然の現状は、同じ年月を経なければ回復できないのだろうと察しはつきます。

しかし、こういった大きな課題の前に立たされたとき、私たち一人一人がその問題にどう向き合うかが問われると思います。日々の生活の中に、自然を取り入れ親しんでいくという意味で、私がかご編みを始めたのもそんな動機からでした。もしかしたら、それは小さなことかもしれませんが、一つ一つを着実に積み重ねることで未来に繋げていくこともできるのではないかと思います。

参考資料
『びっくり!!縄文植物誌』鈴木三男著 同成社


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