やまねこ

猫をこよなく愛しています。 キリスト教と視覚芸術、神学、哲学

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最近の記事

IELTSその後 (Unconditional Offerまで)

前回のIELTS初受験の投稿から1年近く経過してしまいました。 その後の進捗といえば、以下のような経過を辿りました。 2023.10.28 L: 6.0 R: 5.0 W: 5.5 S: 6.0 O.A: 5.5 (Ave.5.625) 2024. 1.13 L: 5.5 R: 5.5 W: 5.5 S: 6.0 O.A: 5.5 (Ave.5.625) 2024. 5. 3 L: 6.5 R: 6.0 W: 6.0 S: 6.0 O.A: 6.0 (Ave.6.125)

    • IELTS初受験(役に立たない体験記)

      自分の現時点の英語力を測るため、IELTSを受験しようと決めたのが9月下旬。そしてついに昨日、人生初のIELTSを受験してきました。 私の英語学習歴まずは「どんなヤツがこれを書いているのか」は体験記を読むときに気になる人もいるかと思いましたので、私の英語学習歴をご紹介します。 英語との出会い 学生時代は英語は苦手でした。苦手というか、文法が嫌いだったので勉強する気にならず、必然的に苦手になったといった方がいいかもしれません。 ところがある日、マリンスポーツショップに行

      • 『忘れえぬ女性たち』五木寛之

        外国の街で出会った、心に残る女性を描いたエッセイ集です。 確か私が最初にこの本を読んだのは20代半ばか後半の頃だった気がします。もうかれこれ30年ほど経つことになりますが、それ以来、ずっと心の中にあるエッセイです。 今回ご紹介したいのは、この中に収載されている「マンハッタンの雪の夜に」という作品です。 舞台はニューヨーク。著者(五木寛之)が、ある冬の夜、出版社を訪ねた帰りに地下のレストランで60代半ば頃の女性と出会います。二人はカウンターに座り、軽く挨拶をし、自己紹介する

        • 『楢山節考』深沢七郎

          (ネタバレあり) 映画にもなったので有名な話しですが、長野県のとある村を舞台に、70歳を迎える老人を楢山へ捨てに行く因習(棄老伝説)を題材にした小説です。 近頃SNSを賑わしている某学者様の発言を聞き、本棚から引っ張り出して、また読んでみました。 物語全体の雰囲気は、民族学の著作を思わせるような記述ですが、実母を捨てに行く息子、辰平の細かな心の動きの描き方は、やはり文学作品ならではです。 貧しく食べるのにも困窮しているこの村落では、口減らし、間引き、姥捨てといった、今なら

        IELTSその後 (Unconditional Offerまで)

          『神を待ちのぞむ』シモーヌ・ヴェイユ — ヴェイユの<召命>

          初めてシモーヌ・ヴェイユの著作に触れた。 あまりに純粋で直情的、理知的 ー 本書から受けた彼女の第一印象だ。 本書の前半は、ヴェイユが霊的内面を共有したペラン神父に宛てた6通の手紙からなり、後半は彼女のいくつかの論考からなる。 ヴェイユ自身はキリスト教の洗礼は受けていないながらも、手紙、論考のいずれのテクストからも、彼女の神への愛、信仰、秘跡論や救済論などのカトリックの教義への深い理解が伺える。 ヴェイユの思索は、旧約聖書、新約聖書のみならず、ギリシャ神話、プラトン哲学、

          『神を待ちのぞむ』シモーヌ・ヴェイユ — ヴェイユの<召命>

          「あなたは幸せですか?」

          「あなたは幸せですか?この国に生まれて良かったと思いますか?」 この問いに対して、あなたはどう答えますか? 昨日、Zoomでの連続講義「上智大学神学講習会 現在(いま)のメメント・モリ ― キリスト教における死生観」を聴講しました。 演者の西平直先生(上智大学グリーフケア研究所、京都大学教育学研究科教授)はこれまで何度もブータンに足を運び、死生観や宗教観についての研究をされているのですが、ブータンの学生たちにこの問いを投げかけたそうです。 ブータンはチベット仏教の国で、輪

          「あなたは幸せですか?」

          『キリスト教神秘思想の源流』プラトンからディオニシオスまで

          今年は、特にキリスト教神秘思想を中心に、日本の思想との関連についても考えてみたいと思っています。そのため、まずはキリスト教神秘思想についての概要を掴むことから始めることとしました。 本書では、プラトニズムの神秘主義がキリスト教神秘主義の成立に与えた影響や両者の相違点だけではなく、キリスト教内部(東方キリスト教と西方キリスト教)の霊性の違いも明確にされています。 サブタイトルには「ディオニシオスまで」とありますが、16世紀の十字架の聖ヨハネやアビラの聖テレジアの神秘思想までを

          『キリスト教神秘思想の源流』プラトンからディオニシオスまで

          『哲学者たちの天球』スコラ自然哲学の形成と展開/アダム・タカハシ

          最初の印象・・・「装丁が素敵!」 本のカバーは帯を含め要らないといつも思っているのに、これは帯もカバーも一つの作品に思える。ずっと見ていたくなる。数週間ずっと表紙だけ見ていた。(オイ!) 著者が「一般のかたが読んでもわかりやすいように、(博士論文に)加筆修正を施した」とおっしゃっていたように、文中、要所要所に手短にまとめた概要が挿入されているため、とても読みやすかった。それと同時に読みごたえもあった。 「世界を秩序付けている第一原因が何に依拠しているのか」という論点に対す

          『哲学者たちの天球』スコラ自然哲学の形成と展開/アダム・タカハシ

          『GOSPEL』 (ASIAN Documentaries)

          African Americanの歴史にルーツを持つ教会音楽、ゴスペル。 日本でも『Mama, I Want to Sing!』や『天使にラブソングを』から特に人気が出てきたようで、ゴスペルを楽しんでいる若者たちも増えているらしい。 このドキュメンタリー映像では、ゴスペルを歌う日本人やアメリカに住んでいるクリスチャンへのインタビューを通じて、信仰を持たない(=クリスチャンではない)日本人が、歴史や宗教と不可分に繋がっているゴスペルを歌うことについて、いくつかの側面から光を当

          『GOSPEL』 (ASIAN Documentaries)

          『形而上学入門』フランシスコ・ペレス

          本書はまさに形而上学「入門」である。 一般に「入門」と名のつく書籍は、難解な概念をわかりやすく説明するために多少の曖昧さは許容される向きがあるが、本書にはそういった「妥協」はない。ただ、初学者が全く歯が立たないような内容ではなく、身近な例えを用いながら存在についての問いという「根源的な問い」に正面から迫っていくため、読後はこの本を足がかりにして次のステップへと進むことができるだろう。 本書の内容だが、各々の存在者の中に底通する共通性を見据え、表面に顕れる違いを捉えながら、そ

          『形而上学入門』フランシスコ・ペレス

          『京都学派』菅原 潤

          帯に書かれたフレーズ  —「世界最高」を目指した最高の知性は、なぜ「戦争協力者」へと墜ちたのか?—  これを鵜呑みにすると肩透かしを食う内容だった。 本書は、京都学派(西田幾多郎と田辺元、京大四天王と言われる西谷啓治、高坂正顕、高山岩男、鈴木成高)を軸とした、近代から現代に至る日本思想史と言ったほうがいいだろう。 西田哲学と学説に対する批判や、西田・田辺の京都学派と近年の「新京都学派」に言及し、少々詰め込みすぎのきらいはあるものの、日本思想史として読むなら非常にわかりや

          『京都学派』菅原 潤

          『アスリーツ』あさのあつこ

          何か競技(特にスポーツ)を始めたばかりの頃は記録がどんどん伸びるから、上を目指すことしか考えないけれど、ある一定のレベルになるとパッタリと記録が伸びなくなる時が必ず来る。 競技を続けるか辞めてしまうかの最初の分岐点はそこなんだろうと思う。 主人公の沙耶は中学生。陸上ハードル選手なのだが、怪我をきっかけに部活動を辞めてしまう。その時顧問の先生に「ほっとしたか?」と聞かれる。怪我をした瞬間、悔しいという気持ちではなく「安堵」した自分を見抜かれていたことに驚くが、同時にこうも思

          『アスリーツ』あさのあつこ

          「頭のよい人が賢い人とは限りません」

          かなり前になりますが、白百合女子大学で行われた講座『創造への道』を聴講に行ってきました。昔、非常にお世話になった司祭の講座で、私にとっては自分の内面と静かに向き合うことができる時間でもあります。 さて標題の言葉はマザー・テレサの言葉ですが、この回は幼児教育の一つ、モンテッソーリ教育を紹介しつつ「知恵と知識」の違いに焦点をあてたお話しがなされました。 モンテッソーリ教育は、ご存知の方も多いと思いますが、イタリアの医者であるマリア・モンテッソーリが知的障害児と関わる中で、子ど

          「頭のよい人が賢い人とは限りません」

          『人間の証明』森村誠一

          「Mama do you remember?」という印象的な音楽と、黒人の子ども、そして風に舞って落ちてゆく麦わら帽子のシーンを、昔TVで見たことを鮮烈に覚えているが、映画も観ておらず、小説も読んだことがなかったが…。 特に最終章に向かうクライマックスは、登場人物のモノローグで語られ、少しずつ真実に迫ってゆき、最後に一つの大きな物語を終結させる。 読み手は結末に向け、隠された真実を刑事と共に追い続けるかのような気持ちになってくる。そして徐々に明らかにされてゆく過去、それぞ

          『人間の証明』森村誠一