失敗を許せる人
国際政策学部総合政策学科の松井亮太先生が、3月17日に日本原子力学会の社会・環境部会から部会賞(奨励賞)を受賞し、寄稿してくださいました。
これまでの研究活動でご指導・ご助言を下さった皆様に改めて御礼申し上げます。今回の受賞は以下の3つの論文・記事を評価していただいたことによるものです。
1.「集団思考(groupthink)とは何か:複合集団における集団思考の可能性」日本原子力学会誌ATOMOΣ第62巻5号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjb/62/5/62_272/_pdf
2.「原子力政策の意思決定と討議デモクラシー:日韓の討論型世論調査の比較分析」日本原子力学会和文論文誌第19巻3号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/taesj/19/3/19_J19.014/_pdf/-char/ja
3.「失敗を許す社会へ」日本原子力学会誌ATOMOΣ第62巻9号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjb/62/9/62_527/_pdf/-char/ja
今回のnoteでは、3.について少し触れたいと思います。
近年、企業や政治家、芸能人などが何か失敗したりトラブルを起こしたりすると、社会から強く批判される傾向が強まっています。社会的に大きな失敗やトラブルが起きると、大衆は特定の悪者(個人や組織)を探して批判しようとする心理現象は「スケープゴート現象」として知られています。スケープゴート(scapegoat:生贄のヤギ)という言葉は、古代ユダヤ人の儀式に由来するもので、人間の罪を背負わされたヤギを荒野に放つことで、人々は罪の意識から解放されて気が楽になったのです。それと同様に、失敗した個人や組織をスケープゴートにしてSNSなどで批判すればフラストレーションは解消されるかもしれませんが、問題の本質的な解決にはあまり役立ちません。
最近はSNSなどの普及に伴って、失敗するとインターネット上で批判されることが当たり前の風潮になりつつあります。そのため、若者が「失敗=許されないこと」と感じてしまっているのではないかと少し心配しています。
もちろん、失敗を避けられるのであれば誰でも失敗なんてしたくはありませんが、昔から「失敗は成功の素」と言われるように、失敗から得られる学びや成長が大きいことも事実です。特に大学生のみなさんは、失敗を恐れずに色々なことに挑戦してほしいと思います。挑戦には失敗はつきものであり、何度も失敗しながら人間は成長するものです。私自身も今までたくさんの失敗を経験してきましたが、それらの失敗を通じて少しずつ成長してきた実感があります。
スケープゴート現象はなかなか強力な社会心理現象ですので、失敗した人を批判したいという気持ちになりがちですが、その気持ちをぐっと抑えて失敗を許すということも大切です。失敗しても許される社会であれば、人々は安心して物事に挑戦することができます。挑戦のハードルが高ければ高いほど失敗も増えますが、それらの失敗の先に個人や企業の成長があるのだと思います。
イギリスの詩人アレキサンダー・ポープは「過ちは人の常、許すは神の業(わざ)」という言葉を残しています。人間は誰でも失敗するものです。若いみなさんには、自分の失敗も他人の失敗も許せる人になってもらいたいと思います。そうすれば、みなさん自身が大学4年間で大きく成長できると思いますし、社会は今よりもっと良くなるはずです。大学でも社会人になってからも、失敗を恐れずに色々なことに挑戦してください。
松井先生、受賞おめでとうございました。今後も先生方のご活躍をご紹介していきます。
編集:兼清慎一(広報委員)