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VRChatをRadeonでプレイしよう!

2025年1月12日更新

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はじめに

AMD Radeon RX 7000・6000シリーズは、リーズナブルな価格と豊富なVRAM(ビデオメモリー)の搭載量、高い演算能力を兼ね備えており、VRAMを大量に使い、GPU負荷も高いVRChatで採用すれば大人数のインスタンスや重いワールドでも快適に遊べるPCを安価に手に入れることができます。

現在はドライバの安定性が大幅に向上し、初期設定のままでもVRChatや その他のVRSNSを快適にプレイできており、大きな問題は起きていない状況です。2021年夏以降のドライバはほとんど落ちなくなっています。

以前は定番だった「テッセレーション モード」を「アプリケーション設定を使用する」に変更する設定は不要になり、逆に「AMDの最適化」の方が描画結果がよくなっています。

lilToonシェーダー作者のlilさんにシェーダーの動作検証をしていただき、Shader  Fes 2019、2021を回ったところ、300以上の作品のうち描画乱れは1作品で(2022年11月調査)、一部の例外を除きGeForceとシェーダーの動作に大きな差異はほぼありませんでした。

BTOや新規に組み立てた自作PCならトラブルは出にくいのですが、お手持ちのマシンでOSをそのままにしつつGeForceや旧型のRadeonから挿し替える際に工夫が必要です。本記事でも挿し替え時の不具合対策をメインに記載 していますので、よくお読みになり作業をお願いいたします。

Discordサーバー「RadeonVRの会」を運営しています。VRでRadeonを使う知見はRadeonVRの会約700名の皆様の集合知である本記事が最新であり、一番正確です。PCVR用のPCをご購入・組み立てされる前のご相談や使用時にお困りごとが出てきた際は、サーバーの有志がサポートいたします!自作PCに詳しいメンバーも多く、構成のご相談も可能です。

Radeon・GeForce・Intel Arcの比較

VRに使えるGPUを供給しているメーカーは3社ですので、よくご自分の用途とメーカーごとの長所・短所を比較検討して選びましょう。

Radeonは豊富なVRAMと高い演算能力がGeForceに比べてとてもお安く手に入るのが特長です。通常のゲームではフレームレートを大幅に向上させるAFMF2が好評で、ドライバベースの技術で基本的にすべてのタイトルに対応できます。ゲームのタイトルごとにグラフィックスやパフォーマンスの設定ができる親切なUIも特長です。残念ながらNVIDIAはAI関連事業の儲けに傾倒しゲーミングソフトウェアチームの予算が削減されたとの内部情報もあるため、最近のGeForceはドライバの不具合が増え気味です。ゲームが主な用途の方にはRadeonがおすすめです。ASRock AI QuickSetをインストールすればShark(画像生成)、Stable Diffusion web UI(画像生成)、Whisper Desktop(音声認識)を使えますが、DirectMLが低速なためライトユース向けです。

Radeonの短所はCUDAとTensorRTがないことで、RVC(AIボイチェン)と一部のフルトラデバイスが使えないです。現在はUnity純正ソフトでRadeonでもGPUベイクができますが、Bakeryを使う方はCUDAが必要です。機械学習やAIでCUDAとTensorRTを使う予定がある方はGeForceを選びましょう。またUGC(ユーザー生成コンテンツ)の描画が異なる場合があるので、VRSNSの録画・撮影・配信で厳密さを求める場合には不向きです。DisplayPort出力にスペクトラム拡散クロック生成(SSCG)というノイズ対策を使っているため、DP接続のHMDのうち一部が非対応ですので仕様を確認してください。仕様を見て分からない場合はメーカーにお問い合わせください。VirtualCastは非対応です。

Intel Arc A770 16GBは、3ヶ月ごとにかめごん(@camegone)さんに状況をお聞きして使用感を解説していただいています。ありがとうございます!24年10月初めにお聞きしたところ特に変化なしとのことでした。VRChatでの使用はおおむね快適で、最新のドライバでは多くの問題が改善しています。Quest 3で使用していますが、大人数でのVRChatはVRAMを半分使う前にGPU性能が不足しますので、VirtualDesktopのMedium設定かつアンチエイリアスは無効にするのをお勧めします。シェーダーの互換性は、ShaderFes 2019で全く表示されない展示品がRadeonよりも多くありましたが、普段それらに遭遇するのは稀です。VirtualDesktopは動作しますが、他はほぼ非対応です。OVRAdvancedSettingsの設定やOyasumiVRなどの一部オーバーレイも表示されないので注意が必要です。

Radeon RX 7000シリーズ

7900 XTXは4090と同じ24GBのVRAMを搭載していながら価格は約15万円と約半額で、演算能力は4080を上回る大変お買い得なモデルです。VRChatはレイトレーシングやRSR(FSR)、DLSSなどは使いませんので、同価格なら格段にVRAMが多く、演算能力も高いRadeonの方が有利です。AMDのドライバはアップデートで熟成が進みパフォーマンスや機能、安定性が向上します。 上級者向けの設定にはなりますが、Radeonは電圧低下をかけつつオーバークロックすると性能が伸びる特性があります(UV&OC)。7900 XTXを最新のドライバでUV&OCして使えば、VRMark Blue Roomで10000超えのスコアを出すことができます(RTX 4090は12108)。

        VRMark Blue Room
7900 XTX 24GB  9182(4080 SUPER 16GB      8690)
7900 XT 20GB    7420(4070 Ti SUPER 16GB  7119)
7900 GRE 16GB  6105(4070 SUPER 12GB      6115)
7800 XT 16GB     5581(4070 12GB                 5262)
7700 XT 12GB     4612(4060 Ti 16GB             3817)
7600 XT 16GB     2747(3060 12GB                 2611)
※上記のスコアは、2024年11月11日に3DMarkのサイトに掲載されていた 平均値です。

Radeon RX 6000シリーズ

VRChatはVRAMを大量に使うため、12GBのVRAMを搭載しつつ、おおむねRTX 3070と同等の演算能力を持つ6700 XTや6750 XTはコスパがよくおすすめです。6000シリーズは2020年10月発売のためドライバが熟成し、発売当初より安定性とパフォーマンスが向上しています。7000シリーズほど顕著ではありませんが同様にUV&OCが有効です。

RX 6800~6950 XTは16GBのVRAMを搭載しています。6800は最も安価に16GBのVRAMが手に入りまたワットパフォーマンスが高く、6900 XT・6950 XTはパワー的にはRTX 3090とほぼ同等のfpsを出せます。VIVE Pro 2の最高画質設定の5K,120Hzでも快適にプレイできます。

1.ドライバを完全にアンインストールしての交換作業

既存のGPUからの挿し替えの場合はDDU(Display Driver Uninstaller)を使い、以前のドライバをクリーンアンインストールしてセーフモードでの交換作業をしてください。チップセットドライバの一部も削除する場合があるため、DDUをかけた後はチップセットドライバの再インストールをしてください。7000シリーズではアーキテクチャが刷新されているため以前のRadeonからの乗り換えでも必ず行ってください。DDUによるドライバの削除をGeForceを挿し直して何度も繰り返したところ、不具合が解消した例があります。

DDUはレジストリのクリーンアップまではできず、どうしても調子が悪い際はOSの初期化が必要で、これはASRockの方も明言されています。大容量のUSBストレージや余ったSSDやHDDにOSを入れてそこから起動すれば、現在の環境はそのままでクリーンなOSをインストールした状態での不具合の有無を確認でき、原因の切り分けができます。

2.BIOS、チップセットドライバの更新と設定

特にRyzenのマシンではCPU・チップセット・GPUが連携していますので、 AMDの公式サイトで最新のチップセットドライバをダウンロードし、更新は必ず行ってください。マザーボードのBIOSも最新にしてください。

BIOSの設定は、CSM(互換性サポートモジュール)を無効にしてから、Re-Size BAR SupportとAbove 4G Decodingを有効して、ドライバからAMD Smart Access Memoryを有効にします。PCIeのバージョンは自動でOKです。

IOMMUやSR-IOV(Single Root I/O Virtualization)という項目があり、最初期の6900 XTではSteamVRが10~20分ごとにアクセスし無効のままではドライバが落ちていました。SteamVRの一時的な設計ミスと思われますが、現在も 有効か自動にしておくとよいでしょう。

3.ドライバのバージョン

基本的にはドライバの更新設定を「推奨+オプション」とし、最新版で安定動作しています。インストール時にAMDにメールアドレスを登録しておくと更新情報をメールしてくれます。RadeonVRの会に入っておくと早めに更新した会員さんが情報を上げてくれますので、安定志向の方は数日待つとよいでしょう。

最新のドライバをアンインストールして、古いドライバをインストールする際はAMD Cleanup Utilityを使用してドライバをクリーンアンインストールしてください。古いバージョンのドライバが必要な際は、AMD公式サイトのやや見つけにくいところにありますので下記の記事を参考にしてください。

https://www.amd.com/en/resources/support-articles/faqs/GPU-601.html

4.通常のモニター関係

複数のモニターを接続していると、VRデバイスが正常に動かない場合がRadeon・GeForceともにあります。不具合の際はモニターを1台にして検証しましょう。こうしたケースではグラフィックボードが不良の個体の可能性もあり、購入したお店にご相談されるのがベターです。また、モニターの リフレッシュレートを59.94 Hzなど少しずらすと安定する場合があります。

5.VR機器、SteamVRなどの再セットアップ

VRデバイスのセットアップを最初からやり直すと安定する場合があります。挿し替え時はSteamVRの再インストールで不具合が直るケースも多いです。下記の記事を参考に(ブラウザの翻訳で十分理解できます)、細かいファイルも残さず完全にアンインストールし、再インストールを行ってください。 また、VRChatの再インストールでも不具合が改善される場合があります。VRゲームでも通常のゲームでも、ゲームが初回インストール時のマシン構成を記憶している場合がありますので、不具合の際にはセーブデータをバックアップした上でゲームの再インストールをするとよいです。

6.これから出てくる不具合をどう解決するか

今後も何らかのトラブルが出てくる可能性はありますが、解決のコツはWindowsの管理画面からエラーログを見に行った際に「エラー」や「警告」だけ見るのではなく、直前の数秒前、数個前の「情報」にも怪しいイベントが記録されていないか見ることです。エラーコードやファイル名で検索し、原因を探ってみてください。RadeonVRの会に投稿するのもOKです。

どのアプリが原因で落ちているのか「原因の切り分け」も重要です。SteamVRのみ起動してアイドリングさせる原因の切り分けを行ったことで、最初期のSteamVRと6900 XTの組み合わせでIOMMUとSR-IOVへのアクセスを見つけました。

7.シェーダー開発、ワールド制作をする方へ

RadeonVRの会よりlilToonシェーダー作者のlilさん(@lil_xyzw)にRadeon マシン(Ryzen 7 5800X3D・Radeon RX 6700 XT)をご寄付し、シェーダーの動作検証をしていただきました。2023年4月にはRX 7900 XTで検証を行い、記事を更新していただきました。大変ありがとうございます!お礼にVALVE INDEXのHMDとコントローラーをご寄贈し、安定動作を確認していただいています。

結果、GeForceとシェーダーの動作に大きな差異はほぼありませんでした。シェーダー作者様やUnityで開発を行っている方、VRChatのワールドを制作される方は、いくつかの例外的なケースにご配慮いただければ描画の乱れは大幅に減少します。

AMDとUnityが共同開発し、RadeonRaysを採用したGPU プログレッシブ ライトマッパーならRadeonでのGPUベイクが可能です。ワールド制作でBakery(CUDA)に依存する必要はなくなりました。2019はバグがあり一部の機能に制約がありましたが、VRChatのUnityのバージョンが上がりRadeonVRの会でも動作報告を頂いています。

8.RadeonとGeForceの見え方の違いについて

RadeonとGeForceの見え方が違うのは当たり前で、「Radeonは発色がいい」などと昔から言われていますし、通常のゲームやゲーム以外の普段使いでも特に可もなく不可もない話だと思っています(発色はGeForceの見え方をRadeonに合わせたり、その逆も設定で可能です)。

RadeonでVRChatをプレイしている際に明確に分かる描画乱れはかなり減少傾向にありますし、多少の差異はVRSNSの録画・撮影・配信をされる方など以外は大きく問題視する必要はないと考えます。

ただ、VRChatはUGC(ユーザー生成コンテンツ)で成り立っており、個人の クリエイターさんはRadeonの検証環境を持っていない場合がほとんどです。lilさんに検証していただいた結果をもとにVRChat(Unity)のRadeonの挙動をできるだけGeForceと合わせてほしいという要望をAMDにお送りしました。

9.他のVRSNSの対応状況

Planeta

純国産のVRSNS「Planeta(プラネタ)」の、2023年8月25日~9月10日に実施 されたオープンαテストにRadeonVRの会のメンバーも何名か参加しました。Planetaの開発陣はRadeon機を持っていないため公式の動作環境として明示されていませんが、GPU要因と思われる不具合は確認されませんでした。

公式対応にはRadeon機の調達が必要ですが、代表取締役の青海さねさんと お会いしたところ、スポンサーを通じて要望を上げると動きやすくなるとの事でした。「バーチャル名鉄名古屋ステーション」を出展した名古屋鉄道様のアンケートで、Planetaと名古屋鉄道様に好意的な評価を寄せた上で「Radeon対応もお願いします」とひと言書いておきました。

Resonite

Neos VRの開発陣が独立して立ち上げたVRSNS「Resonite」も、RadeonVRの会の会員の皆様に検証していただきました。こちらもGPU要因と思われる 不具合は確認されませんでした。

ChilloutVR

ChilloutVRはVRChatに仕様が近いVRSNSです。Unityのバージョンアップと、クライアントの大型アップデートで古いシェーダーはRadeon・GeForce両方とも描画(質感)が変わっています。古いアバターやワールドはアップデートしましょう。

10.健全な市場競争がユーザーの利益に

PC業界関係者も言及しているAMDの存在意義は、NVIDIAの独占の悪影響を防ぎ、健全な市場競争環境を作ることです。純粋にGPUの性能を評価してRadeonを選ばれる方が多いですが、PC市場の健全化に寄与する社会貢献と考えてRadeonを選択される志の高い方もいらっしゃいます。

本記事の英語版

英語ではRadeonでVRChatをプレイする設定を詳しくまとめたブログなどがなかったため、本記事の英語版を作成しました。おかげさまで海外の方にもRadeonVRの会に多数参加していただいています!

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