いかなごのくぎ煮コンテスト〜いかなごの「くぎ煮」その10〜
1995年(平成7年)の阪神淡路大震災からの復興のため、神戸市長田区のJR新長田駅南地区のまちづくり会社として「神戸ながたTMO」が設立されました。
長田名物のお好み焼き屋さんマップを作ってPRしたり、お好み焼き店で使われているスジコン(牛すじとこんにゃくを煮込んだもの)を「ぼっかけ」として食を通じた町おこしに活用されたり、とても積極的に活動されています。
高校の先輩で、地域の有名人、近畿タクシーの森崎清登社長からの紹介で当時神戸ながたTMOにおられた東朋治(あずまともはる)さん(高校の後輩でした)と出会いました。
最初はMCC食品さんが製造されている「ぼっかけ」を伍魚福を通じて新神戸駅で売ってくれないか、という依頼でした。
伍魚福は、問屋ではありません。メーカーなので、通常は自社ブランド商品しか販売しないのですが、これは地域貢献という意味合いもあるので承諾し、提案、販売させていただきました。
その後、そんなご縁で2006年には、MCC食品さん、オリバーソースさんと共同で「神戸長田焼セット」という商品を作って販売させていただいたこともあります。MCCさんの「ぼっかけ」、オリバーソースさんの「長田ソース」、伍魚福の「小粒いか天」そして、お好み焼き粉のセットです。
少し時計を戻して「ぼっかけ」を販売する話をした2002年(平成14年)。
東さんとくぎ煮について雑談をしていました。
いつも通り、いかなごのくぎ煮をもっと盛り上げたいという話をしたんだと思います。
東さんによると、昔は、長田の大正筋商店街で「くぎ煮」コンテストをしていたそうなのですが、現在は途絶えてしまったとのこと。
「くぎ煮」を通じて地域の活性化に貢献できないか。
そんな話になりました。
そこで、東さんに組み立てを考えてもらって始まったのが「いかなごのくぎ煮コンテスト」です。
第1回は2003年(平成15年)3月。
場所は地元長田の丸五市場の空き店舗をお借りしました。
社長ブログを始める前から実施しているので、ブログでもっとも古いコンテストの記事は、「第6回」となっています。
看板その他の設営は、神戸ながたTMOさんによるものです。
伍魚福で「くぎ煮」について一番詳しい山本常務には長年審査員を努めてもらっています。
以下「社長ブログ」のくぎ煮コンテスト関係の記事を列記します。
前後しますが、2010年(平成22年)の第8回いかなごのくぎ煮コンテストでは応募者、当時92歳の友光喜代子さんとお会いすることができました。
詳しくは、当時のブログ記事に書いてありますが、
友光さんは、駒ヶ林婦人会、長田区連合婦人会、神戸市婦人団体協議会の会長を約40年努められ、2010年当時も長田区連合婦人会の名誉会長をなさっていました。
大正7年生まれの当時92歳。
1995年(平成7年)に亡くなった祖母のことも良くご存知でした。
婦人会報の最も古い記録では、1980年(昭和55年)、友光さんが講師となり、神戸市の各地でいかなごの調理法の講習会をされ、現在のようにくぎ煮が各家庭で炊かれることとなるきっかけを作ってこられた「張本人(ご本人談)」。自称「くぎ煮伝道師」です。
友光さんは長楽小学校(現在の駒ヶ林小学校)に入学され、昭和4年か5年頃、二葉小学校(こちらも統合されて現在は駒ヶ林小学校)の新設でそちらに移られ2回生としてご卒業になったそうです。
友光さんが子供のころから家庭ではいかなごを炊いて食べておられました。
当時は2月、フルセ(親魚)から始まり、節分、そして花見の季節(コナ=シンコ)まで。
友光さんが子供のころですので大正末期から昭和の初めの時点でいかなごを炊いて食べておられたことになります。私が調べた中では最も古い証言です。
昭和12年にご結婚され、4人のお子様をもうけられました。
昭和43年に駒ヶ林婦人会の会長になられ、神戸市の婦人団体協議会の会長も歴任。
友光さんは最も多い時期で100kgのいかなご(炊き上がりで60kg)を炊いておられたそうです。500gずつ分けて100人の方に配っておられたとのこと。
神戸市の職員の方ともお付き合いが長く、神戸市長も「○○くん」と呼ぶ仲だったそう。
「世間では垂水が発祥というけれど、長田のほうが古いのよ」とおっしゃっていました。
2012年(平成24年)、第10回のコンテストから、場所をアグロガーデン神戸駒ヶ林店に移して開催させていただきました。
2013年(平成25年)3月、第11回いかなごのくぎ煮コンテストで伍魚福賞を受賞された前田雅子さんからのお礼のお手紙です。
お子さんからくぎ煮を炊く匂いを煙たがられていたそうですが、
「賞に選ばれたことで市民権がえられ、子供が友達にあげておいしいと言われてもすなおに喜んでいます。新神戸へ売られているのを見に行き、お話もしてきたみたいです」
主催者としてもとてもうれしく思います。
2020年(令和2年)の第18回いかなごのくぎ煮コンテストは、さらに場所を変えて、「ふたば学舎」で開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響による外出自粛で一般投票は残念ながら中止に。
伍魚福の審査チームで「伍魚福賞」、「特別賞」を選定させていただきました。
例年は、「伍魚福賞」作品をもとに限定レシピの「くぎ煮」を製造販売するのですが、いかなご漁の終漁により、2021年に炊くこととしました。
TMOの東さんとの雑談の中から始まった「いかなごのくぎ煮コンテスト」。17年もの長きにわたり、合計18回開催してきたことで、くぎ煮文化の維持、継承という意義も強く感じるようになりました。
それぞれの家庭の味、どんな味が好まれるのかも投票に現れますし、全く新しいレシピを創出される方もおられます。
柔らかく、煮崩れた作品もありますが、これにも必ず票が入ります。
その方の家庭では、柔らかいくぎ煮が食卓に並んでいたのだと思います。
コンテスト、と銘打っていますが、優劣を決めるという性格のものではないと感じます。優劣ではなく、家庭の味に近いかどうか、という投票だと思うのです。
地域の皆さんとのコミュニケーションのきっかけにもなっています。
事務局を務めていただいている神戸ながたTMOの皆さんや、応募・参加いただいている皆さん、試食・投票いただいている皆さんに感謝しております。
2021年(令和3年)のいかなご漁が無事行われ、長田の街に甘辛い砂糖醤油の香りが漂うことを祈ります。
最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan