ガス直火の小鍋で炊く伍魚福の「くぎ煮」〜いかなごの「くぎ煮」その16〜
この半月、「くぎ煮」の話をしてきました。
今回は、伍魚福の「くぎ煮」についてお話しします。
伍魚福の「くぎ煮」は淡路島の岩屋で炊いています。
炊く技術に加え、漁港がすぐ近くにあって鮮度の良い「いかなご」が手に入りやすいことも理由の一つです。
漁場は大阪湾から播磨灘。
最近は、いかなご漁の不漁が続き、岩屋漁港で水揚げされたいかなごだけでは足りなくなり、播州(姫路方面)からもトラック便を走らせてなんとか確保している状態です。
一連の写真は、まだいかなごがそれなりに獲れていたころのものです。
いかなごを市場で落札して、工場に運び、洗います。
小鍋に醤油・砂糖・みりん・生姜(高知県産)を準備。
煮汁が沸騰してきたところに、2回に分けていかなごを投入します。
かき混ぜると崩れてしまうので、そのままガスの直火、強火で煮詰めていきます。
鍋のふちについた「いかなご」を箸で鍋の中へ。
煮え方を見ながら、途中で何度か鍋を返します。
煮上がったら、ざるに移して粗熱をとり、冷まして完成。
大量生産する工場では、学校給食で使うような大きな蒸気鍋を使って炊くのが普通ですが、伍魚福では、このように、ガス直火の小鍋を使用します。
強い火力で一気に煮詰めるため、糖分が飴状になり、照りのある、身のしまった、少し硬めの「くぎ煮」に仕上がります。
常温でも日持ちがするのは、そのおかげでもあります。
水分が少なくなるので、その分歩留まりは悪い(完成する重量が少なくなる)、ということで高価になりますが、この味には代えられません。
伍魚福では、1971年(昭和46年)の「くぎ煮」のパッケージ化以来、この炊き方にこだわっています。
当初は、もう少し遅い時期の大きめのいかなごを使用していました。その方が脂が乗っておいしいのです。
ただ、この10数年は、お客様がより小さいものを好まれるようになったため、「新物」の時期には解禁早々の小さな「シンコ」を炊くようになり、炊いた翌日には売り場に並べるローラー作戦を行うようになりました。
ちいさい「新物」とすこし大きめの「くぎ煮」、ぜひ食べ比べもしていただきたいです。
2014年にはいかなごの親魚「ふるせ」のくぎ煮も炊きました。
以前のnoteでも書きましたが、長田の駒ヶ林では、昔は「ふるせ」を中心に獲り、くぎ煮にしていたのです。
また、これを釜揚げにして、軽く焼いて酢醤油などで食べるのも最高でした。
いかなごがたくさん取れていた時代は、養殖の餌としても獲っていたそうです。
最近は漁自体が取りやめになっているので入手することもできず、幻の味になってしまいました。
資源保護にも配慮しながら、いかなごのくぎ煮の振興に引きつづき努力を続けたいと考えています。