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ワーク・エンゲージメントと組織コミットメント、定着率・離職率の関係(令和元年版「労働経済の分析」より)

ワーク・エンゲージメントと組織コミットメント、定着率・離職率の関係について紹介します。

以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

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●ワーク・エンゲイジメント・スコアと組織コミットメント、新入社員の定着率(入社3年後)、従業員の離職率の低下には、正の相関があることがうかがえる。いずれも逆方向の因果関係がある可能性にも留意が必要であるが、ワーク・エンゲイジメントを向上させることは、こうしたアウトカムにポジティブな影響を与えている可能性が示唆される

ここからは、ワーク・エンゲイジメント・スコアと様々なアウトカムとの関係性について、順次データで具体的に示していく。まずは、組織コミットメントと定着率・離職率について、整理していきたい。
第2-(3)-9図は、調査時点から1年前のワーク・エンゲイジメント・スコアと、調査時点の組織コミットメント(本稿では「企業の理念等や担当業務の意義等を理解した上で、企業の組織風土に好感もっている」といった状態を指す)の度合いをスコア化した値との関係性を整理しており、同図によると、ワーク・エンゲイジメント・スコアと組織コミットメントには、
正の相関があることがうかがえる。

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逆方向の因果関係(注)がある可能性にも留意が必要であるが、先行研究と同様に、ワーク・エンゲイジメントを向上させることは、組織コミットメントの向上につながる可能性が示唆される。また、人手不足企業においても、同様の傾向が確認できる。
(注)本稿では、例えば、AとBの相関関係から、因果関係の方向性を推論により解釈しようとする際(A→B)、因果関係の逆の方向性(A←B)を「逆方向の因果関係」と表現している。そして、ここでは、比較時点の工夫をしているが、組織コミットメントが高い従業員が、ワーク・エンゲイジメントが高い可能性も考えられることに留意が必要である。

なお、組織コミットメントを構成する「企業の理念・戦略・事業内容を理解している」「担当業務の意義や重要性を理解している」「企業の組織風土に好感をもっている」のいずれをみても、ワーク・エンゲイジメント・スコアと正の相関があることがうかがえる。

次に、第2-(3)-10図の(1)(2)の縦軸は、新入社員の定着率(入社3年後)(注)に関するD.I.を示しており、現在と3年前を比較した新入社員の定着率(入社3年後)の状況について、「上昇」と回答した企業の割合と、「低下」と回答した企業の割合との差分を示しており、プラスであれば、現在と3年前を比較した新入社員の定着率(入社3年後)が上昇している企業の方が多いこととなる。
(注)新入社員の定着率(入社3年後)は、「3年前に新規採用した正社員であって、採用後3年以上勤めている正社員数(分子)が、3年前に新規採用した正社員数(分母)に占める割合」として得た回答を示している。

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同図によると、ワーク・エンゲイジメント・スコア(注)と新入社員の定着率(入社3年後)に関するD.I.には、正の相関があることがうかがえる。
(注)新入社員の定着率(入社3年後)は、企業の認識として、現在と3年前を比較した変化について回答を得ており、労働者のワーク・エンゲイジメント・スコアを調査時点の1年前とすることで生じる利点はないと思われるため、ここでは、サンプル数が増加する利点のある調査時点のワーク・エンゲイジメント・スコアを活用している。

逆方向の因果関係(注)がある可能性にも留意が必要であるが、先行研究と同様に、ワーク・エンゲイジメントを向上させることは、新入社員の定着率(入社3年後)の向上につながる可能性が示唆される。
(注) 新入社員の定着率(入社3年後)が高い企業では、職場に仕事の資源が多くあるなどにより、ワーク・エンゲイジメントが高い可能性も考えられる。

また、人手不足企業においても、同様に正の相関があることがうかがえるが、ワーク・エンゲイジメント・スコアの水準をみると、ワーク・エンゲイジメント・スコアが3以下の場合、新入社員の定着率(入社3年後)が低下している企業が多いことが分かる。他方、ワーク・エンゲイジメント・スコアが4以上の場合、人手不足企業であっても、定着率が上昇している企業が多くなっている。
さらに、同図の(3)(4)の縦軸は、従業員の離職率(注)に関するD.I.を示しており、現在と3年前を比較した従業員の離職率の状況について、「低下」と回答した企業の割合と、「上昇」と回答した企業の割合との差分を示しており、プラスであれば、現在と3年前を比較した従業員の離職率が低下している企業の方が多いことになる。
(注)定年や雇用契約の満了などによる非自発的な離職は除かれている。

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同図によると、ワーク・エンゲイジメント・スコア(注)と従業員の離職率に関するD.I.(プラスであれば、従業員の離職率が低下している企業の方が多い)には、正の相関があることがうかがえる。
(注) 前々々注と同様の趣旨で、調査時点のワーク・エンゲイジメント・スコアを活用している。

逆方向の因果関係(注)がある可能性にも留意が必要であるが、先行研究と同様に、ワーク・エンゲイジメントを向上させることは、従業員の離職率の低下につながる可能性が示唆される。
(注) 従業員の離職率が低い企業では、職場に仕事の資源が多くあるなどにより、従業員のワーク・エンゲイジメントが高い可能性も考えられる。

また、人手不足企業においても、同様に正の相関があることがうかがえるが、ワーク・エンゲイジメント・スコアの水準をみると、ワーク・エンゲイジメント・スコアが3以下の場合、従業員の離職率が上昇している企業が多いことが分かる。他方、ワーク・エンゲイジメント・スコアが4以上の場合、人手不足企業であっても、従業員の離職率が低下している企業が多く
なっている。
以上のように、ワーク・エンゲイジメント・スコアと組織コミットメント、新入社員の定着率(入社3年後)、従業員の離職率の低下には、正の相関があることがうかがえる。いずれも逆方向の因果関係がある可能性にも留意が必要であるが、先行研究と同様に、ワーク・エンゲイジメントを向上させることは、こうしたアウトカムにポジティブな影響を与えている可能性が示唆される。
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ワーク・エンゲージメントが高いから組織コミットメントが高いのか、
組織コミットメントが高いからワーク・エンゲージメントが高いのか。
ワーク・エンゲージメントが高いから、離職率が低く、定着率が高いのか、
離職率が低く、定着率が高いから、ワーク・エンゲージメントが高いのか。

どちらが卵かニワトリか、という議論になりますが、相関関係があるのは間違いありません。
昨日のnote同様、スパイラルの関係が成り立っているようにも感じます。
負のスパイラルではなく、良い方向にスパイラルが回るようにしたいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan