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フィリピンでシステム開発を行なうYNSのマネジメント手法

日本とフィリピンでシステム開発/オフショア開発をしている株式会社YNSの代表です。

現在、フィリピン・マニラで70名超のエンジニアを雇用しており、2025年1月時点で日系の独立系システム開発会社では最大規模だと考えています。
この記事では、当社がこの規模に成長する過程で心がけてきたマネジメント手法をご紹介します。


マネジメントにおける取り組み

1. 家族的なつながりを重視した組織運営

フィリピン人はアジア最大のカトリック国で、とにかく家族を大事にします。会社経営においても、その価値観を理解して関わるのが重要です。

例えば、社員の親戚に何かあった場合の勤怠を柔軟に対応したり、災害時のサポートを行ったりしています。

加えて私は「社長自身が家長としてふるまう」のが良いのではないかと考えています。
私は英語が上手い方ではないですが、下手くそでも社長が社員と語ることは一定の価値があるのだろうと思います。
彼らも英語ネイティブではないので、拙い英語でも真剣に耳を傾けてくれます。

フィリピンはどこか昭和的な価値観や空気感が残る社会です。日本企業がかつて持っていた「家族経営」や「現場の活気」を彷彿とさせる文化が息づいているように思います。
そういった価値観を大切にすることで、社員との信頼関係を構築し、企業としての結束を高めています。
 

2. 新卒育成でスキルと安定性を兼ね備えた組織へ

採用には大きく2つの方向性があります。
一つは、新卒もしくはジュニアの開発者を採用して育成する方法。もう一つは、シニアやマネージャークラスを即戦力として採用する方法です。

後者については、大企業であれば可能な場合もありますが、多くの日系企業では難しいのが現状です。
自社で雇用しているエンジニアが、欧米企業から3倍の給与でオファーを受けて転職する、というのはよく耳にするケースです。今の日本の物価水準や円安では、日経企業がどうにも太刀打ちできません。

一方、新卒採用は欧米と日系の企業間で給与相場に大きな差がないため、適切な採用活動を行なえば、我々の規模でも優秀なエンジニアを確保できます。
当社では、採用後に大家族的な環境で育成することで、シニアエンジニアやマネージャーに成長しています(もちろん途中で転職する人もそれなりにいます)。
こういった環境で育ったメンバーは、目先の給与よりやりがいや職場環境を重視するので、結果的に離職率の低下にもつながっています。
 

3. リーダー層への特別待遇で離職率を低減

前述した中間層の離職率を下げるために、当社ではリーダー級以上とそれ以下の待遇を分けています。
例えば福利厚生では、リーダー級以上の従業員には、保険の充実など一般社員より充実したものを提供していますし、社内イベントでは小さなギフトを用意し、社長が直接手渡しし感謝を伝えるといった取り組みを行っています。
 

4. イベントを活用した従業員満足度の向上

フィリピン人はイベントが好きで、その楽しむ能力は世界一ではないかと思います。
(日本人がイベントに参加したがらないことが多いのとは対照的です)

特にフィリピンで欠かせないイベントとして、アウティング(社員旅行)とクリスマスパーティーがあります。
当社では、このクリスマスパーティーを「YEAR-END PARTY(年末パーティー)」と呼び、一部の宗教に配慮しています。 (いずれ別の記事で書きたいと思います)。

他にも
・毎月のカンパニー・ディナー(食事会)やゲーム大会
・誕生月のメンバーのためのプチ誕生会
・日本とフィリピンメンバー混合グループで開催するオンラインランチ会
などを行っています。
 

5. 現地スタッフへのマネジメント移譲

中間層がある程度育った段階で、可能な限りフィリピン人にマネジメントを任せるようにしています。そうすることで、日本側は方針の提示やレビューに集中できます。

創業して間もないころは、経験の浅いメンバーが多かったため、日本人が一から教えながら進めていました。そういったフェーズから抜けだせた後は、メンバー管理をフィリピン人に任せることが最も効果的だと考えます。コスト面の効率性はもちろんのこと、文化的な理解や現地の特性を活かした運営が可能になるからです。

評価においても、フィリピン法人ではフィリピン人同士で評価できる360度評価制度を導入しています。
 
  

6. 評価の数値化・見える化

マネジメントを現地スタッフに任せる際、任せっきりにすると課題が発生することがあります。そこで重要なKPIを押さえ、仕組み化・見える化して管理しやすくすることが欠かせません。

当社では以下のような指標を用いて、個々のパフォーマンスを評価・管理しています。

・生産性指標(Velocity)
開発者ごとの生産性を数値化。プロジェクトごとの進捗や成果を見える化しています。
品質指標
バグ数や差し戻し数を記録し、品質管理の一環として活用。
勤怠指標
勤怠状況を当社独自のロジックで数値化し、パフォーマンスとの関連を分析。

 開発者の多くがリモートワークで勤務していますが、数値指標が一定基準を下回り続けるエンジニアについては、出社を義務付け、直接的なモニタリングを実施しています。
 

7. 日比間の文化ギャップを埋める教育と理解

文化や価値観の異なる者同士で協働するには、お互いへの理解を深めることが重要です。
当社では日本人のブリッジSE向け、そしてフィリピン人のエンジニア向けにそれぞれ特化した研究を行っています。
勤怠や納期、品質に関する考え方の違い、家族と仕事の優先度に関する価値観の違い、宗教や文化の違いによる配慮すべきポイントについて学び合うことで、連携を強化しています。
 

8. 品質意識向上のための継続的な取り組み

フィリピンに限らず、オフショア開発において最大の課題は、成果物の品質確保ではないかと思います。
当社もこれについては発展途上で、試行錯誤しています。現時点では、最終的なテストは日本側で実施し、お客様に納品する流れとなっています。これは日本市場でビジネスを行う以上必要なプロセスですが、可能な限りフィリピン側で品質管理を完結することを目指し、さまざまな取り組みを続けています。

▼取り組み例
・バグや差し戻しの数の可視化
・テスト方法に関する勉強会の開催
・テストケースの事前レビュー
・ツールを活用した自動構文チェック
・ペアプログラミングの実施

必要に応じて、社長から全社向けに品質の重要性を説くメッセージを発信することもあります。特にお客様から品質に関するご指摘を受けた際には、全社員で問題意識を共有し改善に向けた行動を促しています。
 

おわりに

当社が取り組んでいるフィリピン法人のマネジメント手法についてご紹介しました。
今後も取り組みを進化させながら、より良い組織づくりを目指していきます。改めてアップデート情報をお届けします。


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Manabu Yamazaki
フィリピン開発拠点の立ち上げやマネージメントや主に日本でのBizDevなど。